アリユの覚悟
今回アリユは精神的な余裕がほぼないので大半を☆無しでお送りします。
*アリユ視点
「そんな、どうして……」
「偶然よ、でも今はその偶然に感謝したいわ。 あたしの手でアンタを殺せるだもの、アリユ・ランフィール!」
アタシを包囲するドゥークタード部隊。
それを指揮しているのは別れたかつての恋人、シャーレット・ハレルソンだった。
ラストちゃんには別れたって言ったけどあれは嘘。
本当は、アタシが黙って消えた。
そうすればシャーレちゃんも裏切られた側になって追及の手は伸びない、そう思って。
「待ってシャーレちゃん、アタシは……」
「黙れ裏切者、その呼び方をするな!」
直接会えばこうなるんじゃないかと思っていた。
シャーレちゃんはきっとアタシを許さない、だから戦場で出会わないようにずっと願っていたのに……。
これも全てアタシの想定の甘さが招いたことなのかな。
でも敵同士になってしまった以上、アタシも覚悟を決めなきゃ……。
「総員事前に指示した通りに動きなさい、そうすれば例え見えない攻撃だって」
シャーレちゃんの言葉を遮るようにドゥークタードが4機崩れ落ちる。
それは勿論、アタシの有線ビット攻撃によって。
「調子に乗るなっ。 裏切者だから容赦なく殺していい、かかれっ!」
合図を受けて敵機が動き出す。
確かに、プレナシエードの迷彩有線ビットを警戒した動きだ。
だけど。
「バカなっ!?」
次々と攻撃を受けて倒れていくドゥークタードを前にシャーレちゃんの驚愕する声が響く。
「いつものパターンにばかり頼ってると見切られちゃうのはラストちゃんの時に反省したからね、最初から本気でいかせてもらうよ」
「くっ、だったらプリフォートティーゴシステムで!」
うん、そんなのわかり切ってる。
「プリフォートティーゴシステムなら、こっちにもあるよ」
こちらもプリフォートティーゴシステムを起動させる。
元々はオーベルロードにアタシが技術漏洩させてセカンドウェポンとして用意しておいたもの。
ラストちゃんとの闘いでは宣言する前に中断されて出番がないままだったんだっけ。
当然、古代戦争では関係ないから最初から搭載されている。
「そ、そんな……」
「ごめんねシャーレちゃん、一方的に制圧させてもらうよ」
その後はもう、戦闘と呼べるかすらわからなかった。
見えない攻撃に蹂躙され、元々から性能差があるにも関わらず更にプリフォートティーゴシステムで大きく開かれる。
例え技量がアタシと同レベルのシャーレちゃんでも、この差は覆せない。
そうして決着は、あっさりとついた。
「どうして……」
シャーレちゃんの声が聴こえる。
「どうして殺さないのよ。 あたしだけじゃない、この場にいる兵士全員が生きてるじゃない!」
「それは……」
「アンタはもう敵なんでしょう、だったらもう1人の裏切者みたいにちゃんと殺しなさいよ!」
「無理、だよ……」
アタシもラストちゃんみたいに覚悟を決めようと思った、けど無理だった。
何も今回ばかりじゃない。
これまでの戦闘でも、アタシは直接だと1人も手にかけてはいない。
殺さずに済ませる余裕があるからだけじゃない。
1人も殺さなければ、この古代戦争が終わった後でまた故郷に帰れるんじゃないかとどこかで考えていた。
この侵略を止めたいのであって、裏切りたいわけじゃなかった。
中途半端だ……。
「あたしを殺すことも、連れて行ってくれることもしない。 一体何がしたいのよ!」
「え?」
今、なんて……?
「アンタが侵略戦争を続ける現状に不満があることはわかってた、だから声を掛けてくれるのを待ってた」
バレてたんだ……。
「なのにアンタは1人で出て行った、あたしを置いて!」
「それは、巻き込みたくなくて……」
「そんなことされて喜ぶとでも思ってるの。 『一緒に来て』って言ってくれれば、あたしは……」
酷い勘違いをしていた。
1人で勝手に決めて、それでシャーレちゃんのためにもなると思っていた。
でも本当はそんなの的外れで、2人で一緒に決めないといけないことだったんだ……。
今まで1人も殺害してこなかったのも、未練があったから。
またシャーレちゃんと笑い合いたいって、そのために帰って来たかったって。
裏切者のアタシにそんな権利なんてないって現実から目を逸らして……。
でも、今こそ本当に覚悟を決めなきゃいけない!
シャーレちゃんがここまで言ってくれたんだからちゃんと応えないと。
「シャーレちゃん、一緒に来て。 祖国に銃口を向けられても、シャーレちゃんとならきっと平気だから!」
「最初からそう言いなさいよ、ずっと待ってたんだから!」
コックピットハッチを開けてシャーレちゃんを迎え入れる。
直接顔を合わせるのは本当に久しぶりだな。
「ごめんね、2度と離さないから」
「次離したらその時こそ殺してあげるんだから」
抱擁と、唇が軽く触れるだけのキスを交わす。
深いのしちゃうとそのまま止まらなくなりそうだから帰るまでお預け。
「さて、部下の連中どうしようかしら。 こんな場面見られてタダで帰すわけにもいかないし」
「それは、確かに……」
始末するしかないのかな。
覚悟を決めたとはいえ、あまり良い気分にはなれないながらもトリガーに指をかけ……。
「待ってください、俺達も連れて行ってください!」
「我々シャーレット隊一同、隊長について行く所存です!」
「アンタ達、何を?」
「ようやくお2人が復縁されたんですよ、これ程喜ばしいことはありません!」
皆、そんな風に思ってくれてたんだ。
自分の視野が一体どれだけ狭かったのかを何度も思い知らされる。
「じゃあ、皆も一緒に来てもらっちゃおッカ☆」
「ほ、本気なのアリユ!?」
「本気本気、じゃあアリユちゃんに遅れないよう付いてきてネー☆」
「機体は全部アンタが破壊したから部下達は足で追いかけなきゃいけないことを忘れてないでしょうね!?」
アタシにはこんなにも沢山の味方がいる。
なら、きっとダイジョウブ☆
ラストと覚悟の違いが大きく出た回でした、いやガンギマリなラストが特殊なだけですが。
というわけで次回はようやく主人公が帰ってきます。




