100 寝ぼけてマス
『で、この雇われの奴らはどうするのさ?』
『そうだな、魔の森に1か所だけではなく、複数の育成施設があるだろうな。リンの資料は誘拐を担当するメンバーだけだから、リンは育成担当者が出てくるまでは大人しく待機していろ』
『つまんない!寝る!』
リンが寝てからしばらくすると、突然大きな物音が聞こえた。
『リン、起きている?何しているの?』
『「くか~、クロ~、遊ぼ~、むにゃ」』
『寝ぼけてやがるぜ、主』
『「エチゼン~もにょもにょ~」』
…リンの寝相の悪さを思い出すと、檻の中は凄いことになっているのではないだろうか。
『ソヌスのカメラをもう一回繋いだでありんす』
『ちょっとっと、危険だから実体化は解除しますね。なんなの、足が降ってくるわ!』
ソヌスから送られてきた映像を見ると、リンはぐっすり寝ているのだが、右に左に転がるわ、足や手はブン回すわ…。3歳児の身体とS級冒険者のスペックは、寝相には最悪の相性みたいだ。
『「こいつが今日捕まえた特上の奴です」』
『「寝てますね…。まぁ、3歳っていう話ですし、体力も無いでしょうし。ただ、寝相悪いですねぇ」』
『「ん~?かぼちゃ~…違う。ゴキブリ…やーだー!やーだー!」』
ゴキン!ドカン!
映像を慌てて確認すると、リンの足が檻を蹴破り、格子が先程声がしていた男性達に突っ込んでいた。
『「ゴキブリ、キライ!消えて!やーだー!やーだー!」』
リンが腕を更に振り回すと、檻の中に入れてあったトイレ用の壺や、水差しが宙を舞う。しかも、的確に男性達にぶち当たっていく。さすがS級…。
『「うぎゃ!」「ぐっ!」』
『「な、何なんだ此奴!おい、誰か起こせ!」』
『「セクハラはんたい~!気持ち悪いよ~!びええええ~!」』
『「ぐわっ…」』
あれ?その後の音声が聞こえなくなったよ…。どうやら、男性達の意識は刈り取られた模様だ。
『「テマリころりん…すっとんとん…ころころころりん…すっとんとん…むにゃ」』
『え?リンちゃん?起きる時間ですよ~!起きて‼それ以上暴れると、男たちが死んじゃうから‼』
『ふわ~、ん?何、こいつら?』
『お前なぁ…大人しく俺が行くまで待機しろって言っておいたのに。どーして、やっちまうかなぁ…再教育するか・・・』
ジョンさんの声が心なしか低くて…、怖い。
『?何言ってるの?寝てただけなんだけど?なんで再教育?』
『周りを見てみろ』
『え?勝手に暴れただけでしょ』
『お・ま・え・が・な!』
『解せぬ』
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