104 娘が…いない
一際大きな音が響いたかと思うと、アテナさんの短剣が折れて、刃先が飛んでいったらしい。気が付いたら、アテナさんがリンに振り被った状態のまま固まっていて、リンは懐に入りアテナさんの身体にナイフを吸い込ませていた。
『「転移‼」』
すぐに2人の姿が消えた。
『ふぃ~、危なかった…』
リンからすぐに音声が入った。
『死なせていないよね(な)⁈』
『危うく即死させちゃうところだった‼あと5mm位、刃先が入っていたら…。強い人相手だから手加減ムズイ!』
か、紙一重だったのね。良かった…死なせなくって。
『今はアテナさん、気絶中。ついでに、古傷とか治療しておいた。慰謝料代わり』
『リン、私とソルさんは子供が攫われてオーラ国から連れ出されたという情報を得たから、誘拐犯の足跡を追うっていう名目で、一度オーラ国から出国するわ』
そうじゃないと、子供が攫われていても平気でクエストを受注する親になっちゃうからね。
怪しまれないように、ギルドに情報収集クエストを出しておいて、有力な手がかりとなる情報については報奨金を出すことにする。
「皆さんの情報が頼りだ。よろしく頼む…‼」
ソルさんが悲痛な声を出して、周囲にアピールしている隣で、私も頭を下げた。冒険者達は、私達(偽)夫婦に同情してくれており、情報収集は任せておけ!と言ってくれているのが、少し心が痛い…。
人気が無くなったところで、早速リンちゃんハウスへ転移してもらった。
で、行方不明のはずの娘が大きくなって、ニコニコしながらアマルの背中に寝っ転がっている姿を見ると、今も頑張って情報収集してくれている皆さんを思って、胃が痛い…。
「おかえいらっしゃ~い」
「娘が~!いない~‼」
うん、ソルさんや、貴方の娘は大きく育ったんだよ。
「何言っているのさ。これが本当の姿だって知っているくせに‼」
「い~や~だ~!娘がいなくなるなら、クエストやらね!」
「…(ポン)だ…」
「娘‼リン‼パパだよ~♪」
「…だ…だ…」
『リリーさん…これ、どうしたら良いの?』
『あ・き・ら・め・て』
ソレノドンさんのキャラが…




