幼馴染友好会・その淕
なんだと?あ〜んをするのが条件?
顔一つ変えずに満面の笑みで下から顔を覗く山茶花に俺は真顔のまま予想外な展開が起こってしまった事に対し、どう反応すればいいか困惑しこの状況に戸惑う。
「いやそれはさすがに…」
ぐぐ〜〜
「ふ〜ん、物凄くお腹が鳴ってる音が聞こえてくるんだけど、そんな事言ってられるのかな?ここに来るまで何も食べずにきたんでしょ?それに周りを散策している内にお腹だって空いてくるのは仕方がないと思うんだよね。人間の食欲的欲求はいくら元天才でも抗えないと思うよ。」
「確かにそうかもしれんが…」
やばいそんな条件今更になって恥ずかしくなってくる。昔は確かに小さい頃よく食べ合いっこをしてた頃があったけれど、今は違う。明らかに恥ずかしさだけが実ってしまう。
「ほらほら観念した方がいいと思うよ〜」
「やっぱりちょっと待て!確かにコレはお前が買ってきてくれた食べ物だが、よくよく考えたら普通にお金を支払ったらそれだでよくないか?こんな罰ゲームみたいな事しなくてもいいだろ。」
「何言ってるの?一星君コレが罰ゲームだって本当に思ってるの?」
だよな罰ゲームだったらもっと鬼畜な事をしてくるよなきっと……ん?だったらコレはどう言う事なんだ?山茶花はいったい何がしたいんだ?
「一星君私の復讐の件もう忘れちゃったの?一星君がちゃんとトラウマが改善するまでは私の我儘を聞いてもらうそういう約束だったよね?」
「いやいやそれとこれとは話しが別じゃないのか?お前これと復讐を結びつけるってどう言う了見なんだ。」
「別?そんなの分からないんじゃないかな?コレをきっかけでもしかしたらまた泳げる感覚を取り戻して嫌な気分が無くなるという事もあるかもしれないんだよ。勝手にそんな風に決めつけるのは一星君らしくないんじゃないかな?」
……山茶花の奴妙に頭の起点をいかしての理由づけで復讐という理由の概念を利用して俺を脅しにかかってきやがる。
「………そうだな。復讐という理由だけでこんな事を許しというのも度し難い話だが…お前らからしたらこの事で自分の憂さ晴らしにもなるわけなんだ。」
「何の事かさっぱり分からないな〜」
分かってる言い方だな。あたかもしらをきるつもりか…まぁそこに関しては俺がとやかく言う事じゃないと思うが……はぁ〜こうも昔の幼馴染との面影が違うとなると何だか調子が狂うな。
「やれやれ、本当に昔のお前とは全然違うんだな。まぁその部分がいかせられて今のお前があるって事かもしれんが…」
「でしょうでしょう〜実は今の私自身も相当気に入ってるんだよね。確かに昔は相当泣き虫だったかもしれないけれど、今と昔ではやっぱり相当メリハリが違ってんだよね。おかげで今ある私に感謝感謝だよ。」
「かもしれんが、別に昔のお前を卑下にしているわけじゃないんだぞ。昔のお前だって十分に魅力的な所はあったし可愛げがあったんだ。それを無しにという発言は昔の自分を否定してしまう事になるからあまり責めないでやってくれないか。」
「ムム!その言い方だと今の私は可愛くないっていいたいのかな?」
「そんな事は言ってないだろ……多分。」
「ああ!目をそらした!と言う事でもう無理矢理食べさせてやるんだからえい!」
「いやまだ何もいいって言ってなって…はぐ!あっつ!!!」
無理矢理口の中に物凄い熱いものが頬張られ思いっきりはふはふしながら口の中にある食べ物を冷めさせる。
「あふあふあふ!」
いったい何を食べさせられてって!こ、これたこ焼きじゃないか。
熱さの感覚で味覚がおかしくなっていたけど、この熱さと感触は紛う事なきたこ焼きだ。
「はふはふはふ………ゴクン。」
何とかさましながら食べたタコ焼きは微妙な危険さもありつつ若干お腹の窮地を脱してはくれたが、あまりにも火傷になりかねない好意に俺は山茶花が末恐ろしく感じてしまう。
「はぁはぁはぁ、山茶花お前殺す気か。」
「ふふ因みにコレはごちゃごちゃ言ってた一星君の罰だから甘んじて受け止めてね。というより受け止めちゃったね。」
密かにほくそ笑む山茶花の姿に若干苛立ちをおぼえたりするが、その仕草が販促級の可愛さだった為やむをなし今のなかった事にしてやると自己解決する。
「はぁ〜俺は幼馴染に対して甘いのだろうか?」
「ん?寧ろ辛いんじゃないの?」
「味の話しは誰もしていないだろ。」
というか何故たこ焼きを選びつつ楽しそうに笑っているんだ?まだ何か妙な事でも企んでるんじゃ…
「ねぇ一星君次はお互い勝負してみない。勿論ちゃんと火傷しないようにフーフーしながら食べるんだけど、勿論いいよね?」
「断る権利は俺にないんだろどうせ。それで何の勝負なんだそのたこ焼きを使って…」
「えへへ、実はこのたこ焼き、ロシアンたこ焼きになってるんだ。中身は当然激辛が入ってるわさび味とからし味が入ってるんだけど…」
何て事を平然と話しているんだこの子は…そんな物を軽々お俺にさっき食べさせたのか?悪女じゃないのか?
「まぁ残念ながら、一個目は外れてしまったわけだけどね。」
「本当に残念そうにしながら、ガッカリと話さないでくれるか?お前の事が俺の幼馴染枠の中で恐ろしいランキングが上位してきてるぞ。」
「ふふ、それはそれで警戒心があっていいんじゃないかな?でもそんなランキングこうせいがあったのは知らなかったな。因みに一位は誰だったりするの?」
「いやその……まだ3人しか会ってないからその中でって事であって…まだ確実にというわけではなくてでな。」
「あまりにも挙動が入ってるんだけど、もしかして私が一位に這い上がったとかそういうわけじゃないんだよね?だよね?」
2回聞き直さないでくれるか?その聞き直す圧で目が合わせられないんだが…
「まぁいいや、ひとまず一星君ご飯をきっかり食べたかったら私と勝負しよう!」
「しようって言い方おかしいだろう。本人が嫌がってるのにそこで駄々をこねる言い方は普通に考えたらおかしな奴の発想だからな。」
「よし!ならまずはこのたこ焼きから…」
「おい人の話しきいてるか?」
山茶花は有無を言わずそのままたこ焼きに爪楊枝を刺しながらふぅふぅと息を吹きかけさましてくれながらこちらに向けてあ〜んと差し出してくる。側から見ればこんな美少女にあ〜んをしてもらって羨ましいと思うかもしれないが…こっち側は激辛を堪える様な胃なんて待ち合わせいないんだ。頼むから当たらないでくれよ。
パク!
「あ…」
「もぐもぐ……うし!ハズレだ!中々スリルがあるから味覚がどうしても味わえないのが残念だが、ひとまず第1関門突破ってどうしたそんな鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして?」
「え?あ、その…普通に食べてくれるんだなって思って…」
「いやお前が最初に言い出した提案だろう?それを不思議がる意味が分からんが。」
「と、とにかく、今食べてくれたというのが私にとっては予想外な事だったの!もっと照れてくれるとばかり思ったから!」
「こんな危機迫る様な状況で何が照れながらあーんをしてもらって嬉しがなきゃならんのだ。最早それは単なるドM体質じゃないか。」
「ぐぬぬ……なんか余裕ぶってて、ムカツイてきたかも。次!次!ほら次は一星君の番だよ!」
「分かった分かったからそう駄々をこねるな。というかこんなので駄々をこねる意味が分からん。」
とりあえず俺も適当なたこ焼きに爪楊枝を刺し息を吹きかけながらたこ焼きの熱を覚まし山茶花に差し出そうとしたのだが…
「………」
「な、なに?早く頂戴。」
「いや若干エロい感じで誘われても俺は騙されないぞ。つうか俺まであーんをする必要なくないか?お前の条件で山茶花が俺に向けてあーんをするのは分かる。だけど俺まであーんをする理由に至る傾向は特に何もないんじゃないのか?」
「プクーー!!」
何故かフグみたいに頬を膨らませながらこちらを睨みつけるが、俺はそんな可愛い仕草に対して特にこれといった感情が持ち合わせていない為無視する。
「あ!今絶対面目さいか無視すればいいと思ったでしょう!でもね残念だけど、今の一星君に断る権利なんてそもそもないって事まだ近くないのかな?はぁ〜昔のにした約束を破られた私の気持ちいったいどうしてくれるんだろう?」
なんか独り言が始まったし、それに俺が動じるとでも思うのか?俺はあくまでもお前にあーんをされるという妥協点までは許しているんだ。ここからの範囲は復讐される圏外に入る。だからそれ以上の我儘は通すわけには…
「因みに〜一星君。この勝負を受けなかった事で私の不戦勝になってしまってここにある食べ物は何処かに行ってしまうんだけど…いいの?今物凄くお腹空いてるんだよね?仮にここにあるものが要らないって言われたとしても、また買いにくのにも長蛇の列で相当時間がかかるんじゃないかな?ストックもあまり無さそうにみえたし…」
完全に足元を見てやがる。そこまで俺にあーんをさせたいのか?そこまでして俺に屈辱と羞恥心を仰がせたいのか?
「くっ!今回だけだ!いいか、俺が買ったからここにある食べ物ほとんどもらうからな。」
「あ〜ん」
だからエロい感じであーんをするな。なんなんだその若干色気を漂わせるあーんは何を誘惑してるのかさっぱり分からんぞ。
そしてそのまま持っていたたこ焼きを山茶花の口の中へ頬張らせながら、とりあえず第2関門が突破され一安心つくのかとそう思いきや…
「はふはふはふ……」
「………」
「はふはふはふ……」
何で食べ方までそんな露骨にエロいフェロモンみたいなのをだしくるんだ。わざとか?わざとなのか?てか俺ちゃんと息を吹きかけてさましたよな?なのに何であんな熱そうな物を食べる雰囲気をだしてくるんだ?
「おい山茶花それそこまでもう熱くは…」
「んーーー!!!!」
「さ、山茶花?」
山茶花は何やら物凄い顔をしながら今まさに顔が沸騰しかけてしまうかのような感じで慌てふためきながら何かを探す。
「ど、どうした!何か変な物でも入ってたのか、何か顔色が……あっ…」
その様子を察した俺は自分が持ってきた飲み物の存在を忘れていたのか?それとも今の状況で我を忘れていたのか?飲み物のある場所が分からず慌てふためきながら俺は即座にその飲み物をとって山茶花に渡すと一瞬で奪い合い取りごくごくと飲み干す。
「はぁ〜はぁ〜はぁ〜、し、死ぬかと思ったよ〜」
「………」
まさか自分が提案したゲームを即座に罠があるやつを引き当ててしまうとは…なんとも言えない結果。
「てか思いだしたぞ。山茶花確かお前運の方結果悪かったよな?何かしらゲーム関係は顔に出やすいから、ポーカーとかトランプ系は全部駄目だったんじゃないか?」
「ごくごく…ふぇ〜ひょうらの?」
「いや舌痛めてんじゃんか。という自覚すらしてなかったのか。」
まぁ確かに自分に関してはトントンというところがあったりして昔は周りに注意してやらないといけなかったから、できるだけ側にいて守ってやらないと意気込んで時があったなっていうのを今更にながらこんな事で思い出すなんて……
「変な事で昔の事思い出させないでくれよ。」
「にゃにが、思いだしたくなひゃったの?」
「いや何でもない。それよりどうするんだ?結果が既に分かってしまった以上この勝負俺の勝ちになると思うが?」
「んにゃ!まひゃおわっへにゃい!つひあらひのばんひゃもん!」
もう呂律がおかしくなってるじゃないか。いや辛さが原因なのは分かってはいるが、最早言葉でないとはこの事だな。
結局二回戦目で俺はハズレを引き、山茶花は当たりを引いてしまいこのロシアンたこ焼きは山茶花の負けの確定で幕を引く事となった。
結局山茶花出す条件の話しはいったいなんだったのか…自分で自分を痛めつけただけの結果になったというのはまさに自業自得。いやそんな事を言ってはいけないな…山茶花は俺の為に食べ物を買ってきたんだ。少なからず善意はあったんだからちゃんと感謝はしないとだな。
「ほら、山茶花無理はしなくていいからゆっくり水を飲め。」
「のまひて〜」
「はぁ〜全く。そういう甘え体質なのは直ってないんだな。」
苦しそうにしながら飲ましてくれと甘えてくる山茶花に俺はゆっくりと水の入ったペットボトルを差し出し口へ含ませながら飲ませるとまるで昔の山茶花を思い出す様な仕草につい視線をそらす。
パシャパシャパシャパシャパシャパシャパシャ!
「は?」
今の音…スマホの連写音?さっきも確かシャッター音みたいなのが聞こえたが、同一人物か?いやでも音が違ったし気のせいか?
「なぁ山茶花今の連写音聞こえたか?」
「ふぇ?何も聞こえなかったよ?空耳じゃないの?」
山茶花はまだ口が火傷しそうなぐらいにヒーヒー言いながら水を飲み続けており、カメラのシャッター音等気にも留められなかったのか周りに対して無頓着になっていた。
「………今の気のせいで済んで良かったのか?いやでもここら辺で連写音なんてそうそう聞かないし、やっぱり誰かが撮ってたんじゃ…」
何か嫌な予感をした俺は周りを見渡し謎のシャッター音の正体がいったい何なのかを確認すると木に隠れながらこちらを窺う者がいた。
「まさか!」
その姿を目撃したせいなのか急いで隠れていた場所から颯爽と逃げだしていく謎の人物に俺はますます怪しく感じ後を追う。
「山茶花すまんが、暫くここで待っててくれ!絶対に戻ってくるから。」
「え?あ!ちょっと一星君!」
こちらを呼び止めようとしていたのだろうが、俺はそんな山茶花の言葉を遮り、走りながら先程隠れていた人物を追いかけていく。
もしかしたら俺達の写真をとって何か悪い事に使う可能性があるため何としてでも捕まえないと…
「はぁはぁはぁ、クソ見失った。」
何て速さなんだ。確かに距離はひらいていたけれど、捕まえられない距離じゃなかった。相手はスポーツマンか何かなのか?
「……まずいな。もし何かに悪用でもされたら山茶花の日常に支障がつく…どうにかして見つけられないものか…」
「あら?君確か…神楽坂君だったかな?」
「え?あ、あなたは…確か陸上部の…」
「そう、京子。日暮京子君の彼女のお友達。よく覚えててくれたね。」
「いやまぁあの時に教室で蕾先輩と一緒にいましたからね。というより、蕾先輩と一緒いる人って日暮先輩しか見た事ない気がしたので…」
「ふふ、そんな事ないんだよ。一応あれでも教室では人気者の類いに入ってるんだから、そんな事直接の本人に言っちゃ駄目だよ。というよりどうしたのそんな血相変えて何か急ぎの用事でもあった?それで引き止めたならごめんね。」
「いえ、その用事と言えばいいのか…ちょっと怪しいやつがいたんでとっ捕まえようと思ったんですけど逃げられてしまって…」
「……因みにどんな奴なの?」
「何か俺達の事をヒソヒソとしながら、スマホなのかどうかは分からないカメラでやたらと連写してくるヤツがいたんです。けど、何か俺にしか聞こえてなくて、周りは誰も気付かないというか……あれ?」
何か変なことを言ってる気がするな。側から聞けば俺やばい事を言ってるやつなんじゃないのか?
「えーと……もしかして疲れてたりするのかな?」
「………かもしれませんね。」
幻聴、幻覚……もしかしたら本当にそうなのかもしれないと思えてきた俺は多分何かの見間違いなのだとそう思い込み、この事はなかった事にしようと心の中でそう決めた。
「すみません何か変な話しに付き合わせちゃって…俺もう行きますね。日暮先輩も今日誰かと一緒に遊びに来たんですよね?尚更邪魔しちゃ悪いし俺いきますね。」
「ちょっと待った!何勝手に話し進めて帰ろうとしてるの。私君にまだ用事があるんだけど、それと私ここにきたのはある理由があってきていて友達と一緒に来てるわけじゃないわ。」
「え?じゃあ1人でここに来たって事なんですか?それはそれで何か寂しいですね。」
「勝手に1人で決めて納得しないでくれるかしら?君に用事があるって言ってるでしょうに全く…とりあえず何処かしら移動しない?ここで立ち話というのもあれでしょう。時間は大丈夫かしら?」
「えーとそのすみません。ちょっと待ち合わせしてるやつがいるんで、先輩との時間に付き合う時間は今はないと言うか…」
ピロリン!
「ん?スマホから…誰のメッセージだ?」
スマホから音が鳴り誰かからのメッセージが来ているのを確認するとそこには山茶花からのメッセージが来ていた。
[一星君のバカ!もういいもん。私だけで何処か違う所へ言って一星ぎ泣き喚くアトラクションへ連れていくんだから覚悟しておいてよね。(女の子に見境がない幼馴染へ…)]
え?何処からか俺の事を見ている?いやそれなら何故話しかけない。てか待ってくれてるんじゃなかったのか?
ピロリン!
「またかよ。」
[追伸:勝手に置いていかれた為私はまた違う所へ周ります。一星君も好きに周ってきたらいいよ。誰かさんみたいに幼馴染の女の子を置いていく身勝手な人へ]
「めっちゃ怒ってる!」
二つ目のメッセージの方がかなり圧がこもっていて、返信しにくい内容なんだが…とりあえず了解カッコごめんと送るしかないか…
「どうしたの?何かあった?」
「いえ…何も、その今しがた時間が空きましたのでお付き合いしますよ。」
「その感じもしかして、蕾と喧嘩でもした?」
「違います。別件で約束が無くなっただけです。」
主に俺が原因なのもあるんだが…
「ふ〜ん。まぁいいかじゃあちょっと長くなるからそこの喫茶店にでも入ろうか。」
「あ、はい。」
喫茶店か…まぁ喫茶店なら特にこれと言った問題はないだろうし大丈夫だろう。……大丈夫だよな?




