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ギルド職員は忙しい  作者: 猫の子子猫
6/20

6 仕事場が変わりました

読んでいただき、ありがとうございます。初投稿、ゆるゆる設定、ご都合主義ですので、至らぬ点が多数あると思いますが、広いお心でご覧いただければ幸いです。

こん、コン、コン・・・キツネならぬリリーがギルド長室のドアを叩いて「リリーです」と言うと、「入れ」との声が。しっぽがあったら、絶対に小さく丸まっているわ、うん。


ギルド長室は、冒険者ギルドの3階に位置している。ちなみに1階はクエスト受注・発注関係窓口、解体関係窓口、買取関係窓口があるフロアに食事とお酒を楽しめるバルが併設されている。普通の人が思い浮かべるザ・冒険者ギルドだ。


2階は銀行関係窓口、資料室、倉庫や金庫、冷蔵室や警備系職員の詰所兼控室がある。3階はギルド長室、副ギルド長室、応接室が来客の階級に合わせて3部屋と、会議室、通信施設部屋などがある。ちなみに地下階も3階ある。冒険者用のトレーニング等ができる地下1階、医療フロアのある地下2階、犯罪者などの拘束・取り調べなどができる地下3階である。


ギルド長室に入ると、正面には高級なトレント材を使用したこげ茶色でどっしりとした執務机があり、決裁をしていたギルド長がいた。向かって右側に打合せスペースがあり、左側には副ギルド長の執務机がある。すぐに相談できる環境が欲しいと、副ギルド長が直談判してこうなったらしい。


「打合せスペースで話そう。体調の確認と今後の仕事の話だ。副ギルド長も同席する」

「分かりました・・・。失礼します。」


冒険者ギルドのトップ2に体調と仕事の心配をされるなんて、過保護だと思ってしまう。

副ギルド長のカッパーさんは、ドワーフ族の女性だ。ギルド職員の採用試験で面接官の1人だった。ギルド職員に採用された後は特に接点がなかったが、まさかこんな形で再会することになろうとは思っていなかった。


「久しぶりね、リリーさん」

「カッパー副ギルド長、お久しぶりです・・・。」


「ギルド職員に職務命令で『丸ごと検診パック』を受けさせたのはリリーが最初だ。検診結果については、すでに医療スタッフから受け取っている。大きな病気が無くて良かったが、未病状態だそうだな」


「はい、アゲートさんからも未病対策をみっちりご教授していただきました。今後は、自分の体調管理をもっと気を付けていきたいと思っています」

「体調はどうなのだ。まだ本調子ではないと思うが」


「そう・・・かもしれません。まだ未確定なのですが、もしかしたら固有スキルに目覚めたかもしれません。まだ自分でも良く分からない事なので、間違いかも知れないのですが」

「あら、固有スキルかも知れないと思うような事があった、ということよね。どんな事だったのかしら?」


「頭の中に、『パソコン』という四角い平べったい箱のようなものが出ました。そして、『パソコン』に文章を記録することができるようです。記録した文章は、紙があれば印字することができそうな気配がするのですが、試していないので分かりません」


「ふむ、文章を印字することができれば事務は便利になるのかも知れないな。少なくとも頭の中にある『ぱそこん』とやらは、他人は使えなさそうだ。他にできそうな事はあるのか?」

「すみません、まだ分かりません。」

「固有スキルは、自分の成長具合に合わせて使える事柄も増えたりするから、まだまだ未知数よ」


「副ギルド長はどうして固有スキルに詳しいのですか?」

「秘密だけれど、私は固有スキル持ちなのよ。固有スキルを使うと、金属の事が分かるの。だから、前ギルド長に副ギルド長なんていう大層なポストにスカウトされたっていうわけ。同じ固有スキル持ち同士ということで、いろいろと相談に乗るわよ。あと、私のことはカッパーと呼んでね」


そうだったんだ…。確か副ギルド長は商業ギルドから贋金の事で相談を受けていると噂で聞いたことがある。どうして商業ギルドが冒険者ギルドを頼るのか不思議だったんだけれど、コインも金属だから贋金を見破れるっていう事だったんだ。


「ありがとうございます、カッパーさん。本当に固有スキルなのかどうかも分かっていない状態なのですが、どうぞよろしくお願いします」

「固有スキルに関しては、国へ報告義務があるから一応報告しておく。話を聞く限りにおいては、事務に特化したスキルのようだ。このまま冒険者ギルド職員として働くか、希望があれば王城で文官として働くこともできると思う。ギルドとしては優秀な職員が辞められては困るのだが」


王城で文官として働く道もあると言われても、王城で働く人は貴族も多そう。平民ももちろん働いていると思うけれども、身分制度もあるし、人間関係が難しそうだな。


「このまま冒険者ギルドで働き続けたいと考えています。王城はお貴族様が多いでしょうから、礼儀作法などを今から身に着けるのは大変そうです」


「あ~、確かに礼儀作法はうるさく言われるだろうな。ギルドでは貴族を相手にするとき以外は礼儀作法はほとんど必要ないしな」


そうそう、その貴族を相手にするのは主にギルド長や副ギルド長だからね。副ギルド長補佐は、お忍びで冒険者をやっている貴族を相手にするくらい。お忍びだから、お行儀の良い言動を心がけていますという態度をしていれば、礼儀作法が間違っていても怒られることはないしね。


「じゃぁ、これから本題よ。ここ2~3か月、リリーさんの勤務状況と業務内容を確認させてもらったわ。はっきり言って、オーバーワークよ。言うなれば、Cランク冒険者がBランク級の魔物と対峙して、何とか致命傷を避けつつ防御しているけれど退避することも出来ないジリ貧状態。このままだと、致命傷を受けてジ・エンドになるわ」


「今は、中堅職員とベテラン職員が辞めて欠員2名という状態、魔物の出没件数も多くなっているから忙しいのは分かる。リリーさんは、職員の採用試験の準備、職員のシフト管理、給料計算、冒険者への互助事業も行わなければいけない。そして、ベテラン職員としてフォロー業務をしているとなると、当然残業も多くなって倒れた訳だ」


「しっかりと休養できた日なんて、無いんじゃない?『この繁忙の波を乗り切れば、何とかなる』と思う気持ちも分かるけれど、次々に波は来るのよ。だからね、私たちもフォローに入るわ。ただ、ギルド長と副ギルド長という役職の者が1階フロアに顔を出すと面倒な事案を呼び寄せてしまうという問題があるの」


そりゃぁ、そうでしょうよ。ギルド長や副ギルド長がカウンターに立っていたら、どんな大問題が生じたのかと周囲の憶測を招いてしまうわ。そしたら、一気に王都全体が厳戒態勢になるだろうし、ギルド長には王城から事情説明のための呼び出しがかかるだろう。ここは、やっぱり私がポーションを飲みつつ頑張ります…?


「だから、リリーさんにはこのギルド長室で仕事をしてもらうことにした。副ギルド長の執務机の隣にリリーさんの執務机を置くので、明日からよろしく。今日は1階の職員やスミスに説明をしておいてくれ」


・・・は??今、なんて言われました??ワタシ キュウニ コトバガ ワカラナクナッタヨ。

思わずフリーズしてしまったけれど、お2人と机を並べて仕事する?


「いえいえ、今の仕事場で頑張ります?大丈夫です?」

「考えてみて?今の仕事場で仕事をするとして、相談事や確認事項がある度にギルド長室へ行くのよ。私たちも何かあればリリーさんを呼び出すわよ。周囲がどんな風に受け取るかしら」

「仕事の進捗状況は毎日把握するために、業務開始時と終了時には必ず報告してもらう。過重労働防止のために業務終了後2時間で自動的に自宅へ転移する魔法もかけさせてもらうかな」


うぅ・・・?頻繁にギルド長室へ出入りすれば『何をやらかした?』とか『ひいきされている』とか変な噂を撒かれそうだし?強制転移魔法って…万一トイレとかシャワー室にいるときに発動したら悲劇しか生まないやつ?


「周囲への説明は『働きすぎで倒れたため体調管理能力を疑問視された。副ギルド長から仕事に無駄がないか監視されることになった』とでも説明すれば良いわよ~。でも、私たちが業務のフォローに入ることは職員に言わないでね。いつもフォローできるわけじゃないから、周囲に期待させたくないの」

「別にリリーさんの仕事に無駄があるとは思っていないが、ギルド長室で仕事をするとなると、嫉妬する輩も出るかもしれないからな」


ここまで言われてしまうと、承諾するしかないじゃない。もう、なるべく早くこの繁忙期を乗り切ってしまおう…?


「分かりました。お気遣いいただきありがとうございます。明日からよろしくお願いします」

「おう、よろしくな」

「よろしくね?楽しみだわ~」


読んでいただき、ありがとうございました。

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