リーリオVSネヴンケブラ その1
ついに最初の戦い、その当日がやってきた。
大型輸送機でリーリオごと指定されたバトルフィールドへと向かう。
場所が国外のためそこそこ時間がかかるらしい。
けれどもあの日以来の再会だというのにコルネリア様とは一言も言葉を交わせなかった。
そうして到着したのは何も無いただただ荒野の広がる場所だった。
20メートル級の巨大機動兵器が大暴れするんだから被害を抑えるために当然の選択と言える。
専用のパイロットスーツ、これも元々男性用しかなかったため大急ぎで用意されたものらしい、に身を包む。
流石に一切言葉もかけないのもどうなんだと思いコルネリア様の元へ向かう。
ただ結婚できればいいというわけじゃない、わたしが求めるのはそんな冷え切った関係じゃない。
視線を合わせコルネリア様をまっすぐ見据える。
「ラスト……?」
「勝ってきます。 あなたと結婚するためじゃなく、あなたの愛を掴むために」
あれから考えに考えて、結局出てきたのはただただ直球な言葉だった。
「これよりドリューナル対モスグルクの戦いを執り行う、両者指定位置へ!」
リーリオに搭乗し指示通りの位置へ移動させる、そして相手も同じく。
そこでようやく相手の機体の全容が知れた。
弾丸を想起させる胴体に手が両腕共にマニピュレーターではなく直接ガトリングガンになっている。
そして上部でたんこぶのように丸くせり出している部分、あそこが頭部でコックピットか。
弾丸の先端にあるモノアイがギラリとこちらを睨んでいた。
「それでは両名とも名乗りを」
「ラスト、乗機の名はリーリオ」
「クレオ・レンゲルス、乗機の名はネヴンケブラ」
互いに名乗り合う、やはり戦争と呼ぶには正々堂々とし過ぎている、違和感が強いな。
と、異文化にギャップを感じてる場合じゃない。
「それではノーワデイズウォー、スタート!」
開始の合図がきた、さあどう出る。
と、身構えた次の瞬間ネヴンケブラの装甲が展開しガトリングガンが回転を始めた。
即座に飛び上がる、さっきまでいた場所をガトリングガンの弾丸が通過していく。
更に展開された部分からも機関砲やミサイルが発射されてリーリオに襲い掛かる。
「うおおおおおおおおおおおおお!?」
初手で一斉射撃、開幕総攻撃で一気に終わらせるつもり!?
突撃しなくて正解だった、見た目からして接近戦は苦手そうだと踏んで前に出てたらもう終わっていた。
とにかく避けろ、逃げ回れば無誘導の機関砲やガトリングガンなんてそうそう当たるもんじゃない。
問題はミサイル、リーリオのスピードでも振り切れない。
「やるしか、ないか!」
回避運動をとりながらミサイルをエネルギーガンで撃ち落とす、難易度高過ぎる……。
でもこれもリーリオ機関の加護とやらなのかこの全速機動の中でもコックピット内で全くGを感じない、これなら以前乗っていた機体より狙いやすい。
「よしっ!」
外さずに3発連続命中、しかし。
数が減ってしまえばその分「たまたま他のミサイルにも当たる」という確率は減っていく、全部は撃ち落とせない……。
一瞬だけ視線を逸らしてネヴンケブラがもう斉射を終えているのを確認し。
「ならシールドでっ!」
迎撃し損ねた残り3発のミサイルをシールドで受ける。
「シールド中破、エネルギーガンの使用には問題はありません」
AIからの報告に防ぎ切ったと安堵する。
小型だったためか威力はそこまで高くなかったようだ。
シールドの損傷は時間切れの判定時に本体のダメージには含まれない、つまりリーリオは実質無傷。
捌ききっ……。
「なんだっ!?」
機体が揺れる、攻撃を受けたのか!?
ネヴンケブラを見てみればガトリングガンの回転が今止まったところだった。
「胴体に被弾、装甲は貫通していないので損傷は軽微です」
その報告にひとまず安堵した、しかし。
「このタイミングを狙われた……?」
一斉射撃を捌き切って気の緩んだところへの攻撃、それはわかる。
しかし狙ったにしては温存していた弾の数が少な過ぎる。
それに今度こそ向こうは弾切れだろう、それで装甲を凹ませた程度の攻撃になんの意味があるのか。
最後の悪あがきと考えるのは短絡的だろうか。
でも、警戒し過ぎるのも良くない気がする。
ならば、次はこっちから撃って出る。
「今度は、わたしの番!」




