たったひとつ質問に答えただけでノーブラ寝間着姿のまま異世界に放り出すのは酷いと思う
絶え間ない銃声が一帯に響く。
しかもただの銃声じゃない、非情に大きい銃声だ。
なにせ口径100mm、そんなものがバンバン飛び交っているんだからうるさいに決まっている。
例え実弾じゃないとしても、ね。
そんな中音の数が急激に減る。
ついでに火器管制がアラートを出したのを視界に収めた。
弾切れだ。
でもそれはわたしだけ、こちらに銃口を向ける相手は依然として発砲を続けてくる。
機体を倒し転がる形でのなりふり構わない無様な回避運動を取るが、それでも全弾は避け切れず脚に数発被弾。
機械が破壊されたと判定し、左脚の機能を停止させる。
状況は絶望的、片脚を引きずった状態で健脚な相手から逃げられるわけがない。
案の定追い詰められ、銃口が目の前に突きつけられた。
「追い詰めたよ、連敗も31回で終わり。 32戦目にして俺の勝」
「うるさい」
なんか語ってる間にトリガーを引いて引いて引きまくる。
勝利を確信していた相手の機体はわざわざ全弾色違いのペイント弾によって極彩色に染まる。
「そこまで、ラストチームの勝利!」
そうしてわたしの32連勝目が告げられた。
「おかしいぞ、なぜ弾が残っていたんだ!」
パイロットスーツから着替えて本日の訓練も終了した後、さっきわたしに負けた男ことエリオッタがしつこく絡んできた。
あー、うっとおしい。
「成績次席なんだからそれくらい自分で考えたらどうなの」
「考えたさ、今回支給されたマガジンの数は決まっていたし君が発砲した数も全部数えていた。 間違いなく弾切れだったハズだ!」
その辺はちゃんとしてるんだ。
大事なことを見落としてるけど。
「わたしの分が弾切れだったのは正解、わたしの分はね」
「おい……まさか!?」
「そう、僚機にマガジン譲って貰ったの」
「なんだと、それなら君の僚機は!?」
「弾が少ないから牽制と時間稼ぎにだけ使うように言っておいたよ」
勝利を確信してトドメ刺そうとせずに目の前で語り出すからマガジン交換の時間も余裕であったし。
それに今回のルールはわたしかエリオッタ、どちらかの撃墜で決着するもの。
だったらエリオッタはチーム戦だろうとわたしに固執して1対1を挑んでくる、いつものことだ。
「操縦技術なら俺が勝ってるというのに、なぜこうも負けるんだ!」
「勝敗がそれだけで決まるものじゃないからでしょ、チーム戦なら尚更」
「だから1対1に持ち込む作戦にしたというのに!」
あー、本当にうっとおしいなコイツ。
なんとか引っぺがす口実を、と。
丁度いい所に。
「タユカー!」
「あ、先輩!」
後輩を発見、ナイスタイミング!
「今日の訓練終わったんですか?」
「うん、それで今日の夜はどう?」
「ぐっ、これで失礼させてもらう……」
そう言いながらエリオッタは退散していく。
アイツはアッチ系の話をすると逃げてくれるからタユカがいてくれて良かった。
「ああえっと、今日はアノ日なので……」
隠さなければいけないことだからか、曖昧な言葉を使われる。
周囲にいる人達には生理だと思われるだろう、元々それを狙っているわけだけど。
「じゃあ仕方ない、1人で寝るよ」
「ごめんなさい先輩、また今度!」
タユカは良い娘だ、わたしのある部分が物足りないなんて直球に言ってこなければ。
「だからお互い本命にはなれないんだよなー」
ひとりごちる。
わたしが好きになれる女の子、わたしを好きになってくれる女の子。
そんな相手を見つけるのは簡単ではないらしい。
あの人みたいにモテれば、選び放題なのに……。
そしてその日の晩……。
いつの間にか知らない場所にいた。
「あれ、わたし布団で横になって……」
寝たハズだ、だとしたらこれは夢なのか。
「あなたが、ラストですね?」
「誰!?」
周囲を見渡すが誰もいないし、気配も一切しない。
「この娘と結婚したいですか?」
わたしの言葉を無視して質問を重ねてくる「声」
いきなりなんなんだと浮かび上がった映像を見た瞬間……。
「したい!」
反射的に叫んでいた。
そこにいたのはもう好みドストライクの女の子。
結婚なんて、したいに決まっている!
「そうですか、それは良かった」
たったそれだけの短いやりとりで、この夢は終わった。
まあこの夢を見たこと自体綺麗さっぱり忘れてしまい、思い出すのはかなり先になっちゃうわけだけど。