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ただの後輩です、そういうことにしてください

 その日は前線基地を正式な拠点としてから割とすぐにやってきた。


「転移反応を感知転移反応を感知、総員即座に戦闘態勢へ!」


 オペ子ちゃんの可愛い声に急かされてコルネリア様と格納庫に向かう。

 敵の基地を奪ってそのまま使ってるおかげで向こうから転移してくるのを感知できるのは助かる。

 自前で基地を用意してたらこんなに迅速な対応はできないだろう。

 助かるついでに、今日がアノの時期じゃなくて良かった。

 重なったら戦闘なんてとてもじゃないけどできないし。


「ネヴンケブラ、以下4名配置につきました」


 リーリオ、ネヴンケブラ、近接格闘戦装備のディヴァースタイレンタが前衛、プレナシエードが中衛、フラティーノが後衛で配置につく。

 反応を感知してから実際に転移してくるまでにタイムラグがあってよかった。

 急げばなんとか迎撃準備が間に合う。


「おいでなすったぜ」


 ユキヒコの言葉と同時に全員がそれぞれの武器を構える。

 リーリオは飛翔、有利な空中から攻撃を仕掛ける

 そして敵が転移してきた、けど……。


「どういうこと、敵機を1機しか確認できないわ……」

「しかもあのドゥークタードよく見たら非武装だネー☆」


 非武装で単機、ということは戦闘をしに来たわけじゃない?

 ドゥークタードは両手を上げる。


「こちらに戦闘の意思はありません、話し合いをしに来ました!」


 予想通り、何かの使者らしい。

 でも、その声は……。


「タユカ!?」

「その声先輩ですか、無事で良かったです!」


 まさかの、わたしが知ってる人物だった。



「どうして会談に参加するのがわたしとコルネリア様だけなんですか?」

「わたくしが今この基地にいる人間の中で一番身分が高いからだそうよ、ラストは護衛だけどあの娘のことも知ってるんでしょう?」

「はい、セッ……」

「セッ?」

「いえ、ただの先輩と後輩です……」


 あっぶな、バカ正直にセッ〇スフレンドって言っちゃうところだった……。

 タユカとの本当の関係はバレないようにしないと……。


「ラストの後輩って言ってたわね、そんな下っ端を使者として派遣するなんて何を考えているのかしら」

「わたしの知人を使って情で揺さぶろう、とか」

「絶対ないとは言い切れないけれど」


 それとも、この基地の地下にあったあの施設と何か関係があっての派遣なんだろうか?

 そんなことを考えながらしばらく待っているとタユカが元々どこの国所属かは不明だが、兵士2人に連れられて部屋にわたし達がいる会談に使う部屋へ入ってきた。

 兵士はそのまま部屋を出ていく、気配が残ってるところを見ると扉の向こう側で待機しているのか。


「先輩、会いたかったです!」

「ちょ、ちょっとタユカ!?」

「貴女なにしてるの、ラストから離れなさい!」


 再開した途端に抱き着いてきたタユカをなんとか引き離す。

 手加減してくれて助かる、本気だったら全身複雑骨折するところだった。

 気を取り直して着席を促す。


「タユカといったかしら、今回はどのような要件でしょう?」


 少しだけ怒気の孕んだ声色だ、後が怖い……。


「はい、この度は捕虜返還の使者として参りました」


 タユカから渡された書類を受け取る、ってなにこの内容!?


「この基地を制圧した時の捕虜ではなくラスト1人、これはどういうことでしょう?」

「ボクが指示を受けたのはラスト先輩だけです、他の捕虜に関してはまた後ほど改めると言われました」


 上の思惑はともかくタユカ自身が嘘を言ってないのは確実だ、腹芸ができるような女じゃない。

 間違いなくわたしを連れ帰るように言われたんだろう。

 ということは、わたしが裏切ったことはまだ本土にはバレてないということなんだろうか?


「悪いけれど条件は飲めないわ。 いいえ、どんな条件であってもラストは渡せないわ」

「どういうことですか?」

「ラストは捕虜ではないもの。 自分の意思でこちら側、いいえわたくしに付いて来ることを決めたのだから」


 直球、その通りだけど直球過ぎる!

 やっぱりコルネリア様に外交させちゃ駄目だ、誰か交代して!


「そんな、先輩……」


 ほらタユカだってこんなこと言われたら色々困るよ。


「おめでとうございます!」


 はい?


「ようやく先輩に意中の人が見つかったんですね、よく見たら本当に先輩の好みドンピシャな女の子じゃないですか!」

「う、うん……」


 流石タユカ、わたしの好みをよくわかってる。

 そして、わたしもタユカの好みをよくわかってる。


「どなたか存じませんが、先輩のことをこれからよろしくお願いします!」

「ええ。任せなさい!」


 直球同志だからと言うべきなんだろうか、思ったより平和的に片がついた。

 なにこれ。


「先輩に心に決めた人ができたなら仕方ないです、大人しく諦めて帰りますね」


 わたしのことをよく知ってるだけあってあっさり引き下がるね。

 タユカは荷物をまとめるとそのまま部屋を出て行こうとする。

 逆にタユカをこっち側に引き込もうとわたしが呼び止めようとしたその時。


「転移反応を感知転移反応を感知、待機を解除して戦闘態勢に移行してください!」


 本日2回目の転移?

 タユカが言ってた残りの捕虜返還の交渉に来たんだろうか。

 それともタユカのお迎え?

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