ラスコル過激派会議 Ⅱ
*リンナ視点
「おまたせしました、リンナ殿」
「お疲れ様です、ウヌ様」
「いやいや疲れたなどと、これも全て姫君とラスト殿のため。 同志リンナ殿もそうでしょう?」
それは間違っていない、間違っていないけど私だけでなくウヌ様まで国や陛下のためでなくなってしまっていいのだろうか。
陛下の補佐官なのに……。
「それで、リンナ殿も前線基地に向かわれるのですね?」
「はい、ラスト様お1人だけでなく姫様も同行することに決まりましたので」
そこでウヌ様が頭を抱える。
私もそうしたくなる気持ちは理解できた。
「姫君を危険な場所に立たせることはできないと申し上げたのですが……」
「『わたくしがどこにいようと我が国の戦力はリーリオだけ、リーリオが撃破されれば王族の生死に関わらずドリューナルの地は敵に蹂躙されて終わりなのよ』と返されたと伺ってます」
「ついでに『わたくしが行けばリーリオはセカンドステージを発動できるのだから、全力を出さなかったせいで負けたなんてお話にならないでしょう?』とも言われました……」
この件に関して、所詮1メイドでしかない私に口を挟むことなどできはしない。
ただ姫様とラスト様について行くだけだ。
「ただ、それだけでなく国民感情もあるのです」
「と、いうと?」
「陛下が倒れられたことで今我が国の国民感情は徹底抗戦ムードです、なので攻撃的な舵取りをしないと国民の反発受けることにもなりかねないので。 姫君の選択は国民からは支持されるでしょう」
その感情は私にもわかる。
故郷を焼かれた身としては自分自身で復讐したいくらいだ。
機動兵器を操縦できないことを今ほど悔やんだことはない。
私がラスト様と一緒にリーリオへ搭乗する?
いいえ、私はラスト様に恋愛感情を抱いているわけではないからセカンドステージ発動は不可能なので本末転倒だ。
「予算もこれまで以上に軍事へ割り振らなければならないでしょう、ヅガル殿からの要請もありますし」
私自身が直接戦うならともかく、政治視点から軍事へのアプローチの話は何もわからないのでウヌ様に任せるしかない。
「それに、もうひとつ大きな問題が……」
「それは一体?」
「率直に言うと国家存亡の危機です」
「そんなっ!?」
一体何が……。
「陛下の意識が戻らない今、跡取り問題が浮上してきています。 これまでは陛下がまだお若い身だったので見過ごされていましたが……」
「それなら問題ありませんよ」
「リンナ殿、なにを?」
ウヌ様の耳にはまだ届いていないみたい。
「ラスト様の故郷では同性同士で子供を授かることが可能だそうですので、その技術ノウハウを戦後賠償としていただいてゆくのだとラスト様が仰ってました」
「その話、初耳なのですが……」
ああ、やっぱり。
「しかし懸念材料が1つ減ったのは良いことだと思いましょう、その情報があれば国民だけでなく政治に関わる者も少しは落ち着いてくれるでしょうし」
「姫様とラスト様の仲が引き裂かれることなどあってはなりませんから」
「その通りです、同志」
それともうひとつ、気になることがある。
「ウヌ様、どうして今世界各国の戦力が敵から奪った前線基地に集結しているのでしょうか?」
これから私も姫様とラスト様について行く身なので知っておきたい。
「それは待ち伏せのためです」
「待ち伏せ?」
「こちら側の拠点を失ったことで敵は攻勢に出ようと考えた場合、世界を跨いで転移するしかなくなりました。 超長距離攻撃の様な手段が行えなくなったのです」
「はあ……」
超長距離攻撃というのがいまいちピンとこないけど、敵は攻め込むのに苦労するようになったってことでいいのかな。
「この世界と敵の世界を繋いでいる場所は前線基地のすぐそばなので、どちらにせよ監視は必要です。」
「そうですね」
「ならば転移してきたことろをそのまま叩いてしまえばいい、というのが各国首脳陣の結論になりました」
「それで、待ち伏せですか」
「ただしこれは敵も同じ条件なので、こちら側から攻勢に出るのも難しくなります。 転移したところを狙われて袋叩きに遭うでしょう」
どちらも攻めづらくなって一種の膠着状態になったわけですね。
「双方が簡単には動けなくなりました、ですからこの時間を使ってこちらから攻める準備をするのです」
「攻めるのですか?」
「そうしなければ国民は納得しないでしょう、もし膠着状態のまま停戦になれば暴動が起こるかもしれません……」
「それは……」
私も復讐したい側だからわかってしまう、このまま停戦になっても一切喜べはしないだろう。
徹底的にやってほしいと、感情的に願わずにはいられない。
それはそれとして。
「私からも、ウヌ様に報告があります」
「なんでしょう?」
「前線基地では、姫様とラスト様が同室です」
「なんですって!?」
今のウヌ様にとって、これ以上の朗報はないだろう。
「素晴らしいことです、これでお2人の仲もより深まることでしょう!」
「はい、そのお姿を身近で拝見できることは私にとって至上の喜びです!」
「公務で城を離れられない身として、同志リンナ殿にお2人のことを託します!」
「同志ウヌ様、お2人のことは私にお任せください!」
「フフフフフフフフフ……」
「フフフフフフフフフ……」




