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救国の英雄 後編

こちらは後編になります、前回の前編を先にどうぞ

 10年前、か。


「だがその話をする前にひとつ質問をさせてほしい、君の故郷で余のような若い王は珍しいかな?」


 王様、ねぇ。

 そもそもわたしの故郷は世襲による王政じゃなかったけど国家元首でって変換しておこう。


「恥ずかしながら学がないので自国の歴史に詳しいわけではありませんけど知りうる限りでは珍しいどころか前代未聞だと思います」


 故郷でエルトレオ王みたいな若さの人がトップになっていたら多分覚えていると思う、記憶にないということは少なくとも近代にはいない。


「そうか、実はね、ドリューナルでもそうなんだよ。 余のような若さで国王になった者は過去には一人もいないのだ」

「はい?」


 何かがおかしい、世襲制なのに史上最年少の王様ということは先代になにかしらの事情があって交代しなければならなくなったわけで……。

 あれ?


「そうですよ、こっちに来てから先代国王に会ったこともなければ何か話を耳にしたこともありません。 それでこの話を振るということはレーゴのこととも関係してるんですよね?」


 おっちゃんはレーゴのことについて話したくないと言っていた、先代の話なんて誰からも聞いたことがない。

 コルネリア様にはこの件について訊いてはいけないとも言われた。

 両方がここで出て来るなら、この二つは間違いなくロクでもない形で繋がっている。


「そこまで辿り着いてくれたのなら話は早い」


 エルトレオ王は一呼吸開けた後で。


「余とコルネリアの両親、つまり先代の国王と王妃は10年前の戦争の際にセカンドウェポン装着事故で死亡しているんだ」

「…………」


 ちょっと黙りこくってしまったけどそれは色々とおかしいじゃないだろうか……。


「コルネリアの言う通りだ、ポーカーフェイスは下手だね。 とてもトリックスターなどと呼ばれているようには見えない」


 そう言って貰えるのは嬉しいけど対戦相手に何か企んでる時の顔見られるわけじゃないし、って話題が逸れた。


「どういう経緯でそうなったんですか?」


 結論だけだとにわかには信じられない。


「まず余の父は国王として政に携わる身でありながら武勇にも優れていた、前回の戦争でドリューナル代表になれてしまうくらいにはな」


 先代国王脳筋疑惑?


「そして武勇に優れていたのは母もだった、父が母を王妃に迎え入れると宣言したのはお互いに剣を交えた直後だったと聴いている」


 わたしの持つ王様王妃様のイメージからとんでもなく遠い、流石異世界。


「そうして有人型セカンドウェポンに搭乗して二人で闘うことになったが装着事故が起こってしまったというわけだ」

「それ、本当に事故だったんですか?」

「勿論当時も事故に見せかけてのテロではないかと疑われた、しかしどれだけ調べても事故であるという証拠しか出てこなかったよ……」


 おっちゃんがレーゴの話をコルネリア様に振るなって言うわけだ、13歳の時にそんな体験をしてしまったら……。


「それでよく今回もセカンドウェポンルールが採用されましたね」

「前回が初採用だったこともあるんだろう、事故もその一件だけだったこともあって安全性の大幅な見直しは必須になったが続けて採用されることになった」


 セカンドウェポンルールそのものの不備ではなく初採用だから技術が未熟と判断されたのか。


「それが原因で今回はどの国も王族を代表として出さなくなった、ルールとして禁止されたわけではないがあんなことがあればな」


 過去には強ければ王族が出場することも普通にあったのか、上手くいけば権威が高まったりするのかな。

 そしてそれはそれとしてもう一つ訊かなければいけないことがある。


「その事故があった結果としてドリューナルの序列はどうなったんですか?」


 そこで終わってしまったのなら最下位もあり得るんじゃないだろうか。


「事故であることを鑑みて『番外』という扱いになったよ、簡単に言ってしまえば良くもなく悪くもなくだ」


 その答えに少しだけホッとしたものの王様と王妃様、二人の命と引き換えと言われると完全にマイナスな結果だよなぁ……。


「無論このような結果になってしまったことは余をはじめ国民の皆も、とても納得できるものではなかった」


 そりゃそうだ、王様と王妃様が死んだのに「かわいそうだから同情してこれくらいの地位をあげるね」って言われても誰も喜ばない。

 あれ、まてよ?


「もしかしてわたしが時々『救国の英雄』って呼ばれるのって……」

「察しがいいな、皆が君のことをドリューナルに勝利と栄光をもたらしてくれる人物だと期待しているからだ」


 オウフ……。


「わたしはそんな大それた存在じゃないんですけど……」

「何を言う、ここまで全勝で次勝てば決勝トーナメント進出は確定。 例えここから全敗したとしても他の国の状況次第では十分進出の目があるところまで来ているというのに」


 そうだった。

 でもやめてほしい、そんなあっちこっちから英雄なんて呼ばれてもてはやされたら調子に乗ってしまう!


 話を終えて部屋へと戻ってくる。

 時々救国の英雄を呼ばれていた意味がようやくわかった。

 正直こっちに来るまではイチ兵士に過ぎなかったわたしが急に英雄扱いされるというのは荷が重い。

 でも本当に救国の英雄と呼ばれるようになってしまえば女の子からもモテモテになってハーレムとかできちゃうんじゃないだろうか、フヒヒ。


「ラスト様、お帰りなさいませ」

「リンナちゃんたたいまー」


 おっと、リンナちゃんにハーレム願望を悟られてはいけない、顔に出ないようにしなければ。


「次の対戦相手が決まったそうで、ウヌ様から資料を預かっております」

「うん、ありがとう」


 受け取った資料を早速見てみる。


「はあ!?」


 そこに表示されていたのはわたしの知ってる名前と、知ってる顔だった。


「なんで、あの人がここに……」

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