追放? そんなワケはない
基地の見張りに保護され中へ入れたことで第1段階は成功。
わたしは顔に出やすいけど今は作戦通りに事が推移しているニヤつきではなく「故郷と繋がりのある場所」まで来れて喜んでいるように見えるだろう。
ということで行方不明者扱いだったわたしは手厚く歓迎されお風呂に入り、温かい食事を提供され1人用の部屋で1日休むことになった。
事情聴取はそれからだそうだ。
そして、その時間がやってきた。
「ラスト君で合っているね?」
「はい、そうです……」
顔を伏せる、表情を見られたくないからだけど相手にはまだわたしが立ち直っていないよう錯覚されることも狙っている。
不信に思われてはいけない。
「我輩がこの基地司令のアンディ・ユースである、よく帰ってきてくれた!」
「あ、はい……」
基地司令の喜び様がわたしの予想を越えていて素で面食らってしまう。
個人としては良い人なのか、それとも裏があるのか。
「それでは事情を訊かせてもらってもいいかね?」
「はい……」
ポツポツと語り出す。
「わたしは普段通りに寝て、目が覚めたらこの世界に来ていました」
書記担当の人が記録を始める。
「この世界の人達は暖かくて、別の世界から来て右も左もわからないわたしにも優しくしてくれました」
でも、と続ける。
「あの日ドゥークタードが現れて、わたしもこっち側の人間であることを知られてしまいました」
「それで迫害されて命からがら逃げだしなんとか基地まで辿り着いたというわけだね、さぞ辛かっただろう……」
そこまで言ってないんだけど訂正する必要もないので黙っておく、後ぼかしてるだけでわたしは嘘をついてない。
「話を聴かせてくれてありがとう、君もまだ調子が良くないようだし今日はこれくらいにしておこうか」
「いえ……、ひとつだけ質問があります」
アリユさんから大体の話は聴いている、だけどこっち側からの意見も確認しておきたい。
「なぜ別の世界に攻撃を仕掛けているんですか、我々は隣国からの侵攻を防衛するために戦っていたのではないのですか?」
「そうか、君はまだ候補生だったね。 だったら知らないのも無理はない」
「どういう、ことですか……?」
「本来なら知ることになるのは卒業して現場に出てからなんだがね、我々の敵は隣国などではなく最初から異世界なのだよ」
アリユさんの間違いであってほしかった、これまでも本当に他の異世界を侵略していたなんて……。
「我々の世界の天然資源が枯渇してしまった、そして代替手段を見つけられなかった我々にはもう略奪する以外に生き残る道はなかった」
「そんな……」
「我輩も最初に知った時はショックだった、だが国民を守る手段がそれしかないからと受け入れた」
「いつか慣れる、ということですか?」
「そうだね、我輩もこの基地にいる部下達も知った時にはもう後戻りできなくなりその内に慣れていく。 そういうものだ……」
悪循環だ、例え裏切り者と言われようとアリユさんはこれを止めたかったんだな。
「そこでだ、ラスト君」
「なんでしょう?」
「もし君が君を迫害した者達へ復讐を望むのならこの基地への配属を我輩が上に掛け合ってあげよう」
「それは……」
「返事はすぐじゃなくてもいい、しばらくはゆっくりしていなさい」
いや、返事なんてここに来た時点でもう決まっている。
「ユース司令」
「なんだね?」
「この世界の人達はどうなるんですか?」
「この基地への配属を希望しないのなら、君に話すことはできない」
「そう、ですか……」
言えないということはロクでもないことになるんだろう。
コルネリア様も、皆も。
「なら、容赦なく叩き潰せます」
そう言ってわたしはリーリオをこの場所へ「転送」した。




