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ペテン師

 今のは聴き間違いだろうか。


「コルネリア様、もう一度いいですか?」


 改めて尋ねる。


「ラスト、貴女に二つ名がつけられたわ」


 時間はちょっとだけ遡る。

 今日はコルネリア様にお呼ばれして二人の逢瀬を過ごす日になった。

 それに合わせてわたしの恰好は前回に引き続きのお嬢様スタイル。

 コルネリア様はカッコイイ系よりこっちの方が好みだということが判明したのでリンナちゃんにも手伝ってもらって再びこの姿となった。

 わたし一人だとこの恰好するの無理だし。

 深窓の令嬢とならわたしだってお近づきになりたい。


 けれども自分がやるとなると着替えるの面倒だし動きづらいしで実際にやってみた身としてはこれを毎日やる本物の皆様には尊敬しかない可愛いっていうのは見えないところで苦労を積み重ねてこそのものなんだね。

 わたしだってキメる時はキメるけどベクトルが違うからこっちの方が大変なんだと思ってしまう。

 しばらくしたらこれも慣れるんだろうか。


 回想終了。

 最初の内はたわいない話に花を咲かせていたんだけどそんな中でこの話題が投げ込まれた。


「ラストに二つ名がつけられたわ」と。

「そういうのこっちにもあるんですね」


 わたしの故郷で二つ名といえばエースパイロットの中でも更に上位の人物につけられる称号だ。

 それはもう国内では注目の的である、更に美形だと雑誌の表紙だって飾ったりする。

 そんな二つ名がわたしに?

 どうしよう、凄くウキウキする。


「そ、それでどういった名前なんですか?」


 少し声が上ずった、恥ずかしい。


「トリックスターですって」

「…………」


 はい?


「もう一度お願いできますか?」

「ラストの二つ名は、『ドリューナルのトリックスター』よ」

「ペテン師……?」

「そうね、そうなるかしら」


 オーマイガッ!


「そんなっ、二つ名っていうからカッコイイの期待してたのによりにもよってペテン師なんて!?」

「わたくしが名付けたわけではないから苦情をいわれても困るのだけれど……」


 コルネリア様はお茶を飲んで一拍置いてから再び口を開く。


「どうも言い出したのはモスグルクとルノンガッテのようなの、つまりラストに負かされた国ね」

「つまり一種の嫌味ということですか?」

「どうなのかしら、でもそれだけでは定着しないでしょうからラストの戦い方はあの二国だけではなく他の国からもペテン師っぽいと思われたのでしょうね」


 遺憾だ、あまりにも遺憾だ。


「わたしの戦い方のどこを見たらペテン師になるんですかぁ!?」

「ラストに負けた二国から見た場合、あそこまで追い詰めてほぼ勝ちを確信していたでしょうにそこからあんな奇策で逆転するんですもの。 ペテン師か詐欺師にでも騙された気分にでもなってしまったのではないかしら」

「それはまあ勝つためですから裏はかきましたけど騙すなんて人聞きの悪い……」

「もう一度言うけれどわたくしが名付けたわけではないの、ここで苦情を言ってもなんにもならないわ」


 くっ、確かにその通り……。


「それなら逆に訊くけれどラストはどんな二つ名だったらよかったのかしら?」


 自分で名付けるなら、か。

それなら。


「『銀の流星』とかカッコ良くてモテそう!」


 リーリオの基本カラー銀だし。


「貴女のあの戦い方で流星は無理があるでしょう」


 バッサリだった、うん流星なんて呼ばれるような華麗な戦い方は全然してないね。


「それにリンナからも聴いているけれどまだモテたいなんて言っているのね」


 本命の相手から言われるとちょっと痛いので戒めたい気持ちもあるんだけど女の子にモテたいという願望は原初の欲求なので理性で押さえつけるのは中々難しい。


「それに、わたくしがいるというのに……」


 その声はあまりにも小さくてわたしの元へ届かず風に吹き消されてしまった。

 顔が真っ赤なのできっと恥ずかしいことを言ったのだろう。


 前にもあったけどコルネリア様って相手に聴かれたくないのに目の前で言っちゃうことがたまに、それで小声になる。

 気にはなるけど無理強いはしまい、いつか面と向かって言ってくれる日が来るのを心待ちにしていよう。

 そんないつかを手繰り寄せるためにも、次も勝とうと改めて誓ったのだった。

 それはそれとしてペテン師呼ばわりはなんとかしたい!

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