託された希望
特になし
目の前に降り注ぐ鉄の雨に彼女は立ち尽くすしか無かった。だが、それと同時に心の奥底に眠る煮えたぎる怒りと憎しみが爆発した。彼女は走った。弾丸をくぐり抜けるように走った。彼女が向かうのは集落の外れにある資材置き場。そこにはこれまでの戦争で大破し、放置されたMPが数機あり、それを解体し売り捌くことで集落を維持していた。
何とか資材庫にたどり着き、RP軍のMP、"ガドゥス"に搭乗した。ガドゥスはエンドアースになった直後にMPを開発し、両軍に出荷するセタス商会のMPで、現在では廃盤となった古いMPだ。ガドゥスのコックピットは簡易的なもので、操縦レバー、アクセル、ブレーキなど、一般の乗用車と大差ない操作性で、彼女が扱うには申し分ない容易さであった。ガドゥスを起動し彼女は資材庫から飛び出したのであった…
-3日後-
彼女はガドゥスと共に戦場を抜け出し"機密庫"と呼ばれるエンドアースK-25エリアにある機械兵の保管庫を訪れた。ここは集落で出荷していたMPの部品を買い取ってくれたジャンク屋、カイラムの基地があった。
だがしかし、機密庫はものの抜け殻で、残っているのは赤黒い液体と山のように積まれた人間のみであった。彼女に恐れはなかった。ここまでは想定内であったからだ。集落付近で戦争が起きる2日程前に機密庫の付近で戦争があったからである。鼻が曲がりそうな腐敗臭の中を進み、彼女は1つのハッチの前に立った。
カイラムの頭に気に入られていた彼女は、以前1つのカードキーを預かっていた。"困った時、機密庫の中の0番ハッチに希望がある。君がそれを起こすとき、希望は君に応えてくれる。"そう言い聞かされていたのだ。
彼女はカードキーを使った。0番ハッチが開く。機密庫の他の機械兵は全て戦争に駆り出されたらしい。
ここに残るのは""希望""のみ。
ハッチが開いたその先にあったのは一機の機械兵であった。その機械兵は何処か儚く、遠い何かを見つめているように立っていた。
彼女は語りかける"あなたが希望?"
機械兵は目覚める、鋭く煌めく眼光が、少女を見つめる。何かを確信した少女は昇降機に立ち機械兵の腹まで上がる。コックピットハッチが開く。少女は乗り込む、希望を胸に。
少女はこの機械兵についての情報をなにも知らない。
ゆくあての無い希望と、それを託された少女は、果てを知らない旅に出た。
1話1話をキリよく終わらせたいので1話の文字数が1000文字数前後になります。ご承知おきください。