スローライフはスローライフ
注意!!
話として盛り上がる部分はありません。
だって目立った部分が無い主人公の、とてつもなく平穏な人生の話ですので。
「マジで異世界転生してるよ……」
こう漏らしたのは、過労死した自覚がある男性。
10歳の誕生日のお祝いで村民としては豪華な食事を用意してもらえて、その一部に前世でも好きで食べていた果物があり、それを食べた事がきっかけになったらしい。
思い出した瞬間にした変な行動はなんとか誤魔化し、一人になったタイミングで漏らした独り言だ。
彼は死後に、2つの世界の神によって魂が世界を渡り、所謂異世界転生をすることになると説明を受けた。
どうやらこの地球ではない世界と、魂同士の交換留学みたいな事をしてみる企画が立ち上がり、それのテストケースとして彼が選ばれたらしい。
その転生先はナーロッパ等と一部で言われる、ご都合主義的西洋ヨーロッパ風ファンタジー世界。
だが理由が理由なので、別に魔王を討伐してくれとか転生先の文化振興等の、神から出される使命は無い。
無理に言えば、できるだけ長く生きて天寿を全うしろ。 その程度である。
それが出来るよう、特別なチカラをひとつ神がくれると言い、言われた男性が望んだモノは…………。
「ああ、生まれてからずっと、効果は出ていたのか――――」
神との対話も思い出すと、必然的にもらったチカラにも思い至り、それの効果も実感する。
「――――ご都合主義的不幸回避」
それは、彼にとって不都合な事態自身が彼から勝手に避けて通るチカラ。
コレにより魔物等の害をばら撒く存在は、彼の住む村を襲撃する機会が訪れず、もし襲撃しようとすると別の要因が発生して断念するしかない展開が起きる。
人類でも同じ事。 戦争の巻き添えにならないし、野盗の類は襲おうと狙いをつけた瞬間に討伐隊がカチコミしに来るし。
悪い領主や徴税官は彼の村へ何か企んだ瞬間に失脚するし、冒険者ギルドへ出した村の依頼を悪い冒険者が見落としてしまう。
彼の望まない良い話だって、持ち上がった直後に違う大きな話題が出てきて、その対応に追われている内に流れてしまう。
そして天候だって、災害と呼べる様な変化がその村周辺に来ない。
この村……いや、主人公たる彼の周辺にいれば、厄は決して近寄れない。
「これで俺は前世じゃできなかったゆったりした生活を、思う存分満喫するぞ!」
これでもかと気合を入れた彼は、スローライフを目指している様には見えなかった。
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「あ〜〜、ほのぼの、しあわせ」
前世を思い出して1ヶ月。
子供生活を満喫している男性。
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「あ〜〜、ほのぼの、しあわせ」
前世を思い出して2年。
12歳になっても、頭ほえほえな男性。
この世界は魔法があるために、文化や技術レベルが現代より低いのに、魔法で案外快適に暮らせる。
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「あ〜〜、ほのぼの、しあわせ」
前世を思い出して5年。
15歳になり、村の成人として見られ、生活魔法の応用で要領よく野良仕事をこなす男性。
その野良仕事の途中で、村に来る行商人にここ何度か連続でついて来ている娘に呼びかけられ、友達にもなった。
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「あ〜〜、ほのぼの、しあわせ」
前世を思い出して10年。
村へ定期的に来る行商人の娘と結婚して、時おり妻に尻を蹴られ、家の事とか手伝えと言われ、暢気に夫婦生活を楽しむ男性。
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「あ〜〜、ほのぼの、しあわせ」
前世を思い出して15年。
妻が3人目の子供を宿し、子育てで忙しくも、それ以外はのんびり穏やかな生活を満喫する男性。
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「あ〜〜、ほのぼの、しあわせだった」
前世を思い出しておよそ40年。
リアル中世時代の平均寿命は1○〜40歳(戦争や災害や流行り病等の情勢で変動)の所、50歳で息を引き取った男性。
村に住む家族達や、仲良くなった村民達に囲まれ、最期の時間を看取られる。
その人生には山も谷も無く、特別に書くこともない人生だった。
物語の主人公にするにしても、こうやって時間を飛び飛びにして簡単な経過報告をする程度しかできずに、余白が発生しまくる位に。
彼は、スローライフを十分に満喫した。
蛇足
妻に蹴られていたのは害意のはずで、チカラになぜ邪魔されなかった?
ご都合主義と言った。
つまりこれは彼の望むスローライフの範囲内であり、その程度の行為は害意がある暴力と認識されていないので。
話が短すぎん?
しゃーねーっす。
作中でも書きましたが、特別に書くことが無いんですもん。
確かに日常系作品の分類の内だから、他愛ない会話による交流を書いても問題は無いのですが、書いたら死ぬまでの生活を延々描写する事になります。
それをやってたら、余りの単調さとコピペ具合で、書いてる自分の心が死ぬ。 勘弁してつかあさい。