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リトライター!  作者: 結城 集
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魔王と勇者と異世界と

はじめまして 結城 集 (ゆうき しゅう)といいます。

いわゆるWed小説というのは初めてですが、どうかしばらくお付き合いください。


怪しげな炎によって照らされた魔王城では一人の少年と少女が戦いを繰り広げていた。


少女が喉元を切り裂く爪を右手で横薙ぎに繰り出し、少年が剣でそれをそらす。素早く剣を戻し少女の上体の重心が前に倒れきったのを確認し、少年は下から片手で逆袈裟斬りを放つ。

しかしその剣はまるで読んでいたかのように少女の左手の爪に防がれる。

防いだ剣の威力を利用し剣を軸に空中で一回転をして体制を整え、少年の顔に慣性をのせた蹴りを放つ。

とっさに剣の柄を放してつま先で柄を蹴り上げ相手の軸をずらし、少年は直撃を防いだ。剣は決して放さなかったがその分の殺しきれない衝撃を大きく後退することで地面に逃がした。

ここで両者の距離が開く。そんな一進一退の攻防が繰り広げられる光景がもう何時間も続いていた。


「もういいだろ!俺には”聖なる鎧”の自動回復がある!このままやっても俺の勝ちだ!おとなしく王国と調停を..」


(自動回復は嘘だ。しかし俺には回復薬がまだ残っている。ここで降伏してくれ...)


しかし魔王は遮って話した。


「おぬしの勝ちじゃと?」


不敵な笑みを浮かべ魔王は続ける


「まぁそう言うでない勇者カイセイ..たしかにこのままならお主の勝ちじゃった。じゃが、すでに準備は整った。」


ボロボロの魔王城にやけに冷たい風が吹きすさぶ。


(一体魔王は何をする気だ...)


辺りを少しうかがっても何かが起きる気配がない。


「わからぬも無理はない。これはわらわたち魔族しか感じることのできない、魔素...いわば負のエネルギー...」


魔王は続けた


「時刻は深夜、そしてこの時間こそが魔素が最も満ち、わらわの力は増大する!」


「まさか...まさか今までは全力じゃなかったとでも言うのか!」


「そのとおりじゃよ...とはいっても、先程まではまごうことなき全力じゃった..じゃからおぬしを称賛しているんじゃ。」


「じゃから、その研鑽に敬意を示し、わらわの最強の一撃でお前を討つ。それに耐え、立っていることができたなら、人類と平和の調停を結ぶと約束しよう。」


「本当か!」


「もちろん。わらわは嘘をつかぬ。」


(なんのつもりだ?)


「じゃあなぜ魔物を人類にけしかけたんだ!」


「ふむ。その程度の条件で何故...?といった顔じゃな。それはな、先代魔王に関係しているのじゃ。」


魔王は終始愉快そうに続ける


「というのは建前でな。その人間でありながらわらわと同じ領域まで達するその器...わらわはお主に興味が湧いた。お蒸しの本気が見たい...というくだらぬ理由ではだめかのう?」


魔王は俺をまっすぐ見つめながらも、その紅く黒い魔力を両の手に纏う。


「冥土の土産はくれてやった。ゆくぞ!!!」


辺り一帯に濃密なさっきが満ち、思わず勇者は身構えた。



(この気配...魔王は本当に全力で来る...そして、やつの全力には守りの技ではダメだ...仕方ない...()()()だ)


「聖剣よ。人々の願いに応え、我が生命力を糧にし、その輝きを放て。最終聖剣奥義____」


剣を両手に持ち、少年は眼の前の少女に向かって叫ぶ。


「面白い!さぁ撃ってこい!歴代最強の勇者カイセイの全力の一撃、わしの全力を以て迎え撃とう!」


魔王ライカと呼ばれた少女は高く飛び上がり、呪文を唱える


「くらうのじゃ!原初魔法「深淵(アビス・)煉獄(ヘルファイア)」!」


魔王を囲むように出現したいくつもの魔法陣から、空間を歪めるほどの熱量の暴力が出現し勇者を襲う。剣を大きく振りかぶり横一閃の構えを取った勇者は剣に光の粒子を集結させ、さらなる熱量をぶつけんと大きく踏み込む。


(前へ!!!)


「”聖剣轟斬破”!!」


熱量の奔流、開闢の一撃同士のぶつかり合い。そこには拮抗などという現象は存在せず、互いのエネルギーが接触した瞬間、空中で解き放たれる。いかに力を放出し続け、相手を倒すかという消耗戦に似た戦いだった。


互いに力は同程度のようにみえたが徐々に魔王の増大した力に押されていた。

しかし一歩後ろに下がれば消し飛んでしまう状況で勇者は前に前に踏み込んだ。

絶死の力の前に生物としての本能が働いたのか、その選択は限りなく正解だった。

呼応するように聖剣も力を増してゆく。



しばらくたったあとに、力の大きさに空間が耐えきれなかったのか突如として爆発が起こった。

言葉にするなら空間の反発作用。エネルギーを受け続けた空間が限界を迎え、反発し、一瞬のうちにエネルギーが注ぎ込まれ爆発が起こった。


これは結果としてこの終わりなき戦いに決着をもたらすことになる。



突如として増大した両者のあまりに強大なエネルギーに、前へ前へと進んでいた俺は抵抗することすらできず、ただまともに喰らうことしかできなかった。

走馬灯は巡るまもなく、そして白一色。視界に写ったのはどうしようもなく綺麗な真っ白だった。


(ごめん。みんな...どうやら俺はここまでみたいだ。)


俺__キノシタ カイセイの()()()の人生は、ここで終わってしまった。



「み..ごと....」


最期にきこえたのは幻聴だったのか...そんな事を考えている間に視界は暗闇に染まっていった...

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