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プリフォートティーゴ

「勝つ、勝って必ず本土へ帰ってやるぞ。 プリフォートティーゴシステム起動!」


 いきなり使ってきたか。


「なんなの、今までのドゥークタードとは動きが違うわ!?」

「あれが奥の手です、搭載されているのは限られた一部のタイプだけですが」

「なるほど、ラストさんが見せたかったのはコレですか」

「そういうコトー☆」


 プリフォートティーゴシステム。

 指揮官機やエース機等、一部のドゥークタードにのみ搭載を許されたオーバーブーストシステム。

 一時的に機体性能を大きく向上させる。

 この間だけはわたし達5機との性能差が埋まることになる。

 元々は向こうの所属だったわたしとアリユさんしか知らない連中の奥の手。


「5人がかりで叩けばいいのにラストがわざわざ1対1に仕向けたのはアレを見せるためということでいいのかしら?」

「そうです、不意打ちで使われた場合強力なバリアーで守られてるネヴンケブラはともかくディヴァースタイレンタとフラティーノは撃墜される可能性があったので」


 戦うのは使う側だったアリユさんでもよかったかもしれないけどやはり飛行できるリーリオで相手をする方が有利だろう。


「突撃してくるわ!」

「じゃあ距離をとりましょう」


 リーリオを飛翔させ、付かず離れずの距離を保ちながらエネルギーガンで牽制する。

 回避運動をしながらのお互いに当たらないエネルギーガンとアサルトライフルの撃ち合い、だけどこれでいい。

 ミサイルポッドからの攻撃は以前闘ったネブンケヴラのモノより速度も誘導性も劣る、逃げに徹すれば振り切れる。

 プリフォートティーゴ中の出力を使ってゴリ押しで跳び接近戦を挑んでも空中戦ならリーリオに分がある、そう簡単には捕らえられない。


「さっきから積極的に攻めてない気がするのだけれど、そんなに余裕がないの?」

「いいえ、攻める必要なんてありません。 マトモに相手をせず適度に逃げ回っていればこちらの勝ちですから」

「どういうことなのかしら?」

「アレは時限性なんですよ、だから時間切れまでのらりくらりと躱していればわたし達の勝ちです」


 これを知ったらユキヒコは「時間切れになる前に決着つけてやる!」とか言い出しかねないからそういう意味でも戦わせたくなかったし。


「逃げるだけで精一杯か、大人しく落ちろっ!」

「ですって、見事に騙されてるわ」

「それが狙いなんだからいいじゃないですか」


 わざわざ苦労する必要なんてない、楽に勝てるならその方がいい。


「逃げるなっ、もう時間が……」


 わざわざもう少しで終わることを自己申告してくれる。

 そして、ドゥークタードの動きが急激に遅くなった。


「そんな、ここまでだっていうのか……」


 ドゥークタードが足を止める、リミットがきたらしい。

 アサルトライフルやミサイルの装弾数だって把握してる、もう残ってないだろう。

 じゃあ、トドメを刺そうか。

 そのまま空中でボムバードバスターを構える。


「チャージ開始、発射まであと5秒」


 AIのカウントダウンが始まる。

 4、3、2、1、発射。

 膨大なエネルギーの奔流がドゥークタードを飲み込む直前、再起動した敵機が回避しリーリオに向かって一直線に突撃してくる。


「もらったぁ!」


 リーリオはボムバードバスターを撃った直後で硬直してる、このままではその言葉通り直撃を受けてしまう。

 そんな中冷静に告げる。


「セルア、もういいよ」

「ええ、その言葉を待ってたわ」


 ドゥークタードの持つハルバードがリーリオに届く直前、フラティーノのエネルギーライフルから放たれた一条の光が胴体のを貫く。

 その刃が届かないまま爆散し、破片が地上に降り注いだ。


「オイオイ1対1じゃなかったのかよ、ヒデー女だな」

「騙して悪いけど、わたしの二つ名ペテン師だからね」

「ウワァ……☆」

「セルアさんは最初からこうなることが分かってたみたいですね、通信もなかったというのに」

「ラストが考えそうなことだもの、打ち合わせなんてしなくたってこれくらい合わせられるわよ」


 よくわかってる、流石わたしの友人。

 あと先にだまし討ちしようとしたのは向こうだよ。


「ラストって結構卑怯者よね」

「ああやって隙を見せれば食いつくと思ったので、向こうとしても最後のチャンスだったでしょうし」


 確かに気を引きたい女性の目の前でやっていいことじゃなかったかもしれないけど。


「嫌いになりました?」

「古代戦争だということを加味すれば、手段を選んで死ぬよりは好印象といったところかしら」


 答えになってるような、なっていないような。

 わたしがもっと強ければカッコ良くキメる余裕もできるんだろうけど。

 おっと、リンナちゃんから通信だ。


「ラスト様、タユカさんの容態は安定したみたいです」

「ありがとう、リンナちゃん」


 これで今回の戦闘も終了かな。

 基地まで飛んできた流れ弾による被害はまだ不明だけど、少なくともパイロット組は全員生存で見えてる範囲の成果は上々といえる。

 その辺りはわたしの仕事じゃないから専門の人に任せるとして。

 目下の課題は、意識を取り戻した後でタユカをリンナちゃんと一緒にどう抱き込むかかな。

 いくら単純なタユカだって本当に色仕掛けだけでコロっと転がり込むことはないだろうし。


「今回の敗北で敵は更に慎重になるでしょう、今度は我々が攻める番かもしれませんね」

「よっしゃあ、その言葉を待ってたぜ!」

「待って待って、ちゃんと万全の体制を整えてからだからネ☆」


 次は攻め、か。

 この古代戦争はどうなったら終わるんだろう。

 それは多分、わたしみたいな最前線に立つ人間が考えることじゃないんだろうけど。

 コルネリア様と一緒に戦場へ立つことを考えたら、あの平和な戦争が恋しいと思わずにはいられなかった。

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