リーリオVSディヴァースタイレンタ その3
いや、最初の予定通りいこう。
シールドを一方的に破壊したというアドバンテージを取った今、こっちから強引に攻める必要はない。
もう向こうは接近戦をするにしてもダメージを覚悟で突撃するしかなくなる、そうなれば手傷を与えてその後逃げ続けることでだって勝てる。
エネルギー切れで飛行できなくなれば猶更だ。
相手の矜持に乗ってやる必要は無い、嫌がる戦い方でじっくり確実に勝てばいい。
「ってな事考えてるんだろ、本当に付き合いの悪い女だぜ」
「アンタ可愛い女の子じゃないからね、男と付き合うなんてまっぴら御免だよ」
つい反論してしまったがまあ仕方ない、これだけは言っておかねばならない。
「何言ってんのかよくわかんねぇが別にいいぜ、どっちにしろここからオレ様逆転ショーだからな!」
ディヴァースタイレンタの左肩が展開して中から何か出てくる、初戦で使ってない内蔵武器をまだ持ってたのか。
そのまま左手で投擲してくる、あれはブーメランか。
存在そのもの不意打ちだったとはいえ投擲する動作というタイムラグがある以上回避することはそこまで難しくない、一回目は。
回避したブーメランは当然戻ってくる、狙いは挟み撃ちか。
戻ってくるブーメランと再び接近戦を挑んでくるディヴァースタイレンタの同時攻撃を無傷で捌き切るのは不可能だ、だったら。
ブーメランをエネルギーガンで撃ち落とす、それからディヴァースタイレンタと対峙すれば同時攻撃に晒される心配はなくなる。
「だよなぁ、まさしくそう動いてほしかったんだよ!」
一体何を、と思った途端に左腕の動きが止まる。
これは……。
「脚!?」
背後のブーメランを撃ち落とし前へ構えようとする左腕をディヴァースタイレンタの右脚が止めていた。
「シールドが堅牢で破壊に苦労するっていうのなら左腕そのものを使えなくすりゃあいいってなぁ!」
「しまっ……」
ディヴァースタイレンタの剣が振り下ろされてリーリオの左腕が肩口から切り落とされる。
切断された左腕は地上へと落下していった。
なにすんだよ、ボムバードバスターまだ一発も撃ってないんだぞ!
それ以上の追撃はなくディヴァースタイレンタは距離をとる。
マズイマズイマズイ。
これで逆にわたしがフライトユニット内蔵のエネルギーキャノンをかいくぐりながら接近戦を挑まなければ勝てない立場になってしまった。
蹴りでシールド構えるのを妨害するなんていう予想外の行動に思考と手を一瞬止めてしまったせいだ。
いや、己の不甲斐なさ責めるのは後でいい。
今はここからどうやって勝利するかだけを考えろラスト。
最早使える武器がグラーボセイバーのみといえる状況だから距離を縮めるのは必須。
幸い相手のエネルギーキャノンは威力がある分リーリオのエネルギーガンと比べて連射ができない、かいくぐって近づくのは不可能ではないハズ。
一射目を回避して二射目までの間に突撃をかける。
ディヴァースタイレンタは後ろに下がらない、正面から迎え撃つつもりか。
その方がこっちとしても都合がいいとはいえこれは相手パイロットの性格を考えれば自信の表れだろう、迎撃する気満々だ。
こっちだってやってやる、射程内に入ったところで右腕のワイヤーを射出。
剣に巻き付けて奪い取ってやれば……。
「えっ?」
我ながら非常に間抜けな声が出たが仕方ないと思いたい。
剣に巻き付いたワイヤーがバラバラに千切れて落ちた。
ただの実体剣じゃないのか。
「残念だったな、そんなモノでこの超振動剣を捕らえることはできないぜ! そんな名前じゃないだと、超振動剣の方がカッコイイだろうが」
なんかバックヤードと通信で揉めてるみたいだけど意識をそっちに向けてくれてるんなら好都合。
ワイヤーで超振動剣とやらを奪うのは失敗したけど仕切り直しなんてできないからこのまま突っ込むしかない。
ここから一発逆転を狙って首を切断するのは向こうも想定済みだろうから確実に失敗するのは間違いない、だったら!
剣同士の打ち合いなんてしない、狙うは。
グラーボセイバーと超振動剣がぶつかり合う直前に逆手に持ち替えて更に前へ出る。
それによって超振動剣が右腕に食い込むが構わない、こっちは捨て身だ。
そして右腕が切断される前にディヴァースタイレンタの背中にあるフライトユニットへとグラーボセイバーを突き刺した。
「何っ!?」
驚くユキヒコの声、これは想定外だったようで何よりだ。
次の瞬間右腕が耐え切れずに半ばから切断される、そして機能を停止したフライトユニットに突き刺さったままディヴァースタイレンタと一緒に地上へ落ちていった。
地上に落ちた衝撃によるダメージで勝利する、なんてことは勿論考えていない。
なんとか第一関門は突破した、ここから先も綱渡りであることには変わりないけど。
まだ勝つ見込みはある、これで決着をつけよう。




