87 親子誕生!
「ギルド長、オーラ国の必要最低限の調査項目一覧です」
「リンが行くのであれば、薬草などの群生地帯の情報も取ってもらいたいでありんす」
「俺は父親役なんだろ…。飼い猫は連れて行かないぞ!」
「ペットの鳥を3羽連れていくっていうことで、お願いします」
私達がリンを追いかけずにオーラ国での懸案事項や準備を進めていると、リンがぶすくれた表情で帰ってきた。
「つまんない…」
「オーラ国に行く時は親子設定だからな。存分に幼児化してくれ。さっきのゴルディオイデアも連れていくか?」
ポンッ!と音がして、リンの幼児化が解けた。
「ん~。連れ歩くと負担もあるから、まずは私の家で英気を養ってもらおうかな。必要になったら、お迎えに行くし」
そう言って、ゴルディオイデア瓶詰を持って転移していった。
リンがダンジョンへ帰っている間に、私とソレノドンさんで家族設定の詳細を詰めていこう。まずは冒険者で夫婦になって、娘が1人。今まではデルフィナス国に拠点を置いていたけれども、娘が旅に一緒に出られる位に成長したからオーラ国へ拠点を移そうとやって来た。ソレノドンさんの偽名は「ソル」、C級冒険者。
私の偽名は「リリ」で、D級冒険者だけれども、妊娠・出産などもあり、本格的には活動しておらず、ひっそりと家庭を守っていた。オーラ国に拠点を移す事をきっかけに、低ランクのクエストなどで冒険者に復帰するか、一般的な就労をするか考え中。
娘は、三歳のお転婆な一人娘で生き物が大好きで、よく生き物を拾ってくる。ただし、猫系は拾ってくるな!と父親から釘を刺されているので、最近は誤魔化す方法を覚えてきた。(訳:魔物が好きで、弱っている魔物をダンジョンで保護するために拾ってくる。認識阻害魔法を使って、猫系に見えないように誤魔化す事を覚えた)
嘘ばっかりの設定だと間違えちゃうからね。私とソレノドンさんは、広く冒険者に顔と名前が知られているため、リンに頼んで認識阻害魔法を掛けてもらう事になった。
『リン、こんな風な家族設定でオーラ国に行こうと思うけれど、どうかな?』
『いいよ!楽しみ‼』
準備が出来た私たちは、転移して行きたいと言うリンを宥めすかして、C級とD級冒険者夫婦とその娘としてオーラ国行きの乗合馬車に乗ったのだった。
「だー、だー。(訳:乗り心地悪そうだから、ちょっと浮かせようか?)」
「何言っているのか分からん。フェリスをフクロウ化させてくれ」
フェリスをペット扱いで実体化させて、訳してもらう。魔物と一緒か?と内心思ったのは秘密だ。
「「リンちゃ~ん、是非お願いします」」
「だっ!」
リンの魔法制御が心配だったけれど、周囲にバレないように1センチ位浮かせてくれた。
それでも万が一、浮いている事がバレないように、ブランケットを掛けて誤魔化した。
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