新兵器
ついにヅガルのおっちゃんから呼び出しがかかった。
リーリオの修理完了と新兵器であるセカンドウェポンのテスト。
ドリューナルには量産機やシミュレーターも存在しないためリーリオが動かせる状態でないと操縦訓練もできない。
長年現在の形式で戦争をやっているが故の弊害だった、それはさておき。
「どうだい、新兵器の威力は!」
「超スーパー凄いよ!」
ドヤ顔のおっちゃんに親指を立てて賛同する、しかし。
「これあったら初戦もっと楽に勝ててたんじゃないの!?」
なにせこのリーリオ機関を搭載してない新セカンドウェポンはとんでもない「威力馬鹿」だった、取り回しは悪いが火力はとんでもない。
取り回しの悪さも最後まで一歩も動かなかったネヴンケブラ相手なら関係なかっただろう、それでいてわたしがやらかしたエネルギーガンの最大出力をも超える火力をぶっ放せる。
これについてはわたしもちょっと文句を言ってもいいかなって思うんだ。
「いんや。 それぞれの国の機体データは当然国家機密で詳細は不明だしこれは勘でしかないんだが、コイツを使ってもネヴンケブラのアンブレイカブルシールドとやらは突破できなかったと思ってるぜ」
「ええー……」
どういう強度してるんだよ。
と言いたいところだけどあそこまで特化してるっていうことはきっと初戦で戦法がバレた後もあのスタイルで戦い続けるつもりだったんだろう、もしそうならトンデモ防御力がなければお話にならない。
わたしとリーリオが初戦で破っちゃったけど。
向こうの国はお通夜ムードではないだろうか。
ところで、とおっちゃんに向き直って。
「リーリオの転送機能っていつどこで使うためのものなの?」
「転送、なんだそりゃ?」
メカニックチーフのおっちゃんが知らないってどういうことだろうか。
「遠く離れたところからでもわたしが呼べば一瞬でカッ飛んでくるヤツだって」
「いやだからそんな機能を搭載した覚えはねえって、一体どこからそんな情報出てきた?」
「AIが言ってた」
おっちゃんがガチで知らないということはAIなりのジョークだったんだろうか。
「そもそもお前さんの言うAIとやらも搭載なんてしてねえんだぞ」
「はい?」
「そんな音声聴いたことねえしそいつの発言だってログには一切残ってない、お前さんが一人でいもしない誰かに話しかけてるヤツなら残ってるけどな」
「なにそれ」
わたし以外には聴こえないし機体のログにも残っていない、それはまるで……。
「コルネリア様にだけ聴こえてるっていう声みたいじゃん……」
「お前さんの言ってることが本当なら無関係じゃないだろうな、しかしまあリーリオ機関にはブラックボックスが多過ぎであとどれだけ隠れた機能があるやら」
ブラックボックスだらけとか乗る側からしたら不安しかないんだけど!?
よくそんな機体を採用しようと思ったな、いやリーリオ機関のパワーあってこその勝利だったから強くは批判できないけれども。
「メカニックとしちゃあオカルト的不思議パワーに頼るっていうのはあんまり気分が良いもんじゃないがそうも言ってられねぇからなぁ……」
わたしからしたらここ異世界だからそのオカルト的不思議パワーっていうのもっとあってもいいと思うんだけどね。
今のところそういうのリーリオの機能以外じゃ全然見てないからな、魔法とかも無いみたいだし。
「こちらでしたか」
わたしとおっちゃんのなんとも言えない沈黙を破ったのはそんな知らない声だった。
髪が長いからおっ、と期待したもののさっきの声の低さや顔つきからするになんだ男か……。
「ウヌ様!?」
メカニックチーフのおっちゃんが様づけしてかしこまるということはかなり偉い人なのか。
「ラスト殿には初めてお目にかかります、陛下の補佐を担当しておりますウヌと申します」
「は、初めまして……」
平静を装うが内心メッチャ驚いてるよ、王様の補佐官とかとんでもなく偉い人じゃん!?
「救国の英雄に対してご挨拶が遅れたこと、誠に申し訳ない」
まだ1勝しかしてないのに救国の英雄とか盛り過ぎだよなんなのこの人。
偉い人なのにやたら腰が低いの、なんか胡散臭いな。
「ウヌ様が直接とは一体何があったんです?」
「はい、次の対戦相手が決まりました」
その一言に空気が張り詰める、ついに来たという感じだ。
リーリオの修理やセカンドウェポンの建造が間に合って良かった。
「これが対戦相手の公開データと初戦の戦闘記録になります、お二人とも目を通しておいてください」
そうか、ここからは情報が公開されていくのか。
それヤバいじゃん、セカンドウェポンこそ使わなかったというか使えなかったけどそれ以外の手の内全部初戦で見せちゃったよ。
そうしなきゃ勝てなかったんだから後悔こそしないものの次からはバリバリに対策された状態で戦わなきゃいけないのか……。
ウヌ様は忙しい身だからか資料をわたし達に渡すとすぐ帰ってしまった。
「ラスト、こっちも資料読んで対策会議するぞ!」
「おっちゃんと二人きりは嫌だから娘さんも呼んでね」
「だから娘なんていねぇって!」
最早お約束となったやりとりをしながらわたし達作業に戻っていった。
ついに、次の戦いが始まる……。