3 丸ごと検診パック
読んでいただき、ありがとうございます。初投稿、ゆるゆる設定、ご都合主義ですので、至らぬ点が多数あると思いますが、広いお心でご覧いただければ幸いです。
部屋にメロディが響いてきた。ちょうど夕食の時間の6時になったようだ。医療班の女性スタッフが、着替えや洗面用具と一緒に配食をしてくれた。本日の夕食のメニューは、ポテトシュリンプグラタン、コンソメジュリアンスープ、パンだった。ギルド併設の食堂のシェフに感謝しながら食べた。とっても美味しかったから、次に出勤したときには必ずお礼を言おうと心に決めた。
翌朝目が覚めて身支度をしたところで、医療班の男性スタッフが朝食の配膳と、着替え・入浴セットパックを持ってきてくれた。私は特に医師に診てもらう必要はないと思っていたのだが、なぜかギルド長からの職務命令で『全身丸ごと検診パック』を受けるように手配されていた…。ギルド長からのメモには大きく『職務命令?検診パックを受診すること?仕事のことを考えないこと?』と書かれていた。解せぬ…。
朝食を食べ終わると、女性医療スタッフがやってきた。見た目20歳くらいだろうか。
「おはようございます!リリーさん、ギルド長命令で、『全身丸ごと検診パック』を受けていただきますね~。本日担当するアゲートです。よろしくお願いします!」
「リリーです。こちらこそ、よろしくお願いします。お会いするのは初めて…ですよね?」
「そうですね。医療スタッフとして冒険者ギルドで働き始めたのは3か月くらい前ですから。特にリリーさんは事務方なので、接点はなかったと思います。でも、リリーさんの噂は聞いていますから、初めてお会いする気がしないです?」
「はぁ、どんな噂でしょうか。悪い噂でないと良いんですけれど…」
「悪い噂では全然ないですよ?ギルドに長く勤めていて、ギルド長・副ギルド長からも信頼が厚い仕事人間?そして、今のところ恋人などがいない模様・・・あ、ごめんなさい?」
いや・・・そうだけれどね、うん、結婚適齢期と呼ばれている時期からもう少しで外れてしまいそうだしね。でも、恋愛は1人では出来ないものだし、仕事が楽しいし。相性の良い相手がいれば、恋愛方面も発展するかも知れない・・・けど、仕事一筋で生きるのも悪くないと思う。
「いえいえ、その通りなので大丈夫です。そういえば、医療スタッフや解体スタッフは専門知識や技術が必要だから、それぞれのチームごとに独自採用試験をしているんでしたっけ。医療スタッフチームはどんな採用試験だったんですか?」
「治癒と解毒の魔法を中級以上で使えることが必須条件になります。それ以外は加点ポイント制となっています。ポイントが高い主なものを言うと、解呪ができる・洗脳が解ける・鑑定ができる・手術や調薬ができるなど、医療全般に必要な技術などが細かくポイント設定されています。後は、実技試験を受けたら終わりです。実技試験は、実際に医療フロアで1か月間アルバイトとして働いて、その働き具合を採点されるんです。私が受験したときは、応募者30人位のうち合格は2人でしたね~。」
「そうなんですね。ちなみにアゲートさんは冒険者だったんですか?」
「そうなんですよ?回復職として冒険者チームで活動していたんですけれど、ちょっとチーム内で仲間割れしてしまって解散となってしまったんです。他のチームから加入しないかと勧誘も結構あったんですけれど、いろいろと考えてギルドの医療スタッフになりました」
冒険者は山っ気が強くてガンガン攻めていく人もいれば、安全マージンを多く取りたいという慎重派もいる。冒険者チームが解散する大きな理由の1つが、メンバーの方向性の違いだから、よほど気が合うとかリーダーが上手く調整できないと、長く続くチームにはならないよね。
「さぁ、リリーさん。『全身丸ごと検診パック』を始めますよ。まずは、ベッドの上に寝てください。魔法陣を5種類、展開させます。痛いことはないので、ご安心を?」
ベッドに寝ると、アゲートさんが魔法陣を展開させた。淡い紫色の光が私の体を包み込んでいく。かすかにラベンダーのような香りがあたりを漂い、リラックス効果も付与されているようだ。2~3分すると、光がゆっくりと10回ほど点滅してから消滅した。
「どんどん続けていきますね。」と言われ、魔法陣が展開していく。青い光の魔法陣は潮の香り、緑色の光は木の香りなど魔法陣の色に合わせた香りが漂うのが面白い。
「はい、終了です~。お疲れさまでした。結果については、昼食後にお知らせしますね。あ、それと今回は職務命令で『全身丸ごと検診パック』受診のため、ギルド長に結果が報告されますのでご承知おきください。」
ギルドチョウニ ホウコク サレルンデスネ・・・。はっ?意識が飛びかけた・・・。つまり、自分自身ですら今日初めて知るかもしれない情報が、ギルド長に報告される…。なんてこったい?
読んでいただき、ありがとうございました。