自覚なき恋心
今回はコルネリア姫視点でお送りします。
*コルネリア視点
「先輩との関係、ですか?」
「ええ、勿論ラストには問いただしたのだけれど貴女の話も訊いておきたくて」
ラストが少なくともわたくしに対して不誠実な対応をしないことはわかっている。
でも、気になるものは気になる、ドリューナルに来る前のラストのことは知らないのだから。
「と言われましても、ボクと先輩は本当にカラダだけの関係でお互い気持ちがあったわけじゃありませんから」
「そのカラダだけというのがよくわからないわ、子を産むためでも愛し合ってるわけでもないのだから」
お互いが合意の上でそういった関係を形成するというのは初耳だ、あっち側ではよくある話なのだろうか。
「ボクと先輩の場合はそれぞれ本命ができるまでの約束で、まさか2人揃って別世界で出会えるなんで当時は想像もできませんでしたけど」
ラストはわたくしと、タユカはリンナとそれぞれ出会った。
ラストの場合、ピンポイントで連れてこられたと表現した方が近いけれども。
わたくしのことを簡単に好きになり、それでいて実力者なんて別世界が多くあったとしても沢山いるものじゃないだろうから。
「お姫様は先輩と結婚するって聞きましたけど」
「ええ、そこはもう揺るがないわ。 救国の英雄になったラストと一国の姫、一応のつり合いはとれてるもの」
わたくし個人の気持ちとしても今更拒否感は無い、ラストを伴侶として迎えるのは決定事項だ。
「ただ……」
「何かあるんですか?」
「わたくしの好きとラストの好き、それが一緒なのかがわからないままでいるの」
王族として、恋愛とは一生縁がないと思っていた。
だから義務としてラストを迎え子を成す、それもきっとできる。
だけど、それだけではきっと駄目なのだ。
ラストはわたくしにも恋愛感情を持つことを望んでいる。
でも、自分の気持ちがよくわからない……。
「いやー、ボクのところに1人で来てこんな話してる時点でもう答え出てると思いますけどね」
「そうなの?」
「おっと、これ以上ボクの口から言うのも野暮なので後はお姫様自身で答えを見つけてください」
「え、ええ……わかったわ」
もう答えが出ている?
外からはもう見えているのにわたくし自身には見えないというのがなんとももどかしい……。
「それじゃあボクはリンナさんに会いに行くのでこれで」
「ええ、でもその前にもうひとついいかしら?」
「どうぞ」
「どうしてラストは本命にならなかったの?」
「それは簡単です、先輩はボリュームが物足りないので!」
「あら、あそこにいるのは……」
ラストとセルア親しげに談笑しているのを発見する。
自分でもよくわからないけれど、あの女はラストとの距離が近くて気に入らない。
リンナは城にいた頃もよく通信していたと言っていた。
ラストがお熱な妹よりも、姉の方が危険な感じがする。
危険、何が?
よくわからない感情の赴くまま、2人のいるところへ歩みを進める。
「あ、コルネリア様」
ラストが気づき、手を振ってくれる。
さっきのトゲトゲはどこへ行ったのか、それだけで温かい気持ちになれる。
と、気分が高揚して見逃しそうになったけど、今セルアが一瞬嫌な笑みを浮かべたような……。
「ねえラスト、さっきの話通り今夜は鍵を開けておいていいのよね?」
「待って待って、そんな話一切してなかったよね!?」
「そうだったかしら、でも私達と一晩を共にしたいんでしょ?」
「それはしたい!」
「ダメー!!!」
あれ、今の大声はわたくし……?
恐る恐るラストの方を向いてみると完全にフリーズしている。
やってしまった、感情的になって大声を出してしまうなんて……。
しかも何に突き動かされて叫んでしまったのか自分でもわからないままに……。
「これなら大丈夫そうね」
「何が、かしら?」
たったそれだけの言葉を紡ぐのにも苦労する、落ち着けわたくし。
「本来なら相手が相手だから恐れ多いことですが、ドリューナル姫には文句のひとつも言いたかったんですよ」
「どういう、こと?」
「ラストの友人として言わせてもらうなら、これまでのドリューナル姫の態度は気に入らないものでした」
そう、嫌われていたのね。
この女はラストと親しくていい感情を持てなかったからお互い様かもしれないけれど。
「でも、その様子なら大丈夫そうですね」
「え?」
セルアの表情が柔らかくなる。
なんかもう処理が追いつかない……。
「さっき叫んだ時の気持ちを大切にしてください、そうすれば近い内にちゃんと答えが出るでしょう」
そう言って、優雅に去ってしまった。
なんだったんだろう。
セルアの態度からして、わたくしはああやって叫ぶように誘導されたみたいだったけれど。
叫んだ時の気持ちを大切に、か。
嫌な女というのは、わたくしの思い込みだったのかもしれない。
一体何に対しての叫びだったのか、それさえ分かれば答えは目の前にあるような。
そんな気がした。




