17 働きたい場所
カッパーさんが心なしかウキウキしながら部屋を出て行った。そして、私の膝の上に乗るフェリスとタイパンさんの膝の上に乗るソヌス。当然、私達は動けなくなってしまったため、お互いに猫をモフりながら今後のことを相談することになった。
「リリーさんの固有スキルは凄いな。ところで、固有スキルについてギルド長に報告された後はどこに情報が集約されているのか知っているか?」
「いえ・・・想像ですが、王城もしくは王家に情報が集められているような気がします」
「あぁ、正解だ。王城には王家から特に信頼が厚い者たちのみで構成されている部署がある。そのうちの1つが固有スキルの情報を扱っている。集められた固有スキルの情報のうち、軍事に活用できそうなものは有無を言わさずに王城へ招集されて軍部に入れられる。リリーさんのような直接軍事への活用に結びつきにくいスキル保持者は、本人の意向を聞いてから処遇を決めることが多いな」
そうなんだ…。だからギルド長に固有スキルを取得したみたいだと報告したときに、今後の生活について私がどうしたいかを聞いてくれたんだ。それにしても軍事的に有用なスキル持ちは、軍隊行きというのも大変だなぁ。
私のスキルである外部媒体で音声が記録できるとなると、軍事的に有用だと思われたら不味くないかしら。諜報活動や索敵など私でも思いつくのだから、軍部が思いつかないわけがない。そうなったら・・・軍部へ強制招集されることになって冒険者やギルドを辞めざるを得なくなるかもしれない!
私の顔色が悪くなったのを見て、タイパンさんがバルから温かい紅茶を取り寄せてくれた。
「正直に言って、リリーさんのスキルは軍部にとっても有用なことは間違いない。だが、絶対に軍部に欲しいかと言われると、微妙なラインでもある。冒険者ギルドに残るのであれば、冒険者としてのリリーさんへ軍部から指名依頼という形で依頼が出る可能性はあるが、周囲にはそれとは分からないように配慮されるだろう。軍部であれば、主に後方支援または諜報活動部隊になる可能性が高いだろうな。さて、改めて聞くぞ。リリーさんはこれからの生活をどうやって暮らしていきたい?」
どうやって暮らすかぁ、王城は噂でしかないけれど華やかな世界だとは思う。それと同時に貴族様の思惑や陰謀が渦巻いていそうだし、選民思想が強い貴族もいると思う。同僚や上司がそういうタイプだと非常にやりにくい職場になってしまうと思う。仕事については、どうにかなるとしても、人間関係が上手くいかないと仕事の効率も下がってしまうからなぁ。
「リリー、王城のこと調べてあげようかにゃ?そうすれば判断しやすくなるにゃりよ?ソヌスに頼めば、こっそりと忍び込むこともできるにゃ」
「あぁ、それもそうだな。なにも今この場で決めるような話でもないしな。ソヌス、頼まれてくれるか?」
「承知しました。では、特別ソヌスごはん、おやつ、ふかふかの寝床をお願いしますね」
「ソ、ソヌス・・・タイパンさんに何て言うことを・・・」
「いやいや、当然の報酬だ。喜んで用意させてもらおう。寝床は私の自宅とこの部屋とリリーさんの自宅の3か所に用意すればいいかな?」
読んでいただき、ありがとうございました。




