前線基地攻略戦
時系列がリーリオを転送したところに戻ります。
また今回から明確な人死に描写あるのでご注意ください。
リーリオのパンチによって破壊された壁から部屋の外に出てそのまま左腕づたいに昇り、コルネリア様が中から開けてくれたコックピットに乗り込む。
「ちゃんと帰ってきたわね」
「コルネリア様のいる所が、今のわたしが帰る場所ですよ」
「もし帰って来なかったら一緒に始末してるところだったわ。 ありがとうラスト、わたくしを選んでくれて」
そう、わたしが選んだのはこの世界でもドリューナルという国でもなく、コルネリア様だ。
「ってあれ、ボムバードバスターシールドと片翼輝光が両方接続されてる?」
「これは古代戦争だもの、セカンドウェポンルールなんて存在しないわ」
「……それもそうですね」
さて、あまりのんびりとしてもいられない。
これは奇襲なんだから素早く動かないと。
ボムバードバスターの銃口をさっきまでいた部屋に向ける。
もう名前も忘れてしまった基地司令は何が起こったのかもわからないまま、床にへたり込んでいた。
「駄目ですよ、これはまだ兵士であるわたしの役目です」
「…………」
トリガーにかけられていたコルネリア様の手をそっと外す。
例え恨みがあったとしてもお姫様なんて立場の人に、こんなこと直接やらせるわけにはいかない。
ボムバードバスターのトリガーを引く。
放たれたエネルギーの奔流に飲み込まれて、基地司令は骨も残らず消しとんだ。
「退職届にしては、ド派手になっちゃいましたね」
「これでまた1つ、トリックスターとしての逸話が増えたようですね。 味方だと思っていたラストがまさか敵だなんて思わなかったでしょう」
「なんてこと言うの、ラストが平然と裏切ったわけがないでしょうこのダメ精……」
「いいんです、AIの言うことも最もですよ。 わたしは愛のために祖国を裏切ったどうしようもない女です」
コルネリア様の言葉を遮って言う、本当のことだから取り繕っていい事ではない。
それにのんびりトークをしている時間の余裕も無い。
「来た!」
基地に向かって突撃し、見張りとして配置についていたドゥークタードと交戦を始めたネヴンケブラとプレナシエードを確認。
フラティーノは援護のために後方で狙撃配置についてるんだろう。
作戦は至極単純だ。
わたしがリーリオを転送したのを合図に、見張りをしている偵察型ドゥークタードのレーダー範囲外ギリギリに待機していた皆が一斉攻撃を仕掛ける。
ドゥークタードのカタログスペックの情報はわたしとアリユさんから伝えた。
ついでにこの場で一番偉い基地司令はもう跡形もない、指揮系統はしばらく滅茶苦茶なハズだ。
問題は1点、皆がわたしを信じてくれるかどうか……。
だったんだけど上手くいった。
「ありがとう……」
その呟きと同時に基地の3方向を囲む湖の中から何かが飛び出し基地に着弾、爆発する。
「えっ、なに!?」
「オレ様だっ!」
今の攻撃ユキヒコなの?
っていうか……。
「なんで会話できてるの?」
「ヅガルが各国の機体と通信を可能にしたと言っていたわ、これからは今までみたいに外部スピーカーで会話するわけにもいかないからですって」
「この短期間で実現しちゃうなんておっちゃん凄いな、ていうかなんで水中?」
「ドゥークタードってーのが水中戦に向いてないって話をしたのはお前らだろうが」
うん、確かにした。
「だからディヴァースタイレンタを水中戦仕様にしてきたんだよ、有利な所から一方的ってのは気に入らネェがな」
「ユキヒコ」
「わーってるよクレオ、これは古代戦争なんだから気に入らないなんて理由で足並みを乱したりなんてしねーよ」
思ってた以上に協調性あるなユキヒコ。
セルア、アリユさん、クレオがドゥークタードと交戦。
ユキヒコが水中から基地施設への攻撃
だったらわたしのやることは!
「格納庫に向かいます」
「どうして?」
「格納庫を抑えてしまえば例えパイロットがいても出撃できませんから、皆の負担が減ります」
「そういうことなのね」
格納庫に到着するというタイミングでドゥークタードが一機、緊急事態だからか天井を突き破って外に出てきた。
リーリオの存在に気が付き銃を構えようとしてるけどこっちの方が速い。
「遅い!」
勢いを殺さず突撃し突き出したグラーボセイバーでそのまま胴体を串刺しにした。
「あっ」
「?」
しまった、ドゥークタードのコックピットはこっちの世界と違って胸部にあるんだった。
ということは今頃パイロットは……。
もう既に殺しちゃってるんだから今更といえば今更。
こっち側に就いた以上、同胞だから殺せないでは話にならない。
気を取り直そう。
格納庫上空から天井越しにエネルギーガンを連射する。
これで下にいる人が逃げ惑えばこれ以上の増援はないだろう。
「待って、無傷のドゥークタードをサンプルとして何機か回収したいわ。 別のやり方で制圧してくれないかしら」
「難しい注文ですが、やってみましょう」
さっき出てきたドゥークタードが空けた天井の穴から中に入り足元に向かってエネルギーガンで威嚇射撃をする。
これで戦意喪失してくれたらいいんだけど。
「こちらセルア、目標の全沈黙を確認。 攻撃が一切通用しないネヴンケブラとどこから攻撃が飛んでくるかわからないプレナシエードに浮足立っていたから狙い易かったわ、被害は0よ」
「ディヴァースタイレンタの対陸弾が尽きた、後は頼むぜ」
「この基地は我々が使うモノになりますから破壊し過ぎも良くないでしょう、そこで周囲を警戒しつつ待機していてください」
「おい、なんでさっきからクレオがオレ様に指図してるんだ?」
「いいんじゃないかなー、クレオ君にアタシ達のリーダーっぽいポジションしてもらっても☆」
他のところは戦闘終了したみたいだ。
それをダシに格納庫内に向けて降伏勧告を行う、これ以上の抵抗は無駄だと。
20メートル級の起動兵器に銃口を向けられながら降伏を迫られて拒否できる人なんて1人もいなかった。
「格納庫も制圧完了、待機してる歩兵に連絡を!」
歩兵がやってきたら、後のことは任せて大丈夫だろう。
こうして連合軍の初戦はわたし達の勝利で終わりを告げた。




