幼馴染友好会・その漆
日暮先輩に連れられ喫茶店の中へと入り何やら俺に聞きたい事があると言っているのだが、果たしてその内容とはいかに…
「さてさて、とりあえず何か注文しないといけないわけだけど何がいいかな?お姉さんが特別に何か奢ってあげようじゃないか。」
「いえそんな悪いですよ。話があって喫茶店に入ったんですからそこまでの事は…寧ろ俺が奢らせてください。陸上の件でやたらと皆さんにご迷惑をかけてしまいましたし…」
主に美森姉が原因のせいではあるんだけど…
「そう?ならお言葉に甘えちゃおうかな。」
「はい。俺でよければ是非…」
にしてもここ本当に喫茶店なのか?何か雰囲気がレストランそのものなんだが、いや逆か?レストラン系でありつつ雰囲気が喫茶店風っぽい感じだな。
「じゃあ私はこのパンケーキセットで…」
「じゃあ俺はハンバーグセットで…」
いやこれ完全にファミレス感覚のメニューだな。まぁその辺に関してはあまり気にしてはいないんだが…周りも特に騒がしいって感じじゃないし、本当に落ち着ける場所なんだなここは…
「にしてもテーマパークっぽい場所でこう言った落ち着きのあるお店は初めてね。なんだか朗らかって感じがしてちょっと好きかも。デートするならここが休憩にピッタリだも思うわね。」
「そうですね?でも俺にはほぼ無縁のある話しなんであまり気にしてはいませんかね。」
「あら?私とはデート扱いにはしてくれないのかな?コレでも一応蕾の次に人気はあるつもりなんだけどな。」
「え?そうなのですか?」
「嘘。」
「何でそんな嘘を?」
「蕾が言っていた後輩君にちょっとばかしいじってみたくなったのごめんね。」
「いえ別にそこまで気にしてないので…」
「それじゃあ端末でちょちょいっとしちゃうから少しだけ待っててね。」
「はい。」
美森姉の友達…日暮京子先輩か。なんとなくだけど、似た共通点があって少しばかり雰囲気が合ってる部分があるな。いやそれはそれで、日暮先輩に失礼か…
どことなく美森姉からどういう意味?と怖い顔をしながら言ってきそうな物言いが頭の中で浮かび上がってきたのは気のせいと思っておこう。
「よし注文完了っと。それじゃあお楽しみのランチタイムの前に少しばかり真面目なお話をさせてもらおうかな。」
「真面目なお話ですか?」
「そう。君割と学園で有名になってるのって自覚あるのかな?」
「まぁはい…自分が発端とまではいいませんが、主にちょっかいをしてくる奴等がいたりするんで、そのせいで根も歯もない噂が広まっているのは確かですね。」
「ふ〜ん。つまり自分に否はないとそういいたいって事なんだ。」
「いやそういうつもりで言ってるわけじゃ…」
「でも実際にそうなんじゃないのかな?自分に自覚がなくて、勝手に誰かが妙な噂をばら撒いてる。けれど、それは自分が悪いってわけじゃないと君はそう言っているんだよ?それってさ、単にその人に責任をなすりつけて現実逃避をしているだけなんじゃないかな?」
「そんな事何も言ってないんですが?」
この人苦手だな。勝手にこちらの意味する言葉を深く考えて解釈しながら別の言い回しで責めてくる。ある意味もう1人の美森姉ってとこだな。
「言い分は確かにそうかもしれませんね。けれど、自覚が無い事で勝手に誰かが言いふらしているのは正直な理由理不尽な事だと思いませんか?こちらに何かしらの理由があるからそう言った噂が流れる。それを自分が分かってる事なら他人のせいなんかにはしません。しかし明確な理由で自分自身が噂を流しているならそれはもう確定的な行為じゃないでしょうか?」
「それじゃあ神楽坂君。君はその人達の事をよく分かっての物言いをしてるって事なんだね?自分が蒔いた種ではなくてその人達が起こした蒔いた種が原因とそういう解釈で間違ってないって事でいいのかな?」
「さっきから何が言いたいんですか?俺を何かの犯人とかでなすりつけようとしていませんか?物言い物凄く不快なんですけど。」
「……それもそうね。正直なところ私自身もあなたにそこまでの悪態のある感情は待ち合わせてはいないから何もこんな所でムキになる事はないか。」
ムキになってたのか…いやまぁ何か怒ってる感じではあったが何かしらの圧があったのは確かだな。でも何かやたらと俺の風評被害に関して当たってくる節があるから別で聞きたいものがあったのか?
「というよりも君は本当に罪づくりな男だね。いったい何人の女の子を侍らせてるつもりなんだ?全くこれじゃ蕾がいたたまれないよ本当に…」
「………何でそこで蕾先輩が出てくるんですか?寧ろ俺が1番いたたまれないんじゃないんですか話し的に…」
「いやいや何を言ってるんだか、言っただろ君は罪づくりな男からだって、寧ろ恵まれてる様に見えるというのがさっきの私のした質問なんだよ。それにそれも含めて惚気ていたなら責め立てて負い目を感じさせてやろうとも思ったけど、本当に自覚なしか…弱ったなこれは…」
「???本当に何の話しをしているんですか?」
ちょっかい云々の話なら美森姉や宇佐木田さんが原因なのではあるけれど、それを日暮先輩に言うのは少し違う気がする。いや言えないたいうのが現場なんだけど……あれ?その事で何かしら気付きかけてたからさっきの話しを持ちかけたんじゃなかったのか?
「いい、コレは私が言ったって事は蕾には内緒だからね。」
あ、やっぱり何か違う話しみたいだ。迂闊にこっちから言わなくて良かった。でも何の事を言うつもりなんだ?
「実はあの子あなたに…」
バン!
!?
唐突にテーブルに物凄い勢いで食事をおく店員さんが現れ、つい体がビクッとなってしまい何事かと思いその人物に目をやると…
「………え!?美森姉!?」
何故かウェイトレス姿の美森姉がそこにおり何がどうなってるのかさっぱりでいた。
「美森姉?」
「あ…」
しまったつい本当の名前を言ってしまった。
「いやその今のは…」
「大丈夫よ一星。京子ちゃんは知ってるからここでの隠し事は大丈夫よ。」
「は?何…」
何で?と言いかけたが、目の前でニヤリと笑う姿の日暮先輩を見てもしかして何かやってるのかと思い俺はここでの会話は口を出さずにした。
「その話しはひとまず置いておいて、京子ちゃんあなた何でここに一星を連れてきたのかしら?」
「え〜誰も連れてきちゃいけないなんて言われてないじゃない。それとも何かな?蕾はううん美森はこの子がここにいる事に何が不都合でもあるのかな?」
「大いにあるに決まってるでしょう!私はそもそも一星達とこのテーマパークに遊びにきてるのよ。それをあなたがちょっとしたお願いがあるからって言うから手伝ってあげたなのに、その頼んだあなたがどうして〜こんな所で昼食なんかを?」
「え〜別にいいと思うんだけど。だってちゃんと3人分持ってきてくれたでしょ?それならって、あれ?なんか私のパンケーキ小さくないかな?」
「さ〜気のせいなんじゃない。一星悪いけど、隣あけてくれるかしら。」
「あ、ああ…」
どうしようツッコミたいところが色々あってどの部分から指摘すればいいのか、全くわからん。そしてその格好で隣に座っていいのか?何か手伝いとかって話は何処へいったんだ?
「………」
「何か言いたげな顔をしているけれど、色々と誤解があるから言っておくわね。」
「まだ何も言ってないんだが…」
「顔が言ってるのよ。とりあえずここに至るまでの経緯を話しておくと、あの後あなた達と別れた後色々とこのアトラクションや山茶花達でも遊べやすい場所をリストアップしてたの…けれどその最中に…」
「あれれ〜本当に私のパンケーキの大きさ違くない?ミニサイズなんて頼んでないんだけど…」
まだ言ってたのかそのパンケーキ…
「日暮先輩に会ったと言う事なの?でも何で日暮先輩がここに?」
「何でも家族経由絡みでたまたま遊びに来てたらしいのよ。それでたまたま私を見つけて暫くバイトと似たような形で接客をお願いされたのよ。」
何かたまたまという発言にたいしてやたらと強みを含んだ言い方に聞こえるのは気のせいだろうか?
「ああ〜だからこの喫茶店っぽいレストラン…いやレストランっぽい喫茶店?どっちかは分からないが、ここで働いてたんだ。………え?美森姉ってレストランか喫茶店でバイトしてるの?」
「あら?言わなかったかしら?私バイトをしてるって。」
「いや言ってなかったよ。少なくともこう言った経由のバイトに関しては…」
「でもバイトはしてるとは言ってたと思うわよ。」
「………確かに言ってた気がする。というかそんな自慢げに人の揚げ足とった表情されてもそんな姿で言っても全く動じないからな。」
「ちょっと!それってどう言う意味!私がこの姿が似合ってないっていいたいわけ!」
いや突っ込む所そこ?俺が言ったのはそういう事じゃないんだが…
「いやそうじゃなくてだな。単に美森姉がいつもと違う格好をしてて驚いただけであって、そんないつも偉そうにしている仕草とは違うギャップがあったから違和感を感じただけなんだ。特に他意はないよ。」
「そ、そう…まぁあなたにしてはまぁまぁな褒め言葉だとそう受け止めてあげるわ。あなたにしてはね。」
「………もしかして美森姉照れてる?」
「て、照れてなんかないわよ。た、単に一星っぽくない事を言ってきた、だけだから驚いただけよ。うんそう!そうに決まってるわ。」
「いや聞いてるのは俺の方なんだけど…」
何自問自答してる感じで言い聞かせてるんだ?まさか俺がここに来た事で少しばかり予想外な事でテンパってんのか?でもそれだけで慌てるなんて何か美森姉らしくないな。
「こほん!あの〜そろそろ私から話をさせてもいいかな?後このパンケーキの取り替えを…」
「駄目に決まってるでしょう。話はさせてあげるから、そのパンケーキはそのまま食べなさい?」
言い方が辛辣すぎる。俺をここに連れてきた事がまだ根に持ってる。美森姉隣にいても何ら表情変えないから怖いんだけど、日暮先輩の対応の時だけ…
「うう〜それが幼馴染に対しての接し方とは到底思えない発言だよ美森。」
「……え!2人って幼馴染なんですか?」
「そう。実は私達幼馴染なんだよ。と言っても小学3年の間だけだったけどね。そのあと私は転校しちゃったから君とはまた違う関係の幼馴染だね。」
「知らなかった。美森姉に幼馴染という友達の概念がいたとは…」
「それって、どういう〜意味かしら〜!」
美森姉は俺の両頬をつまみながら引っ張り失礼な言い方をするんじゃないという様な力を込めながらグィーングィーンとする。
「!そ、それひゃ、みひょり姉の事をひぃひぇたのって…」
「そういう事。ごめんね何か分かってた風で気にカマをかけてしまうような事をして、先輩姉らしくなかったわね。」
「ちょっと、この子の姉は私なんだけど勝手に自分の姉という言葉に強調しないでくれるかしら。」
「え〜いいじゃない別に…それに昔のおてんばだった美森をいったい誰がちゃんと女の子らしくさせたのかもう忘れちゃった?」
「うぐっ…その辺に関しては確かに感謝はしているけれど、わざわざむし返す話しじゃないでしょうに…」
「でもでも、神楽坂君にとってはあのおてんばだった美森がこんな大人っぽい女性になったか気になるんじゃないの?」
「まぁその辺に関しては自分もいなかったから気にはならないと言えば嘘になりますね。」
「一星!」
「ふふ、素直な子は好きだよ。寧ろ私の弟にしたいぐらいに君を連れて帰りたいぐらいだよ。」
「いえ、それは結構です。自称めんどくさくて腹黒い姉は美森姉だけで十分です。」
「いっせ〜い?それはさすがの私でも聞き流せる位置じゃないって事の承知で話しているのかしらそれは?」
ぎゅー!!
「いぎ!」
思いっきり脇腹をつねられ妙な声を出してしまった俺は目の前にいる日暮先輩に思いっきり笑われる。
「ふふふ、まぁまぁでも昔の話は今はとりあえず無しにしようか。まだ美森の心の準備ができていないみたいだしね。私としてもそんな藪から棒に昔の思い出を話す程軽い女じゃないんだよ。」
「よく言うわよ。私に言い寄ってきた男の子に対してあなた昔の私はどうのこうのとデタラメを言って追い払ってたじゃないのよ。」
「でもそれで、鬱陶しい男子はどっかへ行っちゃったでしょ?」
「そうだとしてももっも上手い言い回しが当たった話をしているよの。同クラスの男子には逆の意味で私の事を変な目で見てきて困ったりするんだから。」
「変な目って、いったいどう言う目で見られてるんだ美森姉?」
「……縛られたいだの、罵られたいだの、アブノーマルな男子達がチラホラ出てきたりして内心やばい奴が近寄ってくるんじゃないかという心配が募ってきて最初の頃だいぶ困っていたわ。」
「……あ〜そういえば、蒼脊も確か何か美森姉は妙な噂が祟られているから、あまり近づかない方がいいって言って気がするな。」
「よし今度アイツは土の中に埋めて永久に地上へ出させないよう地獄を味わさせてやるわ。ふふふふ…」
「美森姉目が笑ってないって…ガチでしそうだからやめてやってくれ。」
まぁ確かに美森姉ってなんだかんだで食堂でやたらと人気というのが発覚したから、あながち色々な男子に好かれても仕方がないな。にしても昔の美森姉か…いったいどう言う経緯で外面がこんなにもガラって変わったんだろうな。
「さてさて、私から話す事は美森との幼馴染としての関係と美森がどう言った経緯でこんな化けの皮が剥がれた様な女性になった事についての話をしたかったというのが私から君に話す内容だったんだけど、まぁ今の流れでポロポロ出ちゃった感じだね。」
「いやあまりにも衝撃的すぎて、整理が追いつかないんですけど…」
「まぁそこは追々納得する形でいいって事で…因みにさっきの神楽坂君の女性関係アレ関してもカマをかけての話だったから、私が美森と一緒に教室を訪れたのも分かっての事だったからね。」
「………まさか知っててあんな教室での騒ぎを?」
「そう!だって幼馴染同士の修羅場って、あまりにもベターだと思ったから、掻き回したくなっちゃったのよね。まぁ想定外だったのが、美森が素の反応だったって事ぐらいかな。」
「当たり前でしょう!黙ってて言ってるのにあなた平然と私の心を折に来るような言い方を教室内の生徒にバラしたのよ!」
「まぁまぁおかげで疑惑の彼氏彼女が続けられるんだからそれでいいんじゃないの。そのおかげで寄ってくる男子もめっきり減ったでしょう。」
「めっきりどころか、一星は他の女の子との絡みがあるか、余計な闘志を燃やしてアピってくる男子もいたりして困り果ててるんだけど私…」
「あははは……いやそれ私のせいじゃなくない?」
「ええ、半分はあなた。もう半分は一星ってとこかしらね。」
…………
いやそんな風に言われて無言になられても、俺が悪いの?なんて言える空気じゃないじゃないか…とばっちりもいい迷惑だ。
「そ・れ・よ・りも!神楽坂君。美森のウェイトレス姿どうかな?とても華があるとは思わない?」
「え?それはさっきいいましたじゃないですか。よく似合ってるって…」
「あ〜そうじゃなくてそうじゃなくて、君の本音を聞きたいの私は…」
「???いやだから、似合ってるって言ってるじゃないですか。」
「もう〜これだからウブな男子高校生は困るな〜君は幼馴染の女の子が隣でウェイトレス姿で座ってるんだよ。そんな女の子に何か欲情みたいなのとか湧いてこないのかな?」
「湧いてくるも何も美森姉はただの幼馴染であって、姉でもある存在だから……」
あ、あれ?でもよくよく見たら美森姉ってこんなに色気が漂う感じがあったけ?普通に出てる所は出て普通の男子からしたらかなりおめがねかなってはいるな。
「………」
「………」
え?何その若干照れ臭さそうにしてる感じ…美森姉らしくないんだけど、つうか何を求めているんだ美森姉は…
「あれあれ〜まさかのまさか今になって感情反応してるのかな?」
「ちょ!私がいったい何を反応してるって言うわけ!」
「誰も美森の事を言ってなんかないじゃないか。美森がそんなに動揺してどうすんの…」
「うっ!私とした事がつい…」
「ふふふ、可愛いでしょう神楽坂君。コレが本当の美森よ。普段は大人ぶってはいるけれど、異性がそばにいるだけでタカが外れたようになってしまうから。狙うなら今だよ。」
「小声で話しているつもりなら、まるっきり私に聞こえてるんだけど?後あなたはいったいどうしたいわけ?」
「ふふん!!決まってるじゃない2人のツーショット写真撮りたいと思ってこうやって話してるの。あなた達をここに連れてきたのはその為でもあるんだから。」
「………は、はかられた!」
いやそんな風に騙された顔をするってどんだけ捻り曲がったこの日暮先輩の事を信用してたんだ。美森姉も友人に対しては心を許しているんだな……ふっ少しばかり喜んでしまっている自分がなんというか心地よい…
一星は少しだけ心の中で京子にグッジョブをしながら内心喜ぶ。




