106 アテナさんの理由
「ハハ…S級がこの場に3人、A級1人、D級1人、ギルド暗部、魔道具狂い、狩人か?小さな国なら滅ぼせそうだな…」
「まさかS級が弱味を握られて、この件に関わっていたとはな…」
ギルド長は苦い顔である。
アテナさんは事情を話してくれた。
「S級冒険者として活躍中に、オーラ国で知り合った男性と恋仲になった。お互いに結婚適齢期を過ぎた30代でもあり、このまま結婚し、冒険者を引退するつもりでいたんだ。
夫となる男性は今までは主に魚の行商をしていたが、結婚するなら腰を据えて暮らすために、家を購入して2人で店を開こうと準備を進めてくれていた。
その矢先に私に子宝が宿り、自宅購入や店の準備は後回しにすることになった。オーラ国の町に一軒家を借りて、引っ越しをした。無事に男の子を出産し、乳離れも済んだため、自宅購入と開店準備にとりかかろうとしたところで、異変が起きたんだ。
ある日、冒険者引退届をギルドに提出するために、自宅を留守にした際の事だった。ギルド到着直前に、浮浪児が手紙を渡しに来たんだ。
手紙には夫の字で『愛しの君へ。ある人に招待を受けてしまった。坊主と一緒に、暫くお世話になることになった。その人は君と話をしたいそうだ。どうか、その人の話を聞いてほしい。冒険者ギルドには行かずに、自宅へ戻ってくれ。その人の使いの人が待っているはずだ』と書かれていたよ。
私達夫婦の間で、誰かに脅迫等をされた状態で相手へ連絡しなければならない状態になった時には、『愛しい君へ』から始まる連絡にすると決めてあった。人質2人を取られ、相手が誰だか分からない時には下手に動けない。おまけに、仮にもS級冒険者の自宅なんだ、周囲に知られないように対策もしていた。それなのに、襲撃があったという事は、冒険者ギルド内部、しかも上層部に私の情報を漏らした奴がいるということだ」
「それで、夫と子供が殺されないように指示に従ってた、ってこと?」
「娘~‼帰って来い!」
「ゴルディオイデアに関してはS級冒険者のプライドにかけて、極秘に排除したさ」
「そっかぁ…そっかぁ…許さない…」
ポヨヨン~!とエチゼンが乱入したかと思うと、ラーノさんを飲み込んで去っていった。
「絶対に…ぶち殺してやる…」
「「「だな」」」」
「許さない…地獄よりも辛い苦しみを味合わせてやろうか…」
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