155 起きたら終わっていた
「おーい、リリーさん。アンボイナ事件と人身売買事件は解決した。給料伝票終わった、採用試験終わった、要チェック受験者もジョンさんが調査中。起きて~」
有難いお告げをリンちゃんが告げている…。でも、何で大量の事務仕事が終わっているの?
「リンちゃん、ここ天国?」
「違う!ギルド所属のクエストメンバーで手分けしてやったの!」
「起こしてくれれば、私もやったのに…」
「ギルド長命令で、リリーさんは寝かしとけって」
そうなんだ…でも、何故?疑問にも思ったけれど、目覚めたときの体と心の軽さが素晴らしかった。きっと疲労が蓄積していたのをギルド長が心配してくれたのかなって思った。
それにしても、私が寝ている間に色々と終わっていたらしい…。何日寝ていたのだろう?
「えっ~と、今日はリリーさんが前に目を覚ました時から20日程後…」
「え?どうして?昏睡状態だったの?それにしては身体の調子が良いんだけれど⁈」
冷や汗垂らしつつ目線を逸らせるリンちゃん…何をやらかしたの‼
「大丈夫‼リリーさんが寝ている間の身体のケアは私が万全にしたから‼」
うん、リンちゃんが万全と言っているからには万全なんだと思う。実際、絶好調だし。
「で、寝ている間の出来事は?」
「デルフィナス国とオーラ国の王族の一部が反逆罪で粛清された。その王族と結託していた商人も同罪」
うん、よく分からない。どうしてそうなった?
「おい、リン。説明が端折り過ぎだ。両国の一部王族が結託して同時クーデターを計画。国力を削るために違法薬物等を広めていた。商人は秘密裏に人を攫い、隷属魔法などで支配するための人材調達を請け負っていた。だから、例のくじ引きは使い捨ての兵力を効率的に見つけるための手段だったんだな」
「要チェックとされたギルド職員受験者はこいつ等が送り込もうとしたスパイだった。一連の粛清を受けて全員が現在所在不明、まあ、逃げ出したか口封じに遭ったかだな。あと、大事件があったために、リンの判別の儀は延期された」
寝ている間に、世の中が大きく動いていた…そして急ぎの仕事は皆がやってくれた。何だか申し訳なくなってくる。
「私、何もできなくて…申し訳ありませんでした」
「俺がリンに命じてリリーさんの体調回復を優先させた。気にするな」
コクコクとリンちゃんが頷いている。
「ともあれ!アンボイナ事件解決‼クエストメンバーで打ち上げするよ‼」
転移したリンちゃんハウスの魔物たちが増えているのにビックリしたり、女神クレアことクーちゃんがリンちゃんと一緒に鬼ごっこしたり、酒盛りして二日酔いになったのをリンちゃんが一瞬で治療したりと楽しく過ごした。
その後、ノヴァプロジェクトの報告書をどう書くか頭を悩ませた結果、クエスト等により精神的なダメージを受けた冒険者の対応を進めていくと結論づけた報告書を提出し、一連の『アンボイナ事件』の幕を閉じたのだった。
第一部完
アンボイナ事件、一応終了です。
読んでいただき、ありがとうございます。
第2部は、すこしゆっくり目に投稿させていただきたいと思います。




