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ギルド職員は忙しい  作者: 猫の子子猫
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2 試験問題を考えてみた

読んでいただき、ありがとうございます。初投稿、ゆるゆる設定、ご都合主義ですので、至らぬ点が多数あると思いますが、広いお心でご覧いただければ幸いです。

「リリーさん?大丈夫ですか?」という声で目を開けると、そこには同じ副ギルド長補佐のスミスさんがいた。スミスさんは冒険者ギルドの中で主に金銭を扱う銀行業務のチームを取りまとめていて、帳簿管理、現金管理、振込業務、為替や両替などを監督している。彼のチームがいなければ、冒険者ギルドの仕事の半分は停滞してしまうこと確実だ。冒険者ギルドは冒険者ばかりに目が行きがちだが、お金の流れがないことにはギルドが役立たずになってしまうので、冒険者ギルドを支えている主力メンバーだ。


「おはようございます・・・?スミスさん、ご心配をおかけしてしまって、すみません。」と声を出したが、思っていたよりも声がかすれていた。スミスさんが、机の上に置いてあった水差しから水をコップに入れて、渡してくれた。


「いえいえ、最近のリリーさんは働きすぎだと思っていたんです。いつ倒れるかとひやひやしていたので、誰もいないところで倒れられるよりずっと良かったです。」


スミスさんは、そう優しく微笑んで言ってくれた。スミスさんは40歳代位の既婚男性で、妻とお子さんが2人いる。妻も働いているから、子どもの世話や食事の支度などはすべて協力してやっていると聞いたことがある。妻は冒険者ギルドではなく、酒ギルドの職員らしい。


「まさか倒れるとは思っていなくて。なんだか突然頭の中が混乱したようになったと思ったら、意識がなくなってしまったんです。今後は、こんなことが無いように気を付けますね。」


「突然頭の中が混乱したんですか・・・。私は冒険者ギルドに長く勤めているので、ある日突然に固有スキルに目覚めた人の話を聞いたことがあります。その人も同じことを言っていました。その人の固有スキルがどんなものかは私には教えてもらえなかったので分かりません。固有スキルの内容は、ギルド長には報告していたはずです。固有スキルに目覚めた者は、たとえどんなに役に立たなさそうなスキルでも所属ギルドや役場に報告の義務がありますから。その人は王城から迎えの馬車が来ていました。その後は王城で働いているとの噂です。リリーさんも、もしかしたら固有スキルに目覚めたのかも知れないですね。」


「固有スキル?いやいや、無いと思いますよ~。単純に疲れが溜まっていただけだと思います。もし固有スキルに目覚めたら、それはそれで大変そうですよね~。」


「ははっ、そうですね。大変そうだから、固有スキルに目覚めたことを隠そうとする人もいるらしいですよ。でも、後で発覚したとき国家反逆罪など重大な罪の嫌疑がかけられてしまいます。都市伝説では王城には固有スキルを隠し持っている人がいないか探しだす専門部隊がいるとか。それだけ固有スキルは大きな能力を秘めているスキルだということですよ。何はともあれ、まだまだ顔色が悪いので、明日も1日医療室で寝ているようにとギルド長からの職務命令が出ています。着替えはもちろん、食事も出しますので、ご安心ください。」


スミスさんはそう言うと、ウィンクしてから颯爽と医療室から出て行った。明日も1日医療室で寝ているのが職務命令…って、そう言わないと私が無理して働いてしまうと思われているのかな。でも、久しぶりに丸1日休めるなら、ありがたく医療室を使わせてもらって、使い勝手を確かめてみよう。もし使い勝手が悪いところがあれば改善の提案もできるし、体も休められて一石二鳥だ。


窓の外を見ると、西日が傾いているから大体3時~4時位の時間帯だろうか。この部屋には時計が置いていないため、時間がよく分からない。そう言えば、制服の胸ポケットにロケット式の時計を入れていたはずと思い出して、見てみると時刻は3時50分だった。倒れた時間は13時からの昼休憩直前だったから、大体3時間位は寝ていたらしい。


久しぶりに頭がスッキリとしている気がする。さて、医療室でする事もないし、ベッドの上でごろごろしているだけというのも、時間がもったいない。懸案事項の採用試験の段取りを考えていこう。冒険者ギルドは冒険者の身元に関しては寛大である。貴族籍をはく奪された者、紹介状をもらえずに解雇された者、借金取りなどに追われている者が浮浪者や犯罪者になるのを防ぐ目的もあるので、冒険者登録した後にトラブルを起こさなければ過去を追及したりするのは避ける。


その反面、冒険者ギルドの職員採用は厳しい。採用試験で合格圏内にいる者すべてに身辺調査が行われ、ギルド職員として採用して問題なしと判定された者に対して合格通知を出すことになっている。これは他国の諜報員や思考に大きく偏りがある人を採用してしまうことを防ぐために設けられている制度である。合格圏内に残った者が20人いても、身辺調査の結果1~2人合格通知が出せれば良いとされている。冒険者ギルドは大陸全土に影響を持つ組織だけに、特定の国や考えを偏重することを防ぎ、中立性を保つためとはいえ時間がかかることは否めない。


採用試験は筆記試験と面接試験になる。筆記試験については、文字の読み書きが出きること、冒険者ギルドに対して相応の知識があること、自分の意見を述べることができること、四則計算が出来ること、そして可能な限り受験者の人柄が読み取れるような問題にする必要がある。


筆記試験は2種類用意して、2種類とも解いてもらう。1種類目はどちらかというと資料を読み解いて計算を行い、正解を導きだしてもらうもの。2種類目は、冒険者ギルドの規約を読み、自分の考えや強味などのアピールも含めて設問に文章で回答してもらうものにすれば良いかも。


まず1種類目の方については、簡単な質問に答えだけを書く問題を2問程度入れる。その後は、買取業務を視野に入れて仮想A国と仮想B国とでは同じ魔物素材を買い取る場合でも金額が違うのはなぜかを資料から読み取ってもらおう。ちなみに使用している金貨もA国とB国では違うため、為替相場の資料も添付しておこう。あとは、魔物素材を利用して作られる品や独自産業の資料と、出没する魔物の分布図などがあればいいかな。


2種類目については、冒険者ギルドという大陸規模の組織についての基礎的な質問を2~3問入れる。あとは文章問題としては、事例問題にしてみよう。例えば、冒険者ギルドの窓口カウンターでよくありそうな問題として、『冒険者が自分のランクに見合わない依頼表を受注しようとカウンターにやってきました。あなたは受付窓口職員ですが、どのように対応しますか。自分の考えや強みが分かるようにしながら、受注の可否を含めて相手が納得する回答を作成してください。』


筆記試験で見どころがありそうな回答者を筆記試験合格者として、面接試験を受けてもらう。面接試験はギルド長・副ギルド長が行い、副ギルド長補佐が回答を記録していく。終了後は、誰を合格圏内に残すかを判定すれば良い。あとは調査専門グループの身辺調査結果を待ってから合格者を決めることになる。


採用試験問題は、この方向でギルド長たちの承認をとればいいかと思う。あ、メモする筆記用具が医療室に無かった…せっかく考えたのに?と思っていると「みゃぁ♪ワープロソフトを起動しますか?YES or NO」というテロップとともに、目の前にパソコンが出てきた?


訳が分からないけれども、とりあえず「YES」を指で押してみる。するとパソコンの画面にワープロソフトが起動した。前世の『私』の記憶が再び甦り、どうやって操作するのかがわかる。キーボードを押して、先ほど考えた2種類の試験問題を記録していく。最後に、保存を行い終了すると、パソコンもスリープモードにしたら「ぐぅ♪」という声?音?とともに消えた。



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