109 子供達救出
この先は、敬語や敬称省略と確認したうえで、皆が教育施設という名前の砦に音もなく潜入していく。様子を見守りながら、私はリンが張ってくれた結界の中で子供が安心して過ごせるように、受け入れの準備をする。勤務の都合上来られないアゲートさんと連絡を取り合い、必要な物資をあらかじめ用意しておいたのだ。段取り、大事!
『リリー、子供を見つけた。人数は6人。タイパンとミエリンが連れていく』
『こちらは、いつでも準備OK!』
ソレノドンさんからの連絡が入った。どんな精神状態の子供達か分からない以上、私の安全も確保しないと。念のために、カッパーさんから貰った物理・魔法攻撃無効の魔道具であるアンクレットを作動させておく。
子供たちが到着‼
「…なんで4人も気絶しているの?残りの2人は…タイパンを崇拝していそう…」
「こちらに刃向かって来たからな。洗脳が深いのか、教育の一貫と思われたのか不明だが、保護はした」
「残りの2人とは少し話ができたでありんす。最近連れて来られて、毎日嘆いていたところに、超絶恰好がいい人が助けに来てくれたと言っているでありんす」
2人は女の子だからね…、目がハートの形になっているよ。
『はいはーい!砦の守りの術式は壊しといたよ~!いつでも砦壊せる!』
『リン、油断は禁物だぞ。何だか変な気配がする』
『りょ。じゃあ、安全策で子供たちとリリーをギルドに転移させておくね』
山羊さんに頭突きされて、一足先にギルドの医療フロアへ転移した。
アゲートさんが待ち構えていてくれて、意識のある女の子2人は浴室へ。意識の無い子たちは出張してきたエチゼンたちにモグモグしてもらう。汚れ等があると、衛生的に良くないからね。
意識を失っていたのは男の子達で、出自が分かるようなものは身に着けていなさそうだ。着ている服も教育施設で支給されたと思われる濃灰色の運動着だし、髪型も同じ。
身体的特徴からドワーフ族1人、ネズミ系の獣人2人、人族1人だろうか。
浴室に行った女の子達は、エルフと同じくネズミ系の獣人だと思う。ネズミ系獣人が3人もいるって、多いなぁ。バルには子供たちが目を覚ましたら、お腹の好き具合に応じて料理またはデザートを注文させてもらうと伝えてある。
冒険者を怪我で引退してバルの料理長になったコクウスさんには、攫われた子がスパイに仕立て上げられそうになっていたところを救出したと伝えてある。コクウスさん曰く、最低限の食事で限界まで追い込んで洗脳する事が多いそうだ。解放されたと実感してもらうために、食事は消化の良いものと甘味を用意すると意気込んでいた。
アゲートさんが女の子2人を連れて戻ってきた。女の子達は、浴室で汚れ等を落としてリラックスしたのか、安堵している表情だ。エルフの子はお姉さん気質なのか、もう1人の女の子の様子をすごく気にかけていて微笑ましい。見た目は同い年位だからね。
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