夢の中で一目惚れ、現実でも一目惚れ
「痛っ!?」
あれ、さっきの可愛い女の子は?
一瞬の落下したような感覚からの床に落ちた痛みで意識が戻ってきた。
おかしいな、わたしの寝床ってベッドじゃないハズなのに……。
しかもなんだろう周囲に人の気配が多数、しかもこれ囲まれてる?
それを察知した途端意識は一気に覚醒し飛び起きて身構える。
しかし瞳を開けて視界に入ったのは自分の部屋ではなく全く見知らぬ場所だった。
昨日は普通に部屋で寝た記憶がある、ということはそこから誘拐でもされたんだろうか。
しかし仮にも軍施設にいる人間をそう簡単に誘拐なんてできるものではないだろう。
ここに運びこまれるまでわたしが目を覚まさなかったのもおかしい、薬を使われたのだろうか?
わからないことは多いが知らない場所に運び込まれ槍を構えた10人程の人数に囲まれて目を覚ますというのは悪い予感しかしない。
武器をチェックしようとするも寝ている時に身ひとつで連れてこられたからか武器になるモノを身に着けていないことは一瞬でわかった、普段仕込んでいるのは枕の下だ。
「うーん、物凄い警戒されてるわね……」
そんな声の主を視線で辿るとそこにいたのは若い、いや幼いという分類に含まれるかもしれない少女の姿だった。
そんな彼女が続いて口を開く。
「ほらお兄様もあなた達もそんな恰好の女性をいつまでまじまじと見つめているのですか、下がりなさい!」
その言葉に正面にいた長身の男が申し訳なさそうな表情をし……、っていうかめっちゃ美形だな。
「わかった、着替えを済ませたら連れて来てくれ」
そう言うとサっと部屋を出て行った。
「ほらあなた達も、何をボサっとしているのですか。 下がりなさい」
「しかし、御身の安全が……」
「いいから下がりなさい!」
「はっ!」
そんなやり取りで少女、幼女? はわたしの周りを囲んでいた武装している男達を追い出してしまった。
「嫌な思いをさせてしまったわね、ごめんなさい」
その言葉を受けてようやく場を仕切っていた少女に意識を向ける。
長いストレートな銀髪と赤い目が視界の中に飛び込んできた。
いやそんなパーツだけじゃない、改めて少女を見直せばその姿はわたしの好みドストレートな外見をしていた。
うん、とてもいい。
しかしどこかで見覚えがあるようなないような……。
「言葉、通じていますか?」
わたしがジっと見つめているのを言葉が通じないせいだと思ったのかそんな言葉を投げかけられる。
「あ、いえ大丈夫。 ちゃんとわかるよ」
「そう、どこかもわからない彼方から連れてきてしまったので不安があったのだけれど言語が同じなら意思疎通に労力を割かなくて済むわね」
「どこかもわからない彼方?」
どういうことだろう、わたしをここまで運んできたのにどこからかがわかってない?
「意味がわからないって顔してるわね」
表情に出てるのをストレートに指摘された、いやまあポーカーフェイスが得意ではない自覚はあるけれども。
「色々説明してあげるわ、付いていらっしゃい」
そう促されたので、少女の後を追って部屋をあとにした。
今はとりあえずそうするしかなさそうだ。