向こう側の話
今話から2章「古代戦争編」開始です、1章よりハードな展開もありますのでご了承ください。
*???視点
「定時報告、異常なし。 人っ子ひとり見当たりません」
「OKだ、交代の時間まで引き続き周囲の警戒に当たれ」
「了解」
本部との通信を切る、しかし……。
「暇だなぁ……」
思わず本音が口から出る、本部に聴かれていたら怒られそうだが暇なものは暇だった。
まあ、厳戒態勢ではない時の見張りなんてそんなものか。
「いつまでも暇とは限らんぞ、この前の攻撃失敗はお前も知っているだろう」
本部ではなく同じく見張りをしている僚機からの通信がきた、話相手になってくれるらしい。
向こうもああ言いながら黙って見張っていることに嫌気がさしているんだろう。
「あれってマジなのか? ドゥークタードを20機も投入したのにたった1機相手に半分やられて撤退したって話じゃないか」
はっきり言って信じられない、一体どこまでが本当なのか。
「なんでも途中でもう1機援軍が来たらしいぞ、しかも空を飛んでいたそうだ」
「なんだそれ!?」
それが本当なら俺達は今回トンデモない技術力を持った世界に侵攻してしまったことになる、そんなのワラワラ出てきたら命がいくつあっても足りないぞ。
「司令は今回の侵攻楽に終わるって言ってなかったっけ?」
「裏切り者に偽情報を掴ませたから敵の迎撃準備が整う前に攻め込めるとは言っていたな」
「ああ、あの『アイドル』ね」
「だが結果はお前も知ってる通りだ、侵攻情報が偽物だってバレてたんなら迎撃が2機だけというのはよくわからんが」
お前らごときこの程度の戦力で十分だっていうメッセージだろうか。
だったらこんなところで見張りをしてる俺は完全にハズレを引いたってことになる……。
「実戦仕様のドゥークタードを初手で10機も失う大失態をして司令はどうするつもりなんだろうな」
「あれだけ自信満々で大見得きったのに出鼻をくじかれたんだ、本土もカンカンだろうさ」
「ドゥークタードを補充されるまでは次の作戦どころじゃないだろうしな」
「補充だってそう簡単にさせてくれるか怪しいもんだぜ」
「うへぇ、こっちまでは飛び火してほしくないもんだ」
あの司令別に性格は悪くないけど本土からの返答次第では発狂して滅茶苦茶なことしかねないからな。
これまでも侵攻が上手くいかなかった司令官が処分が下される前に無茶苦茶な指揮を執ったって話あるらしいし。
「本土に帰りてぇ……」
「申請してみるか? まず通らんだろうが」
「だよなぁ……」
敵さんがロクに反撃してこない世界なら偵察型ドゥークタードで基地周辺の見張り任務なんて楽な仕事だと思ってたのに。
まさかこんなことになるなんて……。
自分の足を銃で撃ったら本土に帰れたりするだろうか、なんて考えた時だった。
「なんだ、レーダーに生体反応?」
「どうした?」
「生身の人間1人をレーダーが捕らえた」
「1人、どうしてこんなところに?」
そんなこと俺に言われてもわかるわけがない。
とりあえず確認しないと。
「望遠で捕らえた、ボロ切れ纏った女が1人だ」
「なんだそりゃ、ここがどこか知らないで来たのか」
「先日の攻撃で潰した集落の人間かもな」
「あーあ、可哀相に。 現地民がここに来たからには始末しないとな」
仕事上はそうなんだが、その前に。
「女だっていうなら始末する前に楽しませてもらってもいんじゃないか、こちとらこんな生活続きだからガス抜きしたいんだよ」
「やめとけやめとけ、後でバレたら面倒なことになるぞ」
「お前が黙っててくれればバレねぇよ……、ってなんだ?」
生体反応のデータが一致、行方不明者?
「行方不明者だって!?」
「どうした?」
「機械が壊れてなけりゃあの女はウチの人間だ、行方不明者だってよ!」
「そんなことあるのか!?」
名前はラスト、パイロット候補生ってことは俺達の後輩か。
「保護しに行ってくる!」
「おい、わかってるだろうが……」
「バカ野郎、自分の国の人間相手にそんなことするわけないだろ!」
「ならいい、じゃあ俺は上に報告してくる」
「ああ、頼む」
なんで行方不明者がこんなことろにいるのか。
いや、こんなところにいるから本土じゃ行方不明者扱いってことなんだろうが。
自分の国の人間、しかも後輩を保護したんだ。
司令は勿論、本土も喜ぶだろう。
そんなことを考えながら彼女を収容し、基地に帰還した。
ネタバレ:追放じゃないヨ☆




