50 リン、リン、リンといえば
暫く待つと、リンさんから立て続けに頭の中に音声が響いてきた。
『リンです!ちょっと遠隔で魔法契約するので、超遠距離念話を使うね!』
『リンですリンです!説得できた!多分、これで魔法契約が出来たと思うんですけど、確認お願いします!』
リンリンリン・・・と聞いたとたんに、仕事は年末進行スケジュール注意!そして大掃除‼と記憶が甦ってきた。クリスマスの有名な歌とどうやらセットになっているようだ。これは前世の私の記憶かな…。リンさんの名前を立て続けに聞くと、忙しい記憶が甦るって、どういうことよ?前世の私は過労死したのか?
『もっしもーし、リンでーす。リリーさん?ちょっと聞きたいことがあるんだよね~』
『どうしましたか?』
『あのさ、突然だけど前世の記憶ってある?』
と、突然すぎる・・・。えぇと、この会話は超遠距離念話だから、誰かに聞かれる心配は無いけれども、なんでリンさんがそう思ったんだろう。何か感づかれることでもしていただろうか。
『えっと…、それはどういう意味ですか?』
『まんまだよ。リリーさんの固有スキル、いくら事務職勤めだったとしても目覚めないと思ったから。安心してね、私も同じだから』
そうなんだ・・・それならば言ってもいいかな、思い切って。
『…、リンさんの言う通りです。私には前世の記憶があるんです』
『だと思った~!私はばりばり前世の記憶があってさ、死因まで覚えてるんだよね~!ほんと最悪だよ?ビルがガス漏れで爆発って。あ、私の前世の名前は月島 澪。アニメ・漫画・ドラマ大好きな16歳』
16歳!高校1年生か2年生くらいだったんだ。前世と今と大体同じくらいの年齢なんだ。
高校生ならアルバイトくらいは出来るし、ましてや今はS級冒険者という社会人・・・これは、事務職として鍛えるか?
『リリーさん?私を事務職にしようと思ったでしょ?』
あれ?言葉には出していないはずだし、超遠距離念話にならないように気を付けていたのに。
『リンさん、どうしてそう思ったんですか?』
『理由①悪寒がした!理由②リリーさんの社畜ぶり!理由③念のために、ちょっと勝手に心理読み取った!めんご!』
『タイパンさんの拳骨案k…』
『ごめんて・・・』
『リリーさん、ちょっと念話切るね~。今、ソヌスの報酬の魔物と戦ってる最中だから~。あと、ギルド長に魔力制御がちょっとできるようになったって伝えといて~』
ソヌスの報酬って、キングペリュトンとエンペラーオークだよね?超レアなモンスターだから、一生かかっても探し当てられない冒険者がざらにいるんですけれど。どちらのモンスターか知らないけれども、戦っている最中に前世のことを聞きたいからと超遠距離念話をしてくるリンさんは物凄い天才なのか、馬や鹿と仲良しなのかは紙一重だなぁ…。
事務職には向かないようだから、実働部隊として現場で活躍してもらう方向で考えておこう。S級冒険者なのだから王侯貴族から指名依頼が入るはずなのだが、マナーとかは大丈夫なのだろうか。タイパンさんに要確認、マナー教師のアイスドラゴン…ゴホン、モダーレスさんのご指導を仰いでも良いかもしれない。
読んでいただき、ありがとうございました。




