ずっと同室だったのに手を出さなかったのはわたしがヘタレなせいでは断じてない
「それじゃあの、調印式でまた会おうぞ!」
こっちの偉い人達との会談で話がまとまったらしく先生はその報告をするため、帰国した。
わたしが調印式なんてモノに参加できるとは思えないけど、それは置いといて。
こういう展開を望んでいたわけだけど、ここまでスムーズに話が進むと何か裏があるんじゃないかと思ってしまう。
けど、シャーレットさん曰く。
「スムーズにいって当然よ、まだ戦争を続けられるだけの余力があるのならあの分断作戦にその分もっと兵力を投入していたわ」
とのことで、もうカッツカツだったらしい。
というわけで……。
「久しぶりの我が家!」
というには語弊があるけどドリューナル王城にあるわたしに宛がわれた部屋へ帰ってまいりました!
「厳重警戒が解除されてローテーションとはいえ帰国できるようになって良かったですね」
「リーリオが機動力あるお蔭で何かあったら飛んで行かないといけないけどね」
「その時は私もタユカさんとご一緒しますし」
だから優先的に帰国できたっていう事情もある。
「リンナちゃんはまだわたし付きなの、タユカじゃなくて?」
「タユカさんの世話係になってしまったら仕事どころではなくなってしまうので……、それと比べたらラスト様はまだ理性が働いてくれて助かります」
まだって言ったよ、ホント初めて会った時とは印象が大きく変わったなぁ。
あの頃のリンナちゃんは可愛い、今のリンナちゃんも可愛い。
悩ましい……。
あとタユカ少し自重しようか。
「そうそう、そのタユカも関係あるんだけど」
「なんでしょう?」
「結局復讐らしい復讐ができないまま停戦を迎えそうなんだけど、リンナちゃんはそれでいいのかなって」
なにせそれでひと悶着あったのだ。
簡単に引いてくれるだろうか。
「私は姫様の決断を支持します」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……」
「私は姫様とラスト様に仕える身です、お二人が決めたことなら私はそれに従います」
リンナちゃんがそれで納得してるならそれでいいか、正直「復讐させてください」って言われるものかと思ってたけど。
ならこの話はこれでおしまい!
今この場で意見をひっくり返されても困るし。
「前線基地と違ってフカフカのベッド気持ちいいー♪」
ベッドにダイブしてゴロゴロ転がる。
なんかこう帰ってきたって感じがする、もう故郷ではなくここがわたしの帰る場所だ。
「でも王城だとコルネリア様と別室なんだよなー」
いや前線基地で同室だった時にも色っぽい展開なんて一切無かったけどさ。
「私としては早々に既成事実のひとつでも作っていただきたかったのですが」
「わたしとしてもそうしたかったけどさ、やっぱり落ち込んでるところを狙うのはダメでしょ」
表向きは気丈に振舞ってたけど、エルトレオ王が倒れたショックは大きくて当たり前だし。
そこに付け入るのはわたしの主義じゃない。
そうだ、それで思い出した。
「そういえばさ、最近コルネリア様の様子がおかしいんだけどリンナちゃん何か知らない?」
「様子がおかしい、ですか?」
「そうなんだよ、なんだか距離を取られてるというか……」
「それは困りましたね……」
こういう展開はわたしとコルネリア様にさっさと結ばれてほしいリンナちゃんとしても困るらしい、だから協力的だ。
「具体的にはどういった感じなんでしょうか?」
「なんかこう距離が近いって離れていったり、目を合わせて話をしてくれなかったり」
「そんなことが」
「なんか嫌われることしちゃったかなって、いや心当たりはあるんだけどさ……」
可愛い女の子を見つけると辞められないし止まらない。
「ラスト様はご自身からガンガン行くのに結構ニブいのですね」
「え?」
「姫様はラスト様と違って初めてなんですよ、感情のコントロールが簡単にできるとお思いですか?」
「それって……?」
「これ以上は私の口からは申せません、姫様と直接お話になってください」
その話し方からしてリンナちゃんは正解がわかったみたいだけど、どうやらわたしに教える気は無いっぽい。
ぐぬぬ、どうしたらいいんだ。
本当に好感度が下がってるなら直接訊きに行くのも怖いんだけど……。
こんな話をしていますがこのまま停戦協定が締結して終わりでは文字通り「お話にならない」のでもう一波乱あります。
というわけで次回から2章「古代戦争編」のクライマックスに突入します。




