72 アマルテア
子供の寝相はアクティブです!
夜は男女に分かれて就寝。私はリンさんと寝室で、男性陣はリビングに雑魚寝になる。ラーノさんが『魔物と一緒に寝る…永眠しないで朝を迎えられるのか…?』と青い顔をしていたので、タイパンさんが必死に宥めていた。
「リリーさん、布団ひくの手伝ってくれる?そっちの方が早く寝られるし」
「もちろん。どこにあるの?」
「えっとね、出てきて~アマル」
リンさんの呼び声に応えて出てきたのは大きな山羊の魔物だった。そして、自分の毛で織ったと思われる羊毛(山羊の毛だけれど)布団一式を咥えて持ってきている。
「この子はアマルテアっていう山羊の魔物なんだけれど、とっても大人しくって可愛いの。私が眠れない時なんかは、側にいてくれるし。あと、美味しいお乳も分けてくれるし、伸びた毛を貰えるし。あ、その布団は貰った毛をヘルスパイダーに頼んで編んでもらって作った布団なんだ。とっても軽くて、寒いときは温かいし、暑いときは涼しいんだよ」
先程、魔物たちに集合してもらった時にアマルテアはいなかったなぁと思っていると
「アマルは、のんびり高い山の上で暮らしていたんだけれど、冒険者達に襲われて怪我をしちゃって。でも必死に断崖絶壁へ逃げたんだよ。冒険者達がアマルを狩ろうとするのを諦める頃に、私と出会ったんだ~。酷い怪我だったから、この家に転移して治療して。元の棲みかに戻るか聞いたら、ここで暮らしたいって。でも、男の冒険者が怖いから、さっきは隠れていたんだよ。で、今日は一緒に寝る。リビングに行けないから」
「初めまして、アマル。私はリリーって名前で、冒険者ギルドで働いているの。よろしくね」
アマルに向かってそう言うと、アマルは鼻を私の方に近づけてくれた。撫でてみると、スリスリしてくれたので、『こちらこそ』と言っているみたいだ。
「あと、私のスキルで実体化する猫がいるの。フェリスとソヌスよ。こちらもよろしくね」
「「よろしくにゃ~」」
言うが早いか、2匹はアマルの背中の上に乗ってしまった。アマルも受け入れているし…良いのかな?ほのぼのと癒される光景だなぁ。
「リンさん、なんて素晴らしい光景なの~、リンさん、良い子‼」
思わず、ナデナデ、ハグ。
「シェイクやめて…あと、息が…」
ん?何か聞こえたような気がする…むぎゅ。
「く、空間転移…」
あれ?リンさんが居なくなった?残念…もっとしていたかったのに。
「おやすみ~」
「あれ?お布団まだ敷いていないよ!リンさん、ちょっとまったー!」
「もう敷いてる~」
「アマルはどうやって寝るの?一緒のお布団には入れないよね?」
「専用座布団の上で寝るの~」
いつの間にか敷かれていたお布団に潜り込むと、すごく温かい。
「リンさんと一緒に、温かいお布団で一緒に寝られるなんて幸せ~」
寝るときは本当に幸せだった…。夜中に突然、目から星が出るほどの頭突きと、お腹の上へかかと落としが無ければ、朝まで幸せだったに違いない。
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