今更な決別宣言
「俺はぁ、アンダス家で、32回で、模擬戦なんだよぉ!?」
エリオッタのドゥークタードが崩れ落ちる、勝負はついた。
残念、これでわたしの33連勝。
四肢を全て失い仰向けに倒れるドゥークタードに対して、ダメ押しといわんばかりにグラーボセイバーで頭部を串刺しにする。
これでメインのカメラやセンサー類も死んで、外の様子もほぼわからなくなっただろう。
「なぜだ、なぜこうも簡単にやられる? 以前はここまでの差なんてなかったぞ!」
そりゃあドゥークタード同士ですら1回も勝ったことがないアンタが今のわたしに勝てるわけないでしょ。
ただ、ここまで圧勝できたのは実力差じゃなくてリーリオとドゥークタードの性能差によるものだ。
ついでにわたしは殺す気で戦ったのにまだエリオッタは生きている、コックピット直撃を回避し続けたのは間違いなくコイツの実力によるもの。
だけどそれをわざわざ教える必要は無い。
「まあいいさ、負けるのもそれはそれでアリだ」
なんだって、まさか最初からわたしを足止めすることが目的だった?
「今日は大人しく退散するよ、また会おう!」
ドゥークタードのコックピットブロックが射出されて彼方へと飛んで行く。
ヤツの言葉に少し動揺してる間に逃げられてしまった。
戦闘中は致命傷をしっかり避けていたことといい、生き残ることに関してなら一級品かもしれない。
「どうするの?」
「アイツ1人を深追いして余計に時間をかけることはしたくないので、今回は放っておきましょう」
ここまで圧勝できるなら次また出てきても問題にならないでしょ。
そう結論づけて、皆と合流するために転移ポイントへ移動を開始した。
「遅えぞ、宣言通りお前の分もオレ様がいただいちまったからお前の分は無しだ」
戻ってきたわたしを迎えたのはユキヒコのそんな言葉だった。
「ええ……、本当に4人で終わらせちゃったの?」
「1人だけ残ってるわよ、たった4機に敗北してしまった現実を受け入れられてない指揮官っぽいのが」
セルアの言った通り皆が撃破した残骸の奥にまだ立ってるドゥークタードが1機だけいた。
アレが今回の指揮官。
「あり得ない、50ものドゥークタードを投入してここまで一方的だと……」
あーうん、それはご愁傷様としか言いようがない。
でもレーゴ相手に10機くらい撃破されて撤退に追い込まれてるんだからそんなもんじゃないかな。
「こう言ってはなんですが、10年前の旧式機と一緒にしてもらいたくないものです。 レーゴと同じ基準で我々に勝てると思ったことこそがそもそもの間違いなんですよ」
「ディヴァースタイレンタの死角をカバーしつつあらゆる攻撃を全て弾くネヴンケブラがインチキ過ぎル、もし対戦してたらプレナシエードの火力じゃあ勝ち目なかったネ☆」
クレオとアリユさんの言うことももっともだ、外部スピーカーをオンにしてないから向こうの指揮官には聴こえてないけど。
「こ……このことを報告しなくては、次はもっと大きな戦力で……」
そうはさせないんだけどね。
飛行するリーリオで頭上を通過して指揮官の逃げる方向へ回り込む。
これで挟み撃ち、5対1で詰みだ。
「ぐっ、この……。 おい貴様、元は我々の国の人間なのだろう、今まで貴様が生活できていたのは我々が戦ってきたからなのだぞ!」
なんだろう、今更わたしを抱き込むつもりか。
酒池肉林ハーレムとかで釣らないと揺らがないぞ。
「にも関わらず敵対しおってからに、これまでの恩を忘れたというのか!」
「忘れた!!!」
「なん……だって……?」
「わたしの恋路を邪魔する奴は、わたしにシバかれて地獄に落ちろ!」
「何を言ってるんだ、意味がわからない……」
外部スピーカーをONにして言い返してやった。
あの指揮官の発言はアリユさんから聴いてた、現場の兵士を従わせる常套句らしい。
でもわたしはもうこうすると決めたんだ。
ついでに、ドリューナルに来てからの方がよっぽど贅沢な暮らしをさせて貰ってる。
だからその理論で言えば、ドリューナルの方がよっぽど恩がある。
そんな言葉、今更通用しない。
「ああ……やめろ、助けてくれ……」
ついに命乞いしだした。
わたしの推測が正しかったらこの人本土に帰ることができてもロクな結末が待ってないと思うから、ここで見逃しても別にいいんだけど。
軍にとって重要人物であるタユカを捨て駒にしようとしちゃったからね。
ただ、見逃した場合はこっちの情報がより詳しく渡ることになる。
それは避けたい。
「もう撃ってもいいかしら?」
「待ってセルア、わたしに任せて」
セルアに待ったをかけて相手の指揮官に話しかける。
「じゃあわたしと1対1で戦いましょう、もし貴方が勝ったら見逃してあげます」
「あの女オレ様みたいなこと言い出したぞ、何か悪いものでも食ったんじゃネェのか?」
なんてこと言うんだこの野郎。
「いえ、あんなことを言うんですからラストさんは何か企んでいるんでしょう。 ここは彼女に任せた方がよさそうです」
その通り、何か企んでるよ。
相手は指揮官機だ、だったらわたしとアリユさんしか知らないアレを搭載しているハズ。
今後のことを考えたらここで晒して情報を共有しておいた方がいい。
「よし、勝ったら見逃してくれるんだな。 やってやる、やってやるぞ!」
釣れた釣れた。
それじゃあ、奥の手を暴きにいきますか。
今話でロボット図鑑を除き、50話に到達しました。
これも皆様の応援のおかげです、これからもよろしくお願いします!
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