タネ明かし
完結から間が空きすぎてごめんなさい……。
アフターストーリーとはしていますがエピローグ前半と後半の間になります。
「格納庫に何か御用ですかい姫様、それにラ……王妹殿下」
「リーリオに乗りたいの、できるかしら?」
「乗るっていったって古代戦争が終わって戦争再開の目途もたってないんですぜ、今乗ってどうするんです?」
「火は入れないわ、コックピットの中に用事があるだけ」
「はあ、動かすなら陛下の許可が必要ですがそういうことなら」
リフトを操作してコックピットへ向かう。
それにしても王妹殿下、かぁ。
コルネリアと結婚して立場が大きく変わったから仕方ないことだとは思うんだけど、おっちゃんとこれまでみたいに話せなくなるのはかなり寂しい。
「慣れなさいな」
「え?」
「今の貴女は救国の英雄にして王族の一員なの、難しいコトかもしれないけれど立場があるのだから」
それはわかる。
わたしも裏切ったとはいえ元々は軍人だ、階級や立場が大事なことは承知してる。
ただ嫁入りの立場でもここまで持ち上げられるなんて少し前まで想像もできなかったせいで、今はまだ違和感が強い。
「ここで何をするんですか?」
「その敬語ももう必要ないのだけれど、今はいいでしょう」
本題が先ね、と流され。
「出て来なさい、AI」
用があるのはAIなのか。
「ワタシに御用ですか?」
「そうではなくて、出て来なさいと言ったの」
「…………」
AIが黙っちゃったけど、どういうこと?
「ハイハイ、こうでちねー」
さっきまでAIの声が出力されていたコンソールがパカっと開いて、なんか子供が出てきた。
って。
「はいいいいいいいい!?」
どういうこと、どういうこと!?
開いた場所を覗きこむ。
けど中には何も無い、空っぽじゃん!
もう、わけがわからない。
「落ち着きなさいラスト、いつもの貴女はどこへいったの?」
「わたしそんなに冷静沈着なイメージあるんですか」
言われた通り落ち着こう、コルネリアは前から知ってたみたいだし少なくとも悪い話じゃないハズ。
「そろそろいいかしら。 この娘がAIの正体よ、本人曰く愛を司る精霊とのことだけれど」
「アテクシは正真正銘、愛の精霊でち!」
「そういえば、だから前に愛の使者みたいなこと言ってたんだ」
精霊なんてものおとぎ話の中にしかいないモノだた思ってたけど、まさか実在するなんて。
ってあれ、前にもどこかでこの声……。
そうだ、思い出した。
「あの夢の中で話しかけてきたのもAIだったの!?」
「そうでち、こちらの世界に召喚するにも同意が必要だと思いマシテ」
「あの短いやり取りだけで合意が形成されちゃったんだ……」
まあでも今のわたしは好きな女性と結婚できてるんだから嘘は一切言ってないのか。
それから疑問に思っていることがまだいくつか。
「結局特定の人が乗らないとリーリオが動かない仕組みって何だったの?」
条件だけは初めて乗った時に教えてもらったけど、なぜ条件があるのかは知らないままだった。
「それは、アテクシのやる気でち!」
「……はい?」
「アテクシは男や一部の女に乗られてもやる気出ないでち、だから動きたくないでち!」
「ええー……」
そんな理由アリなのか。
でも気持ちはわかる、わたしもAIの立場ならきっと同じことするわ。
「で、もうひとつ。 AIはどうしてあの空箱の中で機械のフリをしてたの?」
「最初から姿を見せて普通に支援するよりもそっちの方が楽しそうだったからだそうよ」
「楽しそうって……、でも実際にずっと助けられてきたワケだからまあいいか」
AIの管制はずっと的確だったもんな。
しかし見た目と話し方が幼いせいで機械のフリしてた時とのギャップが凄い。
「そろそろ戻りましょう、長居するのはヅガルがいい顔しないわ」
「あ、はい。 AIも来る?」
またうっかり敬語を出してしまったことにままならなさを感じつつAIに尋ねる。
ここに1人でいるよりはマシかと思って訊いてみたんだけど。
「アテクシは身体であるリーリオの外に出られないから無理でち」
「そうなんだ……」
これまでも、そしてこれからもリーリオに乗る時以外はずっとここで1人なのか。
少なくともわたしには耐えられないことだ。
「大丈夫でち、これくらいの距離なら2人の愛の波動はちゃんと届くから栄養は十分でち!」
「あれ、わたしまた顔に出てた?」
「アテクシは愛の精霊だから人の心を読むくらい簡単でちよ、普段は使いまちぇんけど」
「こっわ!?」
愛の波動とか栄養ってなんだよって言おうとしたけど吹っ飛んだわ。
そんなことまで出来るなんて、精霊っていうのは人の人智を越えた存在なんだなぁ。
「じゃあ、今度こそ戻るから」
「これからも素敵な栄養をよろしくでーち!」
AIの正体が機械じゃなかったのは驚きだけど信用はできるみたいだから、まあいいか。
幼過ぎたのが残念だったかな、もう少し外見が育ってたら射程圏内だったんだけど。
このエピソードはもともと本編中でやる予定だったのですが、テンポを悪くしてしまうためここまで後回しになってしまいました。
AIは時々本編中でも本来の口調になりかけ、取り繕う場面があったりします。
アフターストーリーはもう少し続くのではまた明日お会いしましょう。




