突破口
決戦前日、最早恒例となった感じでコルネリア様と共に過ごしている。
しかし、今のわたしには「ついに明日か……」と追い詰められている感じが強い。
その理由は……。
「ラストの髪も少しづつ伸びてきたわね」
コルネリア様のそんな言葉で現実に引き戻される、イカンイカン目の前の相手に集中しなければ。
「そうなんですよ、そろそろリーリオに乗る時は縛らないといけないかもしれません」
わたしの髪は肩に乗るくらいの長さまできた。
ヘルメット被る時邪魔になりつつあるんだけどそもそもどれだけ速度を出してもコックピット内ではGを一切感じないので被ることそのものが疑問ではある。
「髪の手入れする時、リンナちゃんが凄く楽しそうなんです」
リンナちゃんはラスコル過激派なのでわたしがコルネリア様好みの恰好をする時はとても嬉しそうだ。
そもそも髪を伸ばすっていう提案もコルネリア様からのものだし。
「そう、あの子も楽しそうに仕事ができてるようで何よりだわ」
「で、」と続ける。
「貴女はなぜそんなに元気がないのかしら、わたくしが目の前にいながら」
「!?」
「気づかれてないとでも思っていたの、ラストはわかりやすいと何度も言っているのに」
うーん、直情的な自分の性格が恨めしい……。
「話しなさい」
有無を言わせないその圧の強さに屈するしかなかった、そもそも逆らえる相手でもないけど。
「ラストと同じ世界から来た人?」
「はい、名前も顔も。 それから戦い方もわたしが知ってるあの人そのものでした、間違いありません」
「ラストがここにいるのだから他にいてもおかしくないということね」
わたしがいるんだから他にも来てる人がいる可能性はゼロじゃない、それはいい。
だけど……。
「わたしが知ってるあの人は、こっちに来る1年くらい前に亡くなってるハズなんです……」
「逆じゃないかしら、こっちに来てしまったから何も見つからず死亡扱いにするしかなかったとか」
遺体の帰ってこない死亡報告なんて身近でもあったから確かにそうかもしれない。
ということは今まで考えてなかったけどわたしももう故郷では死んだことになってるのかな。
「でも、貴女の心配事は死んだと思われていた人が生きていたことじゃないんでしょう?」
そこまでバレてるの、ちゃんとポーカーフェイスしろわたしの顔!
逃げられないならもう白状するしかないか。
「どう考えても勝ち目がありません」
言ってしまった、嫌われてしまうだろうか……。
「それはおかしいのではないの、ラストはトップにいたのでしょう?」
あ、勘違いされてる。
「わたしが主席なのはあくまで候補生、まだ実戦に出ていない訓練課程の中での話です」
でも……。
「あの人は正真正銘最前線で結果を出してきたトップエース、わたしからしたら雲の上の人なんです」
「それは伝聞ではなくてちゃんとラストの言葉なのかしら?」
「わたしだって形式こそ違うものの実戦を経験して以前よりも強くなったつもりです、でもそれでわかったのは明確な実力の差でした……」
こっちに来る前よりその差が明確に測れるようになったのこそ成長の証だろうとは思う。
でもそれにより勝ち目がないことが逆にハッキリわかってしまった。
「そう、その言葉を信じるとしましょう。 そして逆に問うわ、どれ程都合の良いことが起これば勝てると考えているのかしら?」
「都合の良い?」
「実際にはあり得ないことでもいいわ、現実を見ても勝ち目がないというのならそこから考えてみましょう」
実際にはあり得ないことでもいい、か。
「そうですね、もし乗る機体がドゥークタードだったら性能差のゴリ押しで勝てたかもしれません」
「そのドゥークタードとリーリオの間にはそんなにも性能の差があるの?」
「生産性と整備性、それから訓練したら誰でも動かせる代わりに性能は控えめです。 あの人は専用カスタム機に乗っていましたけどそれでもリーリオの方が上ですね」
「大量生産品なのね、まるで古代戦争みたいだわ」
古代戦争?
「古代戦争についてはまた今度ね、でも性能差さえあれば勝ち目があるというのは良い話を聞いたわ」
「それは、どういう?」
まるで何か手段があるかのような語り方だ。
「ずっと考えていたの、ラストの勝利をただ座って待つだけの女でいていいのか。 ドリューナルのためにできることがただ勝者に与えられるトロフィーとして身を捧げるだけなのか」
「わたしはそれだけでも十分嬉しいんですけど」
「わたくしは満足できないわ、それにラストが困っているのだもの。 ここで動かないでいつ動くというの」
コルネリア様には打開策が見えているんだろうか、しかもそれぞれの国家の威信を懸けた闘いの中において性能差で圧倒しようだなんて。
「明日を楽しみにしていなさい、わたくしがラストの勝利の鍵になってあげる!」




