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つまり本命をキープした上でモテたい

 自陣営に戻ってきてコックピットのハッチを開ける。

 降りてきたところをコルネリア様とリンナちゃんが迎えてくれた。


「毎回毎回心臓に悪い勝ち方をしてくるわね、素手同士にもつれこんだ時には今回こそ負けるかもなんて思ってしまったわ……」

「いいえ姫様、あれはおそらくラスト様の計画通りかと」

「そうなの?」


 リンナちゃんは戦闘メイドだからわかっちゃうんだな。


「そうですね、実のところ素手の殴り合いになった時点でわたしの勝ちはほぼ揺るがないものになってました」

「私も客観視点から見ていたので気づきましたけど、当事者である相手のパイロットはさぞ混乱していたことでしょう」

「ちょっと、二人だけでわかり合ってないでわたくしにも説明なさいな」


 そうせがまれてわたしはAIを相手にした時と同じように今回の戦いについて解説した。


「じゃあ、最初から最後まで計算づくだったということ?」

「想定していた中の最悪ではありますけど、こっちに武器がひとつでも残っていればもっと楽に勝てたので」

「……ラスト、やっぱり貴女にペテン師はお似合いよ」


 AIと同じこと言われた!?


「今回はその二つ名も利用しましたから言い返せませんけど……」


 わたしが正面からガチンコするだけで相手が勝手に策を警戒してくれる、なんて多分この一回きりしか通用しないとは思うけど。


「それより……」

「なにかしら」

「ご褒美ください!」

「ご褒美って……」


 もちろんコルネリア様からの熱いキッスですが、勝ったらまたしてくれるって以前言っていたので。

 コルネリア様も自分で言っていたことをちゃんと覚えていたのか顔を赤くする。


「目を閉じなさい」


 そうか、コルネリア様はキスする時目を閉じていたい派か。

 だけど期待とは裏腹に感触が下りてきたのは唇ではなくおでこだった、少し残念だけど前回の不意打ちと違ってしっかりと堪能できたからまあいいか。


「ラストが本当はどこにして欲しいのかはわかっているわ、でもまだ……」

「いいんですよ、コルネリア様が心からしたいと思う時にしてくだされば」


 無理強いはしたくないし、戦死する心配のないこっちの闘いの中でならそれくらい待つ余裕は十分あるだろう。

 さて撤収作業に入ろうかと思ったタイミングで声を掛けられる。


「ラストさんというのは……あなたね」


 声の主はセルア・アーウィンスだった。


「へー、この人が私達に勝った人なんだ」


 後ろからセルアとそっくりな女の子が顔を覗かせる。

 似ている、けどこっちはわたし好みの可愛い系だ!


「こんにちはー、アルセ・アーウィンスでーす」

「改めまして、ラストです。 でもどうしてここに?」

「何を言ってるんですか、終わったらお茶にと誘ったのは貴女でしょう」


 戦闘前のアレを本気にしてくれたんだ、もしかしてこっちの世界に来てからナンパが成功したのこれが初めてじゃない?


「それに私達からもラストさんにお話しがあったので」


 というわけでリーリオを輸送機に搭載するまで少し待ってもらい他の撤収作業が終了するまで軽いお茶会となった。

 リンナちゃんがなぜ輸送機に簡易とはいえお茶会セットを載せていたのかは気にしないことにしよう。


「……それじゃあエネルギーライフルを手放した時点で私達は負けていたんですね」


 なんか流れで反省会のようなモノが始まった。


「あれはセカンドウェポンをあぶり出すためでもあり詰めのためにも必要だったからね、残しておいたら分離後に勝ち目がないのはこっちだったわけだし」


 さっきまで闘っていた相手とこんな風に話をするなんて以前のわたしには想像することすらできなかった。

 候補生である間は模擬戦後の反省会なんて当たり前だけど卒業して戦場に出たら敵とこんなことをするハズがないのだから。


「それで、本題なんですけど」

そうだった、わたしに何か話があるんだっけ。

「ラストさん、ペルヴァンシアに来ませんか?」

「そう、そういうことなのね」


 ここまで黙っていたコルネリア様がそう言いながらため息をつく。


「そういうってどういうことなんですか?」

「乱暴に言ってしまうとペルヴァンシアは強い女が正義で高い地位に就く国なのよ」

「まあ、そうですね」


 そこ否定しないんだ!?


「なので国の代表である私達を破ったラストさんをペルヴァンシアは欲しているのです」


 なんてこった、ヘッドハンティングじゃないか。


「勿論すぐの話ではありません、どれだけ早くてもこの戦争が終わってからのことになるでしょう」


 あ、代表をすげ替えるとかそういう話じゃないのね。


「それに、これを受けてくれたら貴女がさっきからチラチラと見ているアルセのことも好きにできるかもしれませんよ」


 その言葉に思わずガタッと立ち上がる、コルネリア様から白い目で見られた。


「まあアルセをもらうなら私達二人共もらってくれないといけませんけど」

「姉妹丼!?」


 ガタタッとまた立ち上がる、しかも口に出してしまった。

 リンナちゃんはもう背後で殺気を隠そうともしない、怖い……。


「返事を今すぐにとは言いません、考えておいてください」


 返答は今すぐじゃなくていいと言うけれどわたしの応えはもう決まっている。


「確かに美味し……じゃなくて嬉しい話ですけどお断りします、わたしはコルネリア様がいないところへ行くつもりはありません」


 ハッキリと告げる、聴く限りペルヴァンシアへ行けばウハウハな生活でモテモテになれるかもしれないけどわたしにとっては本命一人の方が大事だ。


「そうですか、お二人は……無理を言ってごめんなさい」


 まだわたしの片思いだけどね、とは口にしない。


「私達も撤収しなきゃないけないし、そろそろ帰るわよ」


 と、アルセちゃんを促す。


「話終わったんだ、ご馳走様でしたー」


 無言でずっとお菓子を食べてたアルセちゃんも帰る準備を始める、可愛い。

やっぱり即断ったのはもったいなかったかもしれない。


「さあ、わたくしたちもドリューナルに帰りましょう」


 三人で輸送機に乗り込む、残りの撤収作業も終わっていたらしくすぐの発進となった。

 帰るまでの間コルネリア様の機嫌がとても良かったんだけど、これは好感度が上がってきたと思っていいのかな。

タイトルと合わせるとラストがロクでもないヤツに見える

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