片翼輝光リーリオ
開幕直後即エネルギーガンを構えて発砲する。
狙いは本体……ではなくその左斜め後ろ。
その何もないハズの空間にエネルギーガンが着弾し、爆発した。
「なんですってっ!?」
ビンゴ!
だが手ごたえを感じてる時間などない、即座に機体を前に進める。
その直後、元いた場所に上から弾丸が撃ち込まれた。
やっぱりだ、なら次は左から来る。
これは避けない、シールドで受け止める。
アリユ・ランフィール、元はわたしと同じ世界出身のエースパイロット。
専用カスタムドゥークタードに乗っていた時と戦法を変えていない、それは迷彩によって見えない有線ビットによるオールレンジ攻撃。
ならそれは、わたしにとって手の内がわかってるということだ。
アリユさんの戦いは教材としても個人的な検証としてもそれこそ何度も見てきた。
例え見えなくても動きのパターンはわかる、だから1基目を射出された瞬間に潰せた。
手の内を知っている、これがわたしのアドバンテージ!
わたしの知るパターンなら最後の4基目が後ろに回り込んでる。
機体を上昇させて回避、そしてそれだけじゃない。
背後のビットから放たれた弾丸はそのままの軌道で飛んでいく。
わたしの対面にいる、プレナシエード本体に向かって。
「得意の機動力で派手に避けなかったのはこれが狙い!?」
そう、飛んできた弾丸に対して防御なり回避なりで対応しなければならない。
短くても、その時間が欲しかった!
プレナシエードは回避を選択したがこの隙は逃さない。
一気に突撃、有線ビットが戻って来る前に接近戦に持ち込む。
グラーボセイバーを振るいプレナシエードもソードで受け止める。
ちゃんとした打ち合いというのはもしかしたらこっちに来て初めてかもしれない、地力の差でわたしが不利だとしてもオールレンジ攻撃に翻弄されるよりかはマシなハズだ。
けど間に合わなかった、結局一太刀も浴びせることができないままビットが戻ってプレナシエードに再装着されてしまった。
それでもこの距離なら自身を巻き込みかねないから再射出は無理だろう、このまま接近戦を続行する!
「アタシの戦い方をここまで見切ったのは見事だけど、これは知らないよね♪」
「えっ?」
マズイ、例えハッタリでもそんなことを言われたら一歩引いてしまう。
結論から言えばハッタリではなくビットがプレナシエード本体に装着されたままリーリオに向かって火を噴いた。
何それわたしそんなの知らない、ドゥークタードにはなくてプレナシエードにはある新機能か。
及び腰になっていたのが逆に功を奏し発射された弾丸はシールドに着弾する。
それでもボムバードバスターシールド程の堅牢さはないからそう何発も防げない、結局離脱する前に左腕丸ごと持って行かれてしまった。
ここまでか……。
一人の力であのアリユさんにどこまで届くか試してみたかったけど、個人のワガママはここで終わりだ。
「セカンドウェポン!」
宣言する、ここからは戦士の矜持を捨ててただ勝ちにいく。
「全く、戦いに身を置く人間にも困ったものね」
コルネリア様の乗る片翼輝光が飛んできた。
ごめんなさい、こんなことするなんてわたしもユキヒコに影響を受けているんだろうか。
1回のテストもしてないぶっつけ本番の装着。
でも大丈夫、成功率100%と言い切るコルネリア様の言葉が何の根拠もないのに信じられ る。
その通りに、なんの問題もなく装着は成功した。
安心したところにコルネリア様が現れる。
「あ、こっちのコックピットに入ってくるんですね」
「そのようね、それじゃあ反撃開始といきましょう」
そう言われたもののこの片翼輝光がどいういモノなのかわたしは知らない。
コルネリア様ハそんな若干困惑するわたしを無視して……。
「目覚めてリーリオ。 ここにはラストと、わたくしと、AIがいる!」
「キマシ……ツガイの搭乗と片翼輝光の接続を確認、セカンドステージへ移行します」
まって、コルネリア様とAIの二人で話を進めないで。
っていうかセカンドステージ、そんなのあるの!?
チェックしてみるとリーリオの、正確にはリーリオの背に装着された片翼輝光から光の羽が展開されていた。
それはいいんだけど……。
「どうして右側だけ、これ姿勢制御大変じゃん!?」
「いいからいくわよ、装着完了!」
そうだ、それ言わなきゃいけなかったの状況についていけなくて忘れてた。
「さあ、そのまま突撃なさい!」
「でも姿勢制御が……」
「そんなことしなくてもいいからそのまま直進よ!」
「アイ、マム!」
えーい、ままよ!
言われた通り姿勢制御しないまま突撃する、すると当然のように片側からだけエネルギーを放出してるリーリオが回転……しない?
いや機体は回転してるのにコックピットは回ってない、Gをシャットアウトするのといいどうなってるんだろう。
しかも機体が回転することで放出してる光の羽がリーリオの全身を覆っている、これはまさか……。
「このおっ!」
プレナシエードはビットからの射撃を慣行するものの纏っている光の羽が全て弾く、これならいける!
「いっけええええええええ!」
「スピラーロスパイラル!」
あ、そういう名前なんだ。
リーリオがプレナシエードを突き抜ける。
「これが、片翼輝光リーリオよ!」
凄い、これがリーリオの本当のチカラ……。
「やった!?」
「いいえ、手ごたえが浅かったので多分まだ終わってません」
確認する、やっぱりプレナシエードは健在だ。
でもシールドごと左腕及びすぐそばに接続されていたビットを2基破壊した、損傷率はこれでほぼイーブン。
ついでにビットは残り1基、いける。
「凄いね、自画自賛で悪いんだけどアタシここまで追い詰めるなんて。 でも世界のアイドルアリユちゃんの本領発揮はここからだ☆」
「なに、それ?」
「アリユさん、元々ああいう人なんです……」
二つ名も「アイドル」だったし。
あれで結構女の子にモテるんだよなぁ。
だからわたしはアリユさんが好きという意味ではなくアリユさんのようにモテたいって意味で憧れだった。
あのノリも変わってないのか、わたしも他人のことは言えないけど。
いやいやあのノリに引きずられちゃいけない、間違いなく向こうもセカンドウェポンが来る。
「そこまで、ドリューナルから緊急連絡です。 今すぐ中止してください!」
審判のそんな声が響く。
緊急って、一体なにが……。
次回、1章最終回!




