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ギルド職員は忙しい  作者: 猫の子子猫
1/20

1 倒れちゃったよ

読んでいただき、ありがとうございます。初投稿、ゆるゆる設定、ご都合主義ですので、至らぬ点が多数あると思いますが、広いお心でご覧いただければ幸いです。

「あぁ、忙しい…?こんな時こそ、パソコンと表計算ソフトとワープロソフトがあれば全然違うのに?」

思わず口にした言葉に、自分で首を傾げた・・・。パソコン、表計算ソフト、ワープロソフトってなんだろう。自分が知っているこの世界に、そんな言葉や物はなかったはず・・・。疲れすぎていて何かおかしくなってしまったのだろうか、と思った途端に頭の中に情報の渦が起きて、めまいを起こして意識が遠ざかっていく・・・

「大丈夫ですか?リリーさん?」同僚の声を聴きながら、意識が暗闇に閉ざされてしまった。


ふっと目を開けたらベッドに寝ていて、こげ茶色の天井が見えた。自宅の部屋はベージュや白だから、ここは冒険者ギルドの医療室だろう。冒険者ギルドには、冒険から帰ってきた冒険者に毒、呪い、感染症など周囲に危険が及びそうな兆候が認められた場合、隔離措置を行うための医療室がある。まさか、自分が医療室のお世話になるとは思わなかったと思わず苦笑してしまう。


医療室は医療フロアにあり、個室エリアと大部屋エリアがある。私が今いる部屋は個室だった。個室の中には、ベッドと、ベッドの上で食事ができるように高さを合わせている移動式の机、薬などを上に置けるように天板がついている鍵付きの2段の小物入れ、冒険者の装備や着替えなどを入れることができる高さ2m位の鍵付きロッカーがある。あとはトイレ、洗面台、大部屋にはないシャワールームが備え付けられているため、女性冒険者には好評だったりもする。


ちなみに、大部屋は同じ症状の人が多かった場合に使用される。医療班が使用する廊下に沿って、4人1室の部屋が6部屋ある。大部屋については、部屋ごとにトイレと洗面台を使用しないといけないし、シャワールームは全ての大部屋で共有ため、冒険者の症状や人間関係によっては非常にストレスがかかると聞いたことがある。


医療フロアは、隔離措置された冒険者の脱走防止措置が施されていて、脱走した場合は冒険者ライセンスのはく奪も含めた厳罰が規則に規定されている。脱走防止措置が充実しているため、滅多なことでは脱走を成功させる人はいない。ただ、行動が規制されることに反発をする人は多く、10人いたら1~2人は脱走を試みる。理由を聞くと「自由でいるために冒険者になっているのだから」「自分の症状が周囲に危険を及ぼすはずがない」「食事は好きなものが食べたい」など、自分勝手な言い訳をするのが大半だ。


移動式の机の上には、水差しとコップがおいてあった。メモに同僚の字で『リリーさん、まずはゆっくり体を休めてください。また後で来ますが、無理して働きに来ないでくださいね。迷惑ですから~?』と書かれていた。


目を覚ます前のことを思い出してみたいと思う。まずは自分の名前から。本当の名前はリーリウムだが、その名前が周囲に知られると困ることになると両親から聞かされていたため「リリー」と名乗っている。なぜ周囲に本当の名前を知られると困ることになるのか、詳しいことは聞いたことがない。少なくとも平民で冒険者ギルドで働いている身としては「リリー」の方がしっくりとくるため、「リリー」で通している。本当の名前はギルド長だけには伝えているが、特に通称名で働くことに問題は無いとお墨付きをもらっている。


冒険者ギルドとは、職業を『冒険者』とする人たちを束ね、サポートを行う組織である。冒険者ギルドは、本部が『ユーラ大陸』の『スピカ国』という国にあり、大陸に存在する多くの国に支部がある。私が働く冒険者ギルドも、正式名称は『冒険者ギルド デルフィナス国支部 トリティクム館』となる。


冒険者ギルドの業務は、『冒険者』の名簿・ランクの管理、冒険者へのクエスト発注と受注、魔物の解体・素材買い取り、新人研修、規律違反者の取締り、緊急時の防衛対策、銀行業務、冒険者ギルド職員の給与支払いや人事や互助業務など様々なものがある。年中無休・24時間体制で営業しているためシフト制勤務である上、『冒険者』は必ずしも人格者ばかりではないので常にいろいろなトラブル処理がつきものである。


冒険者ギルド職員になるためには、筆記試験と面接試験がある。字が書けないと試験すら受けられないため、字を教えてくれた両親には感謝である。冒険者ギルド職員になると安定した給与がもらえるため、人気職ではある。ただ、女性職員は稼ぎがいい冒険者と知り合いになれるため、2~3年で結婚して辞めていく者が多い。男性職員にしても、様々なトラブル処理などで疲れ果ててしまい、気が弱い職員などはあっという間に辞めてしまう。だからか冒険者ギルドの職員で勤続年数が長い職員というのは、自分も冒険者の経験があったりすることが多い。かく言う私も、一応登録上は現役の冒険者である・・・ギルドの仕事に忙殺されていて滅多にダンジョンには潜れないが。


私は、冒険者ギルドに18歳の時から8年間勤めている。最初の3年間はカウンター業務、次は新人育成のための研修や互助業務を2年間勤めた。5年勤続した時点で、中堅職員扱いとなり冒険者の名簿・ランク管理と平民からの発注を受ける業務、銀行業務を受け持った。そして、8年目となる今年からベテラン職員扱いとなり、職員のシフト管理・人事業務、富裕層の平民からの発注を受ける業務などの中間管理職的な『副ギルド長補佐』というポジションを任されることになった。


ここ最近は、魔物が多く出没していたので冒険者への依頼注文が多かった。また冒険者が倒した魔物の討伐件数も多かったため魔物解体と素材買取業務も当然忙しくなっていた。しかも、中堅職員として勤務していた職員が1人退職し、ベテラン職員が家庭の事情のために他国へ越していったため、欠員2名という状況であった。欠員補充の職員募集を行う準備を進めていたため、ここ最近は睡眠時間が4時間前後という非常に健康に悪い状況が続いていた。


そういえば、私が倒れる直前に「パソコンと表計算ソフトとワープロソフトがあれば・・・」と言っていたことを思い出した。一体なんの事だったのか・・・と考えた途端に、四角い薄い箱のようなものが頭に思い浮かんだ。その箱のようなものは『ノートパソコン』といい、箱の真ん中で開くことができ、上の方はディスプレイ、下の方にはキーボードと言われるものがあった。


そのパソコンで表計算ソフトとワープロソフト、インターネットなどを利用しながら、仕事をしていた女性が・・・『私』だ。でも、私はノートパソコンなどを見たこともないし、聞いたこともない。つまり、頭の中に浮かんだ『私』はおそらく、前世の私なのだろう。


このユーラ大陸では様々な『人』が存在している。エルフ、ドワーフ、獣人などがいるため、信じているものも多種多様である。そのような環境だから、不思議なことがあっても「フーン、そういうこともあるんだね」位の反応で終わることが多い。


前世の記憶が、私の中によみがえったとしても今の自分に影響がなければ無問題。誰に迷惑をかけるわけでもないから、今後このように倒れなければいいだけの話だ。もし、周囲に迷惑などを掛けそうであれば、その時に考えよう。


最近の仕事の忙しさが、前世の記憶が甦るきっかけになってしまったのは間違いなさそうだ。少し仕事をセーブしないといけないなぁと思っているうちに、また眠ってしまった。


ありがとうございました

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