20 苦手なもの
「他に気づいたことはないか?違和感でもいい」
「そうだな、変な匂いが少し漂っていたように思う。ただ、あれは・・・どこかで嗅いだことがあるような気がする。すぐに思い出せなくて悪い。それと外に出てくる時に口と鼻を覆う布をしていたな」
「いや、思い出せたら教えてくれ。どうやら、極秘クエストとつながっているようだ。こちらも『アンボイナ』が絡んでいるんだ。情報を共有したほうが良いと思うが・・・ソレノドン、悪いが口外無用で頼む。約束できるか?」
ソレノドンさんは一瞬考え込んだものの、口外しないと約束してくれた。
「リリーさん、頼む」
私はソレノドンさんに簡単に固有スキルの事を話したうえでソヌスに先ほどの会話を再生してもらった。
再生が終わると、ソレノドンさんは頭を抱えて何かを呟いていた。何だろうと思って、こっそり身体強化して聞き耳を立ててみた。
「どうして猫なんだよぉ・・・、あと情報量が多すぎんだろぉ」
あっ・・・ソレノドンさんはネズミ獣人だった。もしかして、猫が苦手なのかもしれない。そして気が付けばフェリスとソヌスがソレノドンさんを見ながら体勢を低くしている。まるで狩りを始めそうな…慌ててフェリスとソヌスの実体化を解除した。
心なしか青ざめていたソレノドンさんがホッとしたような表情を浮かべたのを見て、フェリスとソヌスを私の中に戻したのは正解だったと確信した。なんだか悪いことをしてしまった気分だ。
「凄腕の斥候も、猫に弱いのねぇ。狩りをしないように説得しておくわぁ~。でも、大型のネコ科魔獣が出たときなんかはどうしていたのよぉ?」
「極力、そんなクエストは受けたくないが・・・どうしようも無いときは、唐辛子の粉を塗した小物を持って行ったりしているな。他にも色々とあるが、リリーさんの前で言うのはちょっと…な。悪いが、俺の前では必要最低限で猫を出してほしい」
もちろん、と頷く私。いつもお世話になっているソレノドンさんの意外な弱点だったけれど、苦手な猫を必要以上に出すことはしない。ちょっと頭の中で『ネズミさんと遊ぶの~!」と鳴いている2匹には説教だわ。
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