142 どぶ攫い
クエストでは『用水路』と記載されていたが、どう見ても汚水処理用の水路だろうという場所に到着する。周囲はかなり酷い臭いが漂っているので、通る人もまばらだし早歩きしている。私達は、リンちゃんが周囲に結界を張り、汚れも臭いもシャットアウトすることにした。
「だだだ~だ(尾行者が遠くからの監視に切り替えたね)」
「臭いもひどいし、通行人も少ない上に、立ち止まっていたら絶対にバレるからな」
「リンちゃんハウスからスライム達を召喚するか、地道に探すか、どうしましょうか」
「アンドン、ハナガサ、テマリ召喚!ヘドロとか汚れを食べてね。こういう革袋があったら食べないで持ってきて!」
ポイズンスライムのハナガサ、アンドンとスカベンジャースライムのテマリが物凄い勢いで食事を開始している。こちらも尾行者の目を誤魔化すために、リンちゃんをおんぶしながら地道に探すフリをする。
「沢山食べているから、分裂したね~」
気が付くと、水路にはスライム達が一杯いた・・・。
「ねぇ、尾行者にスライムがバレるのでは?」
「幻影魔法を掛けているから、余程の強者じゃなければバレないよ」
それなら安心。
「そういえば、リリーさんってさ、何処出身なの?」
「え?どうしたの?急に」
「ん、何となく気になった」
良く分からない理由だけれど、勘が鋭いリンちゃんの事だから、何か感じたのかなぁ。
「デルフィナス国の出身だよ?小さいころから、トリティクムの町で暮らしているし」
嘘じゃない。本当の事だからね。
「ふーん…、よし、後で魔法つっくろー!」
「嫌な予感しかしないんだけれど?」
ポムポムと一匹のスライムがやって来た。汚れを食べた革袋を置いてくれる。
「お、革袋だね!ありがと!」
早速、中身を見てみると…
「学園の校章とクラス証かな?名前は書いていない…」
「うーん…もう少し探そっか…」
とりあえず、保管しておこう。誰かが探しているかも知れないからね。




