70 くっきんぐ
意外なことに、食材と調味料を取り出したら、次は計量スケール・カップ・スプーンだった。てっきり目分量で味付けをしていくタイプだと思っていたが、違ったようだ。
「料理って、実験と一緒だよね‼色々と分量を変えて、どんなふうに変化するか記録していくと最適なレシピが出来上がるのさ!今日は・・・どんな風にしようかなぁ~。筋肉マシマシコースかスピード増強コース、う~ん、試しに苦手な動物が無くなるチャレンジレシピコース…ソレノドンさんがいるから、これにしよう!」
「まずはお肉を切らなきゃね~、包丁包丁!」
そう言って出してきたのは、ありとあらゆる種類が揃っている包丁セットだった。
「すごい包丁セットですね…。普段から料理は自分でやっているんですか?」
「あ、リリーさん。そうだよ~、やる気が無いときは魔法でやるけどね」
「だから、一般人にとっての毒草をスパイスとして使ったりしていた…と。誰も突っ込まないから…。今後は、一般常識をリンさんに伝えるためにも、リンちゃんハウスに頻繁にお邪魔させてもらっても良いですか?ついでに、私に料理を教えてくださいね?」
にっこりとリンさんに微笑みかける。
もちろん、良いよと言ってくれたリンさんの顔が引きつっているのは気のせいだろう。
初対面で殺されかけたこと、忘れてないんだからね。
「と、とにかく!今日はサプライズご飯だから!リリーさんは待機!」
「いえいえ、リンさんが間違って普通の人にとっては毒になるものを、料理にぶち込まないか見張らなくてはいけないので、ここにいますね」
「だ~っ!!もう!強制転移&結界!」
…あっという間にキッチンから出されてしまった。魔法の無駄遣いじゃないかしら。
「タイパンさん、ソレノドンさん、毒草を調味料として使っていたら、死んじゃいますよ!調理しているところを見張りましょう!」
「リリーさん、毒見はするから大丈夫だ。ラーノさんも毒草には詳しいしな」
そういえば、リンちゃんハウスに入ってからラーノさんの影がすっごく薄いのですが。
「冒険者の皆さんは、こんなに強い魔物に囲まれて、よく平気で話していますよね…。正直、ここから逃げたいんですけれど。スライムだって森でよく見るスライムとは格違いの魔力を放出していますし…。それなのに、水浴び替わりに汚れを喰ってもらうとかって、あり得ないんですけれど…」
あ…ついついリンさんのペースに乗せられて気にしなかったけれど、リンちゃんハウスの魔物って本当に上位ランクの魔物しかいないんだよね。私もダンジョンで敵対していたら、離脱一択だし。リンさんに一言伝えておきたい…フェリス頼む‼
「クロにも一緒にメールで伝えておいたにゃん。リンからは『大丈夫だよ!楽しみにしてて』クロからは『主は止められないから、ヤバいの入ったら連絡する』って返信にゃ」
刃物や火を使っている時に猫パンチできないから、止められないのかなぁ。
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