パイロットの役割
帰国して早々にメカニックチーフであるヅガルのおっちゃんからカミナリが落ちた。
でもゲンコツはギリギリのところで飛んでこなかったのでセーフ!
「ホントにまあ派手にぶっ壊しやって」
「いやこっちの言い分も聴いてほしいんだけど、これはセカンドウェポン無しっていうデカいハンデがあったせいでもあるんだから」
こればかりは言っておかなければならない、今回ギリギリはなんとかなったけどこんな戦いが 続くのならセカンドウェポンを一方的に使われる状況で勝ち抜くなんて不可能だ。
「お前さんがもっと早くこっちに来てればそっちにも時間をかけられたんだがな」
「その苦情はコルネリア様にしか話かけない神様とやらに言ってよ、わたしにはどうしようもない!」
「まあ、そりゃそうだ」
「色々キツイこと言っちまったが」と続けて。
「よく勝ってくれた、修理は任せな」
そう言いながら暑苦しい笑顔を向けてくれた。
なんだおっちゃん、脈の無い女性に頭ポンポンしちゃうタイプか。
「急に優しくなるじゃん」
「極端な話をするとお前さんは勝つのが仕事だからな、機体をどれだけボロボロにしても」
この世界の戦争ってものをちょっと軽く見てたかもしれない。
国の威信をかけるって言葉を受けていたはずなのに内容が競技色強いせいで勘違いしていた。
わたしは元の世界で機体をどれだけボロボロにしても勝てばいいなんて言われたことはない。
それはパイロットであるわたしも、そして整備するメカニックも学生だったからかもしれないけど。
中身は違ってもこれはこれで戦争であるという気概で立ち向かわなければいけない、そんな気がした。
それはそれとして、だ。
「セカンドウェポンはこれからも使えないままなの?」
「いんや、リーリオ機関を搭載してないヤツを現在建造中だ」
あるんかい。
「それあったらもっと楽に戦えてたんじゃない?」
「そうかもしれんが建造中だって言ったろ、まだ未完成なんだよ」
それでわたしがもっと早く来てればっていう話に繋がるのか。
「完成したらまたテストに付き合ってもらうぞ」
「そりゃあまあ、わたしもぶっつけ本番でなんて使いたくないし」
わたししか動かせない以上、その手のテストは全部やるしかない。
他にも動かせる人を探した方がいいんじゃないかな。
そのリーリオ機関が搭載されてるっていうもうひとつのセカンドウェポンを使えるようにするためにも。
「それからお前さんの実戦データも取れたからクセに合わせた調整も本格的にできるようになるぞ」
「あ、それは嬉しい」
なにせこの国にはアグレッサー用の機体すら存在しないため戦闘データは本番で回収するしかない。
出来上がればこれまでよりもスムーズに操縦できるハズだ。
「とはいえまずはリーリオの修理が最優先だ、お前さんはしばらく休みだな」
少なくともパイロットとしてはそうなるのか。
「とはいえもう一仕事あるけどな、今夜は城で祝勝会だ」
一回勝った時点でもうしちゃうのか、結構お金持ちの国な可能性が出てきたぞドリューナル。
「こんな別嬪さんが勝利をもたらした英雄だって知ったら皆色めき立つぞ、可愛い女の子も寄ってくるかもな」
「テンション上がってきた!」
そういった催事にはまるで縁がなかったしかつては一兵士ですらなかった身で英雄扱いとかあまりにも釣り合ってないように感じてたんだけど。
可愛い女の子とお近づきになれるなら話は別!
「ウフフフフフフフ……」
夜が楽しみ過ぎておっちゃんが何か言っていたような気がしたけどまるで耳に入ってこなかった。