左馬儀(さまぎ)千歌(ちか)
荒々しい声量による怒鳴り声。一星達はその声の人物に目を向けると、露光は物凄い息を荒げながらまるで憎しみを持つ様な目つきで睨みだす。
「そんな意味の分からない事があってたまるか!何がストリームラインだ。そんなのどうでもいい事なんだよ!基礎がちゃんと整えれば早いスピードがだせる?笑わせるなよ。それなりに体力をキープし続けての水泳に対してお前らみたいな怪物は最早人間じゃないただモンスターだ!そんな奴が正式な人間の大会なんてでるんじゃね!」
「!!」
確かに側から見れば私はただの化け物モンスターみたいな超人みたいな体を持っている。彼からしてみればそう捉えても仕方がないし周りのみんなも蔑んだ目でこっちを見ている。あれだけ努力や天才という口論したのに、何で今更あんな事言われて動揺してるんだろう私…怖い単純に怖いんだ。周りの人達とは違うぞ比べられるというのが怖いんだ。でもそれはそれだ…怖気付くな私。今更何をビビるというの…認められた人にだけ認められればそれでいいでしょう。何でこんな蔑まれた人達にまで認められるようと心が鈍りだすの…言え!言っちゃえ私はあなた達よりも上だと!
「………すぅ〜はぁ〜……!」
「醜いな。」
「は?」
「え?」
私が言う前に神楽坂君が発言を…いや待ってそんな事をしたら…
「おいおい昔のヒーロー様はどっかに行っててくれますかね?アンタは及びじゃないんだよ。今はそこにいる新たなヒロインに話しているんだ。醜いのはお前の方だと思うぞ神楽坂一星。」
「口調が荒々しくなっていますよ。小萌志コーチの言った事もう破るつもりなんですか?」
「ああ?」
「やめな露光!お前にそいつをなぶる権利なんてないんだぞ。」
「いいやありますね。アンタもアンタだ。こんな腑抜けた奴に未来がどうのこうのあるかもわからない生徒を指導させるなんて、コーチの風上にもおけませんね。」
「だとしたらなんなんだ?私を罵るのか?」
「罵る?は?今更アンタに罵った事で何の意味がある。私は寧ろ神楽坂一星に対して思う事が山程あるんですよ。コイツは突如勝負から逃げたした男こんな奴に教えられた野谷山火花は不憫でしかならないって事ですよ。」
「単なる逆恨みじゃないのか?小萌志コーチがアンタの側から離れた。その事に関して嫌悪感を抱いている。俺がどうのこうのと言う前にアンタは自分から離れた小萌志コーチに対して嫉妬していただけだろう。それを俺に対してあたってくる。この勝負に関しても自分の不憫さが原因で俺にあたってきた。そうじゃなければこんな事アンタが言うはずは…!」
バコン!
ズサーーー!!
「神楽坂君!」
「神楽坂!」
「調子にのるなよ小僧。お前と私年齢はどちらが序列なのか分かってんだろ?」
胸ぐらを掴まれた後の勢いあるパンチをくらった一星はそのまま顔面にヒットし地面に倒れる。それを見て心配して声をかけて火花と睡蓮は駆けつけていく。
「いっつ〜〜」
「正当防衛とは言わせんぞ。何せお前が私を煽ってきたんだからな。」
「言ってる事支離滅裂だろ。完全に正当防衛だろうが。」
「神楽坂君大丈夫!」
「あ、ああ別に問題はないちょっとビビっただけだから。」
殴られたのなんていつ以来だろう。ガキの頃以来か?いやそれでもそこまでだったな…てか今思いだすとこじゃないな。
「おい私がそんな事する様に教えたか?お前は手が出す部分があるからその性根を直せと何度言えば分かるんだ。」
「ああ〜そんなの無理に決まってるじゃないですか。第1コレを直したらここまでこれる事がなかったってさっきもいいましたよね取り頭ですかコーチ?」
「お前…もう一度一から指導しないと分からないみたいだな。」
「今更何を…その性根を直せずに離れていったアンタがどの口でいうんすかね?」
あの人性格が本当にガラッと変わりすぎだろう。敬愛していた師匠とは思えない言い方だぞ。
「そこをどいてもらえますか?私は神楽坂と話がしたいんですよ。ボンクラ達は引き下がってもらえますかね?」
「コラ!ロッコウこんなコトをしてこのバのヒトタチがミスゴスとでもオモッテイルのか!」
「あ?カンベル悪いがお前にも腹がたってるんだよ。余計な事をペチャクチャ話して尚且つ勝手に勝ちやがってよ。しかも記録タイム更新だ?笑わせるなよ。そんな並の人間が超える様な記録なんか普通だせねぇんだよ!お前も化け物だモンスターなんだよ!」
ざわざわざわざわ…
「ど、どうしよう神楽坂君みんなが、動揺し始めちゃってるよ。」
ああ確かにコレはまずい。完全にあの露光のペースにハマってやがる。でも妙に不自然なんだよな。俺だけに喧嘩売るなら寧ろこの後裏とかで何かを起こせばいいのに、何故か周りから自分自身を含めての反響を含ませての発言…いや不穏な眼差しみたいなのを浴びさせてのやり口なのか?なんなんだこの違和感は…
ザ!
「何だ野谷山邪魔だそこをどけ。」
一星を傷つけさせたくないそんな一心を抱きながら一星を庇う火花は勇気を振り絞って一星の前に立ち勇気の発言をする。
「退かない…」
「あ?」
「退かないって言ってんのよこのハゲ頭が!」
「……な?」
「え?」
「へ?」
「……ハゲアタマ?」
「………ぷっ!」
火花は顔を膨らませながら勢いよく露光の頭の部分に目をやりながらハゲ頭と罵倒する。
「だ、誰がハゲ頭だゴラァ!!!!!!!」
「ひっ!」
ハゲ頭と指摘されたのに対して物凄い勢いで火花に怒りの突っ込みをする露光。それに火花は萎縮してしまう。
「ハゲ頭……ああ〜アンタその頭じゃさすがにそう指摘されても仕方がないわよ。普段ふさふさ感があるように見える髪でも水に濡れてしまえばいっきにそうしなだれてしまえばね〜髪質的な問題なのかな?」
いやそうかもしれんが、え?あの人ってそんなに年いってないよな?少なくとも4、5歳前後違うと思ってたんだが…
「やかましい!私の事はどうでもいいんだ!そんな事で話を逸らしても無駄だぞ。」
「無駄なのはお前の方だ露光。全く子どもの頃からどうも成長していないな。」
「え?ちょっと待てその声…は?なんで?」
フサ!
バシャバシャバシャ
「ふ〜やっぱり他の競合選手達とやるから中々に昂るものね。気分がとてもいいわ。」
ゴーグルと帽子を脱ぎ捨て長い髪に付着していた水を周りに掃き落とす様にして気持ち良さそうにしながら周り全体を見渡す。
「え?女の人?え!え!何で?」
「何でって言われてもね〜私もあなたと同じ天才の1人と言ったらそれで納得してくれるかしら?」
「それってどういう…」
「ね、姉さん!何で姉さんがここに!確か海外に留学していたはずじゃ!」
「お姉さん!」
「お姉さん!」
「シスター!」
「ふふ、は〜い皆さん初めまして露光の姉の左馬儀千歌で〜す。よろしくね!キラン!」
え?リアルでキランって言う人初めて見た。てか誰得?いや俺得か。
「神楽坂君何で嬉しそうな顔をしているの?」
「どうみたら俺が嬉しそうに見えているんだお前は…明らかに困惑している顔だろこれは。」
「いやはやうちの弟がどうもすみません。こういった弟の面倒はやっぱり離れていても直らないもんなんですかね〜」
いや知らんがな。
いや知らないんだけど…
「お前相変わらずだなその感じの仕方は…」
「あ!睡蓮ちゃん久しぶり〜元気だった〜!」
「近寄るな〜離れろ〜」
「え〜ひど〜い!」
無理矢理睡蓮へ抱きつく千歌は物凄く嬉しそうにしつつ物凄く迷惑そうな睡蓮は千歌を引き剥がそうと必死に抵抗する。
「え〜とお2人は知り合いなんですか?」
「うん私達同級生なんだ。しかも同じ水泳仲間。まさかこんな所で久しぶりに会うなんて思ってもみなかったよ〜」
「そんな見えすいた嘘はやめろ。お前は何事も一足先の事を考えたり物事を上手く利点にしてやれてるやつだろう。今日私がここに来ることも知っていたんじゃないのか?」
「え〜どうだろうね〜私たまたまここへきただけだし〜久しぶりに弟の顔もみたかったしね。これも偶然偶然…テヘペロ。」
絶対嘘だ。
絶対嘘だよあれ。
ポカ!
「いったーい!何で殴るの睡蓮ちゃん。」
「その睡蓮ちゃんって言い方はやめろ。後そのあざといテヘペロやめんか。いい年して何がテヘペロだ。年齢を考えてはなせばかもの。…全くいったい誰の影響なのやら…」
「ふふ、だとしたらきっとあの子だと思うな。ねえ?」
「ねぇってお前な…というよりもここへ何しにきたんだ。わざわざ男性のしかも全身様のラッシュガードを着てまで出場するなんて…とてもじゃないが正気の沙汰じゃないな。」
「ふふん〜まぁ周りは私の事女だって気づいちゃいなかったからね。バレないのは当然だよ。しかもこれ最新式のやつで女性のバストやヒップ等を男性にまで変換する事ができるんだよ。凄くない!最近の科学って進歩したよね〜」
「やかましい!お前には反省という文字はないのか!」
「私何も悪いことしてないよ!何で反省しないといけないの!」
「あの〜それぐらいにしといてあげたらいいんじゃないんですか?その人別に悪気があって、小萌志コーチを困らせたかったわけじゃないと思うんですよ。というよりなんかグダグタになってきて変な雰囲気にもなってしまったというか何というか。」
「うんうんうん!」
側で俺の事を庇う様にしていた野谷山だったのだが、露光の威圧に耐えられなくなってしまい、後からそのままこちらの言い分に対して激しく首を上下に振りながらコクコクと頷き返す。
「………へ〜君があの噂の神楽坂一星君か。さすがは元子どもの頃からやっていた水泳選手、天才を育てるのも伊達じゃなかったって事なんだね。」
「何が言いたいんですか?」
「ふふ、単に褒めてるだけだよ〜けど…留美留美から聞いた君とはだいぶかけ離れている様にも見えるけどね。」
「留美留美……え?その名前まさか!」
「ああ、もしかしてコレはまだ聞かされていなかったのかな?私実は留美留美、林道留美子とも知り合いなんだ。」




