26 新企画
方針が固まったところで、スミスさんとソレノドンさんが頻繁にギルド長室に出入りしているのは周囲から見て違和感があるため、偽装の企画を立ち上げて、そのメンバーにすることになった。偽装の企画についての設定は私に丸投げされたので、好きなように決めていいらしい。設定が決まったら、タイパンさんとタッパーさんへ伝えて了承が取れれば決定する。
どんな会議にしようかなぁ・・・。ギルド長・副ギルド長・銀行部門副ギルド長補佐・人事給与部門副ギルド長補佐・A級冒険者が出席しても違和感が無いようにしないといけない。そうすると、ギルド職員の離職を減少させる・・・には冒険者がいると不自然か。それなら、冒険者が引退した後のサポート業務を行う検討会プロジェクトはどうだろう。
冒険者は自己責任だから、自分の力量を見誤ったり、想定外の事態に遭遇した結果で死亡することもある。死亡より多いのが、大怪我を負ってしまうことだ。準備をきちんとしている冒険者であれば、回復ポーションである程度の傷は治せる。だが、手足の欠損となると回復ポーションでは治せない。そういった場合は、7日以内に神殿で高額の寄付金と引き換えに治療を受けることで欠損を治すことができる。
高額の寄付金を払えない者は、回復ポーションで傷をふさぐのが精一杯になる。当然、冒険者として高額クエストにつながる魔物討伐は出来なくなることが多い。収入が激減するので、違法な商売や取引などに手を出すものが多く、悩みの種となっている。冒険者ギルドは治安維持のために幅広い人材を受け入れているはずなのだから、『冒険』以外の生きる術を見つけられるようにサポートしていけたら・・・と思う。企画会議の名前は、『ノヴァ』にしよう。新しいという意味だ。冒険者が闇落ちせずに新しい身体、仕事、生活に進んでいかれるように願いを込めたい。
早速、タイパンさんとカッパーさんへ伝えると、即座に了承が得られた。ギルド長より職員通知で新しい企画が伝えられ、プロジェクトメンバーが発表された。懸案事項に対応する企画だから、違和感なく職員全体に受け入れらることができた。
さて、そうと決まれば仕事の優先順位を考えよう。まず期日が迫ってきている職員採用試験の目途をつけてしまう。平行して、ソヌスを常時呼び出して『アンボイナ』あるいは『アンボイナ』に関する情報収集を行いつつ、ノヴァ会議をしているという証拠となる資料や会議録を作ってしまおう!そのほかの仕事は、ルーティーンだからあまり時間をかけずに済みそうだ。
幸い、採用試験の問題については丸ごと検診パックを受けているときに考えてあった。フェリスを呼び出して問題を印刷し、タイパンさんとカッパーさんに見てもらった。難易度が少し高いかもと言いつつ、受験者の考え方が分かるような問題だから良いだろうということになった。あとは、募集要項をポスター形式でギルド内部、広場の掲示板、周辺の飲食店などに貼ってもらえば良いだろう。受験希望者は貼り出してから2週間以内に、冒険者ギルドへ来て受験申し込みをしてもらえれば良い。
募集要件は読み書きと計算ができて、『特定の団体や宗教等に加担しない』という契約魔法を結ぶことができる人となる。また職種は冒険者ギルド業務一般事務となり、技術系ではないことを明記する。また、受験申込の段階で犯罪等に加担していないかの確認をするということも書いておく。
必要な事が決まったので、ポスターや試験問題と解答用紙の印刷など細かい仕事に関しては、人事部門の部下にやってもらうことにした。一応これでも副ギルド長補佐なのだ!
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