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歪み

 胃が痛い。

 とまでは言わなけどかなり気分が重い……。

 戦場に向かう輸送機の中でわたしはもう負けた時の言い訳を考えている。

 コルネリア様が期待しておけと言っていたのでそれにすがりたい気持ちはある、でも本当に勝利の鍵なんてあるんだろうか。


「ラスト」

「はい」

「ヅガルからボムバードバスターシールドの修理が間に合わなかったのは聴いているわね」

「はい……」


 それが気落ちしている最大の理由だ、ボムバードバスターの威力ならどうにか工夫して直撃させればまだ希望はあったかもしれない。


「だから片翼輝光を持ってきたわ、お兄……じゃなくて国王陛下からの承認もちゃんと降りているから安心して」

「片翼輝光って!?」


 それは逆に安心できない。

 あれにもリーリオ機関が搭載されている、だから搭乗できる人は限られているわけで。


「誰が乗るんですか?」

「勿論わたくしよ、他に誰がいるというの?」

「他にいないから問題なんです!」


 10年前のことを知ってしまった今、わたし一人ならともかくコルネリア様も一緒というのは承服できない。


「どうして、セカンドウェポンの装着なんてこれまで何度もやってきたじゃない!」

「わたし一人ならいいんです、もし失敗しても死ぬのはわたしだけなんですから」


 この戦争には死の危険が無いと思っていた、だからわたしも諦観から来るものではない本当の幸せを追いかけようと思った。

 でもエルトレオ王の話で絶対死なないなんてことはないのだと思い知らされた、だったら万が一があった時いなくなるのはわたしだけでいい。


「わたしは兵士です、いつかどこかの戦場で死ぬことが決まってる人間。 コルネリア様とは命の価値がオフゥ!?」


 わけがわからないまま力が入らず倒れこむ、ついでにお腹痛いんだけど何があったの!?


「女の顔を傷つける趣味は無いからボディにいかせてもらったわ」

なにそれ、コルネリア様に殴られたの今?

「それともラストがわたくしの所有物だという証のためなら顔を傷つけるのもアリかしら」


 そんな危ないことを嗜虐的な表情で顎クイしながら言わないでください、新しい扉開きそう。

あとリンナちゃん目をキラキラさせないで。


「ラストはわたくしの所有物なのよ、なのにわたくしの許可なく勝手に死んでもいいなんて思っているの?」


 いやコルネリア様の所有物だなんて初耳なんですけど、でも悪くないと思っている自分がいるのも確かで……。


「冗談はこれくらいにしておきましょうか、ラストが求めるのなら応えてあげてもいいのだけれど」


 冗談だったんだ、アリかもって思っちゃったよ危ない。


「貴女はわたくしが言ったことをちゃんと覚えているの? 結婚したらドリューナルを名乗ることになると!」

「それは、覚えています」

「それなのにわからないの、そうなったらラストも王族の一員になる。 わたくしとラストの命の価値は一緒になるということよ」

「あ……」


 目の前のタイプ直撃美少女に夢中でそんなこと微塵も全然考えていなかった。


「その顔を見るに本当にそこまでは考えていなかったみたいね、下っ端意識も行き過ぎれば良くないわ」


 そうか、わたしはもういつかどこかの戦場で死ぬだけの人間じゃなくなっていたのか。

新しい王族という生き方もそれはそれで不安だけども、右も左もわからないし。


「話を戻すわ、ラストが一人では勝てないというのならわたくしも一緒に戦う。 そうすれば勝ち目があると言ったのは貴女よ」

「……そうですね」


 短い時間で起き上がれるようになった、コルネリア様が特に鍛えているわけでもなく威力が低かったのが救いか。


「情けない話もう負けた後の言い訳とか考えていたんですけど目が覚めました。 勝ちに行きましょう、二人で」

「ようやく前向きになってくれたわね」


 はい、ガラにもなく弱気になっておりました。


「それにね、ここで片翼輝光の装着を成功させて勝てば10年前のことを払拭できるの。 わたくし達だけではなく国民に対しても」

「それは必ず成功させないといけませんね」

「わたくしとラストとAIなら成功率は100%になるわ、後は勝てばいいだけ」


 あまりにも簡単に言ってくれちゃうけどなぜだろうか、本当に勝てる気がしてきた。

一緒に戦う相手がいるというのは、こんなにも勇気が貰えるのか。


「これよりドリューナル対オーベルロードの戦いを執り行う、両者指定位置へ!」


 流石に4度目ともなると慣れたものでお互い定位置で対峙する。

 相手の機体は映像でも確認したけどこうして直で見るとどことなくドゥークタードに似ている気がする。


「それでは両名とも名乗りを」

「ラスト、乗機の名はリーリオ」

「アリユ・ランフィール、乗機の名はプレナシエード」


 互いに名乗り合う。

 やっぱり声もわたしの知るアリユさんのものだ、有名人だったから声を聴く機会なんていくらでもあったし。

 失敗するなよわたし、一手ミスったらセカンドウェポンを宣言する間もなく終わりだ。

 震える身体に活を入れる、勝ってコルネリア様と一緒に帰るんだ。


「それではノーワデイズウォー、スタート!」

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