女性を恋愛対象とする女性にしか動かせない機体
途中からこう玉座の間みたいな王様のいる部屋へと続く通路じゃないなとは思っていたけれど。
「ここよ」
コルネリア様に連れてこられたのは、格納庫だった。
そして王様もいた。
「よく来てくれた」
コルネリア様と同じ髪と瞳の色。
そしてこの美形っぷり、男が恋愛対象なら嫌いな人いないんじゃないのかといわんばかりのルックス、いるところにはいるんだな。
「先ほどは自己紹介をしていなかったな、余がエルトレオ・ドリューナル。 若輩ながらこのドリューナルの王を務めている」
「ラストです、理由があって下の名を持っていません」
どうせ後から下の名を名乗らないことを不思議に思われるだろうから先に言っておく。
もう一度同じこと説明するのが面倒で省略してしまった。
後でコルネリア様から聞いてください。
エルトレオ王も深く探るつもりはないのか「そうか」とだけ言ってさらりと流し。
「コルネリアから話は聞いたかな?」
「はい、ざっくりとですが」
そして格納庫に連れてこられたということは。
「もう察しはついているようね」
「紹介しよう、あれが君に乗ってもう機体。 リーリオだ」
「リーリオ……」
王家兄妹を意識したのか全体は銀色に頭部のカメラアイは赤のカラーリング。
装甲より機動力を重視したであろうゴツゴツしていないフォルム。
全高は20メートルくらいだろうか。
当然といえば当然だがこれまでわたしが乗ってきた人型機動兵器とは全然違うモノがそこにあった。
「早速だが一度乗ってみてほしい」
「今から動かすんですか?」
ここにはわたし達3人しかいない、動かすならもっとスタッフが必要では。
「動かしはしない、ただコックピットのシートに座ってくれるだけでいい」
「はあ……」
よくわからないままコルネリア様が操作してくれたリフトで上り、中に入る。
というかコックピット頭部なんだ。
シートに座るとコンソールパネルだと思われるディスプレイが点灯した。
自動なのか、凄いな。
「ようこそ、ラスト」
「しゃべった!?」
いきなり声をかけられてひっくり返りそうになり……シートに座っていたので実際にはひっくり返らなかった。
「もういいわよ、降りてきて!」
すぐにコルネリア様からの指示がきた。
言われた通り下に降りると二人とも妙にそわそわしていた。
「君の声はここまで聴こえていたが確認のために問おう、起動したかな?」
「はい、しかし凄いですね。 補助AIまで搭載されているなんて、いきなり声をかけられて驚きましたよ」
そんなわたしの返答を受けた二人は顔を見合わせた後ハイタッチを交わした。
「よくやったわ、褒美をあげる!」
更にそう言って抱き着いてきた。
「わわっ」
なんでこんなに喜ばれているのかさっぱりわからない、ただ乗って降りてきただけなのに。
しかしよくわからないけど女の子をハグする感触というのはいつ何度だって素晴らしい!
などと恍惚に浸っていたら王様に咳払いされた。
「もういいかね?」
もう終了か、残念……。
離れていくコルネリア様を名残惜しい感覚に見舞われたまま見送りつつ王様ことエルトレオ王に向き直る。
「合格だ、改めてようこそドリューナルへ。 我々は君を歓迎する!」