リーリオVSフラティーノ 決着
空中の爆発を確認して一息つく、これで終わればいいんだけど。
「ボムバードバスター機能停止、機能停止。 爆発します」
「うわぁ、パージパージ!」
慌ててパージするも爆発に巻き込まれる、幸い爆発は小規模だったのでそこまで大きいダメージにはならなかった。
「左腕が中破しました」
間に合わなかったか、それよりボネージュフラティーノは?
煙の中から何かが落ちてくる、フラティーノだ。
合体を解除して元の形態に戻ってる、ついでに向こうも爆発に巻き込まれたせいか左腕を失っていた。
着地狩りの要領で両足のワイヤーを射出、狙いは……。
「くっ……」
残った右腕で首をガードしようとするのを無視して胴体へと巻き付ける。
首なんて狙っても胸部の小型機銃で撃ち抜かれるのが目に見えてる、だからこっちを封じるのが先。
小型機銃は胸部の装甲を展開しないと撃てないからワイヤーを排除しようと中から撃てば胴体はズタズタになる。
そしてワイヤーで繋がってるからお互い逃げられない、デスマッチの始まりだー!
「それではラスト、そろそろ今回の作戦を教えてくれませんか?」
ここからは聴かれたくないので外部音声出力のマイクをオフにする、そしてAIのその問いにわたしは。
「無いよ」
と、返す。
「まさか、このまま素手で殴り合いをするんですか?」
「そうだよ、このまま素手で殴り合いするの」
そんなわたしの返答を聴いてAIは少しの間沈黙した後。
「嘘ですね、ラストのことですどうせなにか企んでいるのでしょう」
「そうだね、今頃向こうもAIと同じこと考えてるんじゃないかな」
「……はい?」
「『ドリューナルのトリックスターと呼ばれた女がこの局面でどっちが勝つかわからない正面からの殴り合いなんてするハズがない、絶対裏で何か企んでる』ってね」
「それは……」
AIが言葉に詰まる、その間にダメージを受けた左腕を力づくで引きちぎって右腕でガッチリと握り右腕のワイヤーを巻き付けて固定する。
途中で切断してしまったけどそれくらいの長さはなんとか残っていた。
「わたしが正面から戦えば戦うだけありもしない策を警戒しなきゃいけなくなる、その分わたし自身に向く注意は疎かになって結果として殴り合いが有利になる」
フラティーノに向かって駆け出す、セルアももう選択肢がないと悟ったのか構えをとる。
「ラストの考えはわかりました、しかしそれだけでは策としていささか弱いのでは?」
「そうだね、これはあくまで保険だから」
「やっぱり何かあるんじゃないですか」
AIのツッコミを無視して殴りかかる。 狙うは右腕、正確には右肩。
「じゃあAIは射撃型の相手に勝つにはどう戦えばいいと思う?」
「懐に潜り込むことじゃないんですか、最初ラストもそうしていましたし」
「残念、オマケして70点」
「ではラストの言う100点とはなんなのでしょう?」
殴る殴る、右腕と左腕を連結している分リーチはこっちの方が長いため一方的に攻撃を打ち込む。
「武器を全て使用不能にすること、かな」
「はい?」
「射撃が得意な相手なら武器を全て使用不能にして素手の殴り合いに持ち込む、ただでさえ苦手な格闘戦なのにわたしの罠も警戒しないといけない。 そうすればいかにクールなお姉様といえどいつまでも冷静沈着ではいられない」
そのためここにきて今更執る策などない、わたしからしたらもう終わってるも同然なんだから。
ついでに言えばボネージュフラティーノの弱点は武器の数が極端に少ないことだった。
フラティーノを内部に格納しないといけないから見た目に反して中身はガランドウ、ネヴンケブラのように武器を大量搭載はできない。
妹もあくまでセカンドウェポン側、合体を解除したらもう操縦には参加できない。
だから武器を優先的に潰す、後は格闘戦の苦手なパイロットと殴り合いをするだけだ。
近接格闘を相方に丸投げしているようなパイロットに負けているようでは主席は務まらない。
とはいえ完全なワンサイドゲームとはいかない、こっちは脚からワイヤーを出して巻き付けてる身だから転ばないように動こうとすると制限がキツく全ては避けられない。
だけどそれも問題はない。
「そんな……」
素手での格闘戦を想定していない射撃型機体の手で装甲を殴ればマニピュレーターがひしゃげるに決まっている。
こっちは既に壊れてる左腕で殴ってるから実質ノーダメージ!
それに、ちゃんと混乱してくれている。
近接格闘戦だからってパンチにこだわる必要はない、キックやタックルっていう選択肢だって本当はある。
それができないのは冷静さを失ってるからだろう、保険が効いている。
そして、パンチ以外の攻撃手段をひらめくヒントあげないようにこっちもパンチオンリーで攻めてるわけだし。
「進退窮まっていますね、これを最初から狙っていたとは……」
「グラーボセイバー奪われた時は滅茶苦茶焦ったけどね、サイズが大きいせいでちゃんと持てなくて助かった」
勿論話をしている間も攻撃は続行、肩が外れるまで打つべし打つべし。
「最初から機体をここまでボロボロにすることを前提とした作戦、確かに見抜かれないでしょうね」
「これまでは可能な限り少ない被害で勝とうとしてたから読まれ易かった、だったら逆に考えればいいじゃない」
「後で修理する人達は大変ですけどね」
「そのおっちゃんが言ったんだよ、どれだけ機体をボロボロにしても勝つのがわたしの仕事だって」
「こんな作戦を執れという意味ではないと思いますが」
知ってる、でもこれがわたしの考えうる限り一番勝率高かったのは本当だって。
若干の後ろめたさはあるけど、実際にもう相手詰んでるし。
「やはりラストにはペテン師の名がお似合いですよ、素手での殴り合いでもまだ相手は勝ち目があると思っていたでしょうに」
「なにをー」
ついにリーリオの一撃がフラティーノの肩をもぎ取る。
それから少ししてタイムアップの鐘が鳴った。
判定勝ち




