ほんのちょっとだけ先の話
地面に足を着地、機体を操作して膝を着かせる。
人型ってこう戦闘機と違ってただ着地だけでサクッと地面に降りられないのが難点だよね、イチイチ姿勢を低くしないといけない。
ついでにわたしが以前まで乗ってたのと違ってコックピットが胸部じゃなくて頭部にあるのも更に降りづらく感じる……。
コックピットハッチを開放、カメラ越しではない景色が視界に入ってくる。
といっても広大な荒野が広がっているだけではあるが。
見下ろせば満面の笑みでこちらへ駆け寄って来る少女の姿があった。
それに応えるためにわたしも外に出て機体から降りる。
そのまま止まる気配もなく飛びついてくる彼女を抱きしめようとした、が。
「うわっ!?」
その勢いに負け後ろへ倒れこんでしまった、ちょっと痛い。
「よくやったわ、わたくしのハニー!」
一体どれだけ上機嫌なのか、ハニーなんて呼ばれ方をしたのは初めてだ。
けれどもそれでわたしもようやく実感が沸いてきた、身体を起こして彼女を抱きしめる。
「わぷっ」
と、少々驚いた様子だったが。
「まあいいでしょう、今日は初勝利というめでたい日になったのだからハグくらいは許します」
よっしゃ、じゃあ今の内にこの感触を堪能しておこう、そもそも次はいつ直接会えるのかすらわからない。
これで少しはわたし達の目指してる結婚に一歩近づけただろうか。
いや、まだ片想いだからわたしの目指してる結婚になるのかな。
今日が特別な日なのは承知している、でもいつかはこんな風に抱き合えるのが日常になればいいと思わずにはいられない。
いつかはそうなれる日が来るだろうか。
あの日あの言葉から彼女を解放できるだろうか。
わたしは抱きしめた彼女の温もりと柔らかさを感じながら今日に至るまでの日々を思い返していた。