85 手を離さない
「だ?」
…突然リンの周りに靄が発生したかと思うと、次の瞬間にはリンがミニチュアになっていた…。もとい、幼児化していた。
「…え?」
「あら…実験失敗ねぇ。元々は、大型の魔物を小型にするための魔道具を作っていたんだけれどぉ。人が幼児化しちゃったわぁ…。多分、時間が経てば元の姿になると思うんだけれどぉ、どの位かかるかは分からないわぁ…」
「だー!」
「よし、丁度いいからリンに仕事だ。オーラ国に親子設定で潜り込んで、黒幕を捕まえてこい。親の役は…ジョンに頼むかな」
「だっ、だーっ‼‼」
リンが突然駆け出したかと思うと、ソレノドンさんの腕に引っ付いた。ソレノドンさんが慌てて引き剝がそうとしているが、魔法で固定させているみたいだ。
「おーい、リン?親役は俺が良いのか?」
「だっ!」
「そんなこと言わずに、俺とやろうよ?色々と教え込んであげるよ?」
「や!やなの!」
あ、ジョンさんの顔が引きつっている…。リンさん、元に戻った時に大丈夫かな?
「はぁ、仕方がないからソレノドンとリンで親子役だな。母親役はリリーさん、頼めるか?」
あ、私が母親役ですか…。まだ未婚なのに、こんなに大きい娘がいることになるんですね。
しかも、歩く非常識で、危険度Sランク(幼児化でさらにプラス)の娘…。少し、遠い目をしながら、母親役を引き受けたのだった。
「だーっ!」
逃亡しようとしている娘を早速捕まえて、抱っこする。可愛いし、なんだか癒される。
「む、む、だーっ!」
「リン、業務命令だ。親役のソレノドンとリリーから逃げたり、逆らったりするなよ!」
しっかりとギルド長がリンさんに釘を刺してくれた。
「や!やだ!やーなーのー!う、うぇぇん!」
「リンちゃん?何が嫌なのかな?」
「うぅ…だっこ…や」
むぅ、こんなに可愛いのに抱っこが嫌だなんて‼仕方がないから、ほっぺをスリスリしてから下におろしてあげた。
「だーっ!」
しっかりと手を繋いでおいて正解だった。確か、前世の言葉にもあったはず。子育て四訓で、「乳児はしっかり肌を離すな、幼児は手を離すな、少年は目を離すな、青年は心を離すな」って言われていた。リンさんは、幼児だから手を離さない‼逃亡するし‼
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